邦画ブラボー

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「おはん」

2004年09月21日 | ★愛!の映画
原作を先に読みました。

男は芸者置屋の女将と一緒になるため追い出した元女房と再会して
よりを戻し、ずるずると関係を続けていく。

現女房に納まっている女将との関係も断ち切れず・・要するに三角関係なんですが、
そのうちとんでもない悲劇が・・・というこの小説、
宇野千代が構想10年かけたそうで、読み応えありました。

晩年の“可愛いお婆ちゃん”像からはとうてい想像しがたい
情熱的な小説です。元々人並みはずれて激しい生き方をした方でした。

ズルズル男(誰でもそう思うおとこ)の懺悔話という形態で書かれていて
そんなに長くないのであっという間に読めてしまいます。

市川崑監督の映画では、そのズルズルダラダラ男を石坂浩二、
元女房、おはんに吉永小百合、
面倒見のいい世話女房型の女将には大原麗子というトライアングルで見せてくれます。

どろどろした三角関係をシャープな映像が抑えてくれています。
深みにはまっていく男女の仲を象徴するような湿った雨のシーンが印象的で、
濡れた着物を引きずるように歩くおはんの姿が美しく哀れでした。

吉永小百合が演じることで、男にひきずられて
地獄の淵まで転げ落ちていったおはんが
最後には聖女のように見えてしまうのはさすがと思いました。

宇野千代とは親交が深かった山本陽子版(舞台)も見たいです。

修羅場を潜り抜けてきたひとだからこそ、こんな小説書けたのでしょうね。

いや~男女のことは理性でははかりしれない、魑魅魍魎、いや、
モヤモヤだらけで、だから小説も映画も芸術も生まれるのでしょうね。

小説家の山田詠美が以前マスコミに私生活をあれこれ言われていた時、
「私も早く年を取って、宇野先生みたいに誰からも何も言われないようになりたい!」
と言っていて可笑しかったです。

底抜けに明るく笑う宇野千代の写真を見ると、あらためてタフな人だなあと感嘆します。
そして98歳で大往生ですからね。すごいです。

原作、映画ともあわせてお勧めです。

*参照:CHIKU-CHANの岩国情報

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