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邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

「元禄忠臣蔵・前篇」

2006年09月23日 | ★ぐっとくる時代劇
長年焦がれていた作品を
ようやく見ることが出来て感謝。

と、

幸せに浸っていたら、
始まった途端に松の廊下で
罵詈雑言を吐いていた吉良が
後ろで聞いていた浅野内匠頭にいきなり切りつけられたので
椅子から転がり落ちそうになってしまった。

その間、あっという間。

びっくりした~~前フリ無しの大胆スピード演出!!!
ボヤボヤしてる場合では無かった!

前篇は大石の苦悩、
配下の混乱の描写にスポットが当てられている。

すでに言いつくされている原寸大の松の廊下のセットは
噂にたがわず見事なものであった。

平面的に映し出されるだけではなく、
カメラをひいてぐるりと回廊が撮られているので
壮大な眺めをいやというほど堪能出来、
今更ながらその贅沢さに驚いた。

どこまでも敷き詰められたの美しさよ!
建築監督として参加した新藤兼人の本にも
様々な苦労が書かれていた。

奥方たちの結髪、装束
蒔絵の化粧道具、
小道具類、所作、
歩き方振り向き方、すべてを
隅から隅まで目に焼き付けようとしたため
非常にエネルギーを消耗してしまった!

いわゆるなんでもない部屋の「インテリア」も
芸術的に素晴らしく、障子の桟の美しいデザインなど
日本の美に満ち満ちているので、見飽きることは無い。

溝口健二の映画を見ると、
日本とはかくも美しい国だったのかと誇らしくなる。
なのにどうして・・ということはまあさて置き・・

前篇は大石が赤穂城再興はならずと知って、
いよいよ吉良を討つ意思を部下に知らしめ、
山科の住まいを出て東下りを決意するところまで描いている。

「山科の別れ」の場面も
舞台を上から見るようで、映画的な構図の面白さに感動した。

ちらちらと登場した、
加東大介(芸暦長いなあ。旧芸名:市川莚司)、市川歌右衛門、
中村翫右衛門などの美味しい演技、名場面は
後篇で見られるようである。

河原崎長十郎
滅びの美しさが感じられる大石内蔵助だ。
独特のクラシックな台詞まわしが厳しさと重みを感じさせ
感情移入してしまう。

京都御所勤めの小野寺十郎が訪れ、
禁裏では同情の声ありと言うと、
涙を流し京都の方角に頭を垂れるなど、
勤皇大石のエピソードを丁寧に描いているところは
撮影当時の時代背景もあり、興味深く見た。

後篇もぜひ見たいがどうなるか・・・
驚いたことに
この前篇が公開された一週間後に
アメリカと戦争を始めることになったそうだ。


総監督 白井信太郎
演出者  溝口健二
脚色者 原健一郎 依田義賢
原作者真山青果
撮影 杉山公平
作曲・音楽監督 深井史郎
美術監督   水谷浩
建築監督 新藤兼人

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「阿部一族」

2006年09月19日 | ★ぐっとくる時代劇
映画だと思っていたら
テレビドラマだったと知って
こんな濃いドラマがあったのかとびっくりした。

森鴎外の原作にほぼ忠実な内容だが
映像の強みを最大限に生かして見せ場を作り、
観客を引っ張っていくのは深作監督ならではの仕事だ。
テンポもよく、配役も申し分無い傑作

物語は徳川三代将軍家光の頃、
肥後の国(熊本)
殿様が病死した後、
18人もの殉死者が出た城下では
殉死差し止めのおふれが出される。

瀕死の殿様に殉死を禁ぜられた阿部弥一右衛門(山崎努)は
切腹のタイミングを逃し
臆病者よと影口をたたかれ、日に日に焦ってくる。

ある日5人の息子と妻、
孫など家族一同を集め、「いよいよ今日やる」
「後はよろしく。兄弟仲良く絶対離れぬように」と
あっさり切腹してしまう。

この切腹が
とんでもない悲劇を引き起こしてしまうとは!!

森鴎外は
乃木将軍の殉死を聞いて
この小説を書き始めたそうだ。

殉死を巡っての侍の意地がテーマだが、
真田広之と佐藤浩市の友情と「義」、
死にいそぐ討手の大将、
杉本哲太の心情、
原作には記されていない、
侍の妻として生きる女たちの悲しみも描いて、
とても見ごたえがあった。

蟹江敬三(長男・権兵衛役)は
無残な役がどうしてこう似合うのだろうか?

私は女なので(本当です念のため)
男の意地」というのがよくわからない。

世間体、見栄も同時に加味されているように思える。
それはこの時代、
この作品の登場人物においては
何者にも代えがたい大事だったのだろうか。

千百石をいただいていた名家もぶっ潰すんですから、すごい。

武家としての阿部家を貫いた結果、
絶望的な戦いに突き進んでいくことになったのだろうか。
それも命がけで奉公してきた
主君に背いて・・である。

絶対的な忠義と武士としての意地。
矛盾したテーマをはらんだ作品である。

いたいけな子供たちまで道連れ、
手にかけざるを得ない女たちの
苦しみは想像を絶する。

子供らを見つめる嫁(藤真利子)が
刃を手にして極限の精神状態を表現したかと
思えば、
それまで武士の妻らしく端然としていた姑(渡辺美佐子)が、
数珠を引きちぎって一瞬激しい感情を噴出させる場面も秀逸だった。

弥一右衛門の遺言どおり
「兄弟仲良く」は守って、
阿部一族は華々しく滅亡してしまうのだが、
男はそれでいいかもしれんが女はどうなる・・と
憤懣やるかたない気持ちになった。

だが
深作監督はそういうやからへの対応も
きっちり押さえた描写を用意している。

討伐シーンは
深作欣司ですから推して知るべしの大迫力

佐藤浩市と真田広之の間も、
「情は情、義は義たい!」と
クールにつっぱねるところは最近の時代劇と異なり
大変苦味が利いている。

最後に戦闘の労をねぎらわれた真田が
「阿部一族を討ち取るなど、
茶の子も茶の子、朝茶の子でござる」と言い
殿様がむっとする部分もひねりがあった。

武士の生き方、美学についても
考えてしまった。

ナレーションは中村吉右衛門
そうそう、
石橋蓮司が白塗りしていたら「赤信号」!
クセのある役が実に上手い。

時代劇好きの方は
レンタル屋の隅にあったら見てみてください。
とても面白いです。

原作:森鴎外 
深作欣司監督 脚本:古田求

出演:山崎努/佐藤浩市/蟹江敬三/真田広之/
石橋蓮司/藤真利子/渡辺美佐子/杉本哲太/中村吉右衛門(語り)

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「座頭市と用心棒」

2006年09月12日 | ★ぐっとくる時代劇
「フレディVSジェイソン」とか
「エイリアンVSプレデター」
など、
企画ものってたいていコケますよね、
それがこの作品に限っては・・超がつくほど面白い!

だって岡本喜八がメガホン&脚本も書いているのだものね。

冒頭、嵐の中にいる市を見た途端、
これはすごい!」と誰もが思うだろう。
凄まじい殺気と恐ろしいばかりの美しさに満ちているのだ。
カメラは宮川一夫。

「もう地獄は嫌だ。」

いいですねえ~そうだそうだ市さん!
市の頭は「不知火検校」を思い出させる剃髪。
シリーズ最初の頃はたしかこんな風につるつるだったはず。
このほうが断然凄みが出る。

風がびゅうびゅう吹く町が似合いすぎる「用心棒」は
黒澤の「椿三十郎」「用心棒」から抜け出してきた三船敏郎
キャラ設定といい、台詞といい、顔で人をぶった斬るところといい
オマージュ的な匂いがぷんぷん。

ファンにはこたえられない。
ただし呼び名はあくまでも
「せんせい」「しぇんしぇい!」だ。

大暴れするシーンの音楽を伊福部昭が「ゴジラ」のように
ドラマチックに彩ってくれているのが嬉しい!

かつて平和だった里は荒れ果て、
真っ青な顔の殺し屋岸田森
同じく顔面蒼白夜叉顔メイクの米倉斉加年
修羅場もたっぷり魅せるさすがの滝沢修
ミスター「肉弾」寺田農
濃いぞ細川俊之、おおアラカンも出ているし・・
くんずほぐれつの地獄絵が繰り広げられる。

赤一点に
梅の花のような若尾文子

岡本喜八の得意とする
大人数による殺陣シーンもたっぷり用意されており、
「化け物」と「けだもの」、
「座頭市」と「用心棒」、どっちのファンも楽しめる娯楽作に仕上がっている。

餓鬼が争う、
この世の地獄のようなシーンの音楽にもうなった。
市は悪くなきゃねえ。そして乾いたタッチが良い!

この映画は残念ながら地上波では絶対放送されないであろう。
放送禁止用語だらけなのですから。

なにしろパワーがある。

こういう映画を見ると元気が出る!

*映画の中のイイおんな*
若尾文子:文子さまも花である。崩した着物の着方が仇っぽく、
寒々しい荒野にぽっと咲く紅い梅の花のようである。
振るいつきたくなるような色香を漂わせていまっせ!

1970年.  岡本喜八 監督作品
脚本   岡本喜八 吉田哲郎
撮影   宮川一夫
音楽  伊福部昭
美術 西岡善信

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「新・平家物語」

2006年09月05日 | ★ぐっとくる時代劇
市川雷蔵、映画界に入って一年目、
ご本人によれば
「タナボタ的に舞い込んできた」と言う
(『雷蔵・雷蔵を語る』より)
この役を、力の限りに演じていてとても爽快。

溝口映画の主役、それも平清盛役に抜擢されたことは
当時たいへんなインパクトがあったようだ。
映画一年生といっても
すでに11本もの映画に出演していたというのだからびっくり。

だがこの作品で
映画俳優としての自覚がより一層強まったことは間違いないと思う。
監督から学んだものも大きく
「役者は待ち時間に演技の工夫をするべきだ」と言う言葉も肝に銘じたそうだ。

血気に逸る清盛の姿と
俳優として大きく羽ばたこうとしている雷蔵がダブる。

とかく、作りこんだ太い眉毛が取り沙汰されがちだが、
間違いなく太い!太過ぎますわ。

が、そんなこともどうでもよくなってくる
(というか慣れてくる)スケールの大きさ、面白さだ。

物語は、若き清盛が自らの出生の秘密に悩む姿と平行して
朝廷に使われ、山門にでかい顔をされていた武士の地位を引き上げ、
固めようとする段階を描いていく。

いわば、壮大な平家物語の序章だ。

公家の傲慢、比叡山の僧兵たちの横暴ぶりが
描かれ、今に見ておれという清盛の
たぎる思いが前面に出ている。

この清盛主人公で、続きが見たかったものである。

溝口作品には珍しいカラーのこの映画には、
衣装の遊びが随所に見られて楽しい。
溝口監督は時代考証に厳しかったが、調べに
調べた上で「あえて」映画的うそを取り入れたという。

清盛が参殿する際まとっているあざやかな衣裳や
母上のどっきり胸ポロリン衣裳なども目をひく。
ネグリジェのようなセクシーな寝巻きにもびっくりした。

木暮実千代は
「雪夫人絵図」でも、
蝶の羽のような薄物着物を
着せられていた。

溝口監督は真面目なようで
なかなか隅におけない人物だったと私はにらんでいる。(???)

堅い題名でもけっして難しいことはない、
極上のエンターテインメントなのであった。

手に手に松明を持った僧兵の大群、優雅な公家の野遊び
京の都の活気あふれる様子など、
まるで歴史絵巻が目の前で繰り広げられるようで壮観だ。

*映画の中のイイおんな*
木暮実千代:欧米のドレスのように
胸元が開いた着物って、あったんですね!
燃えるような橙色の薄衣を官能的に着こなし
元白拍子の色っぽい悪妻を演じきっております。
妻、母としてより、
ひとりの女として生涯を全うする「母上」でした。

1955年 溝口健二 
原作 吉川英治 脚色 依田義賢 成澤昌茂 辻久一
撮影宮川一夫  音楽 早坂文雄  美術 水谷浩
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「忍びの者・霧隠才蔵」

2006年08月10日 | ★ぐっとくる時代劇
シリーズ第4作目。

あれあら?石川五右衛門は何処へ?

実は今回からは主役が
霧隠才蔵
(市川雷蔵)に変わる!

ただし時代背景は受け継がれて
秀吉が死に、家康(中村鴈治郎)
が難攻不落といわれた大阪城を攻めるところから始まる。

のっけから大砲どかんどかんとぶっ放す合戦シーンである。
豊臣方で、根性があるのはもはや
真田幸村(若山富三郎)くらいしか残っていなかった。
忍者を手足のように使い家康を攻めるが、
敵は一枚も二枚もうわてだった!

カリスマ忍者、霧隠才蔵の忍術の冴えも見られるがしかし
全体にトーンが暗く、
三作めまでの派手さが抜けて生真面目な印象だ。
脚本は同じ高岩肇なのだが。

磯村みどりが艶のある声で「霧隠さま!」と、
才蔵を慕う薄幸の女を演じる。美人です。

1964年 
田中徳三監督
脚本 高岩肇

撮影 武田千吉郎
音楽 伊福部昭
美術 内藤昭

忍びの者
続忍びの者
新忍びの者


バラバラに見ても面白いけど、
1,2,3は順番に見たほうが◎です。忍び→続→新

*映画の中のイイおんな*
磯村みどり:瞳がうるうるといつも輝いています。
声も甘く潤んでいて色っぽいです。うるおいたっぷりの美人でありながら
演技派女優さんでもあります。
脇役が多かったけれど、確実で安心感がある演技をされる人ですね~

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