邦画ブラボー

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木下恵介版「楢山節考」

2006年05月08日 | ★人生色々な映画
ゴールデンウィークが終わってしまいましたが
皆さんいかがお過ごしですか?
元気出していきましょう!

とはりきっていたのに、
この映画を観たおかげで
思いっきり無常感に襲われ、五月病です。

深沢七郎の「唄」のような物語を
見事に具象化した作品。

背景はすべて作りこまれたセット
(「雁」などの伊藤熹朔)、
長唄の14世杵屋六左衛門、浄瑠璃の野沢松之輔による音楽が
ぴたりと映像にあっている。

これが50年前に作られたということでまた衝撃を受ける。
ものすごい作品は
時空を超えてパワーを保ち続けるものなのだなあ。

真っ赤に染まったり、真っ青になったりする空の下、
ちょこちょこと動き回る人間はまるで作り物の人形のようでもある。

芝居そのものはリアルだ。
田中絹代の台詞は抑揚があって、歌っているかのように聞こえる。
よく働きそうな嫁、望月優子の優しさに救われる。

江戸時代、とある貧しい村。
70歳になった年寄りは口べらしのため、お山にあがらねばならない。

お山に行くときは村の顔役たちに申告するため
「やっぱりやめた」
ということは許されない。
親子を囲んで儀式が厳かに執り行われ、決まりごとが告げられる。
この場面、舞台演出のようで面白い。

いよいよ、
母を背負った息子が長く険しい道を登って行く。

たどり着いたお山はもはやこの世ではないものすごさ。

しきたりどおりに
息子の言葉にも答えず雪の中に黙って座る母は
すでに小さな「仏さま」のようである。

息子を演じた高橋貞二さんは33歳という若さで亡くなられたが
1950年代にすさまじい数の映画に出られていたようです。

カンヌで賞をとった今村昌平監督の作品も
リアリズムに徹していて素晴らしいが、
実験精神に溢れた木下版は深沢文学を映像化し得た
驚異的な作品として、もっと知られるべきだと思う。

1958年 監督 : 木下恵介

原作 : 深沢七郎
脚色 : 木下恵介
撮影 : 楠田浩之 
音楽 : 杵屋六左衛門  野沢松之輔
美術 : 伊藤熹朔 梅田千代夫

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