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邦画ブラボー

おすすめ邦画(日本映画)のブログ。アイウエオ順(●印)とジャンル分け(★印)の両方で記事検索可能!歌舞伎、ドラマ感想も。

年忘れ「忠臣蔵 天の巻」

2006年12月23日 | ★ぐっとくる時代劇
マキノ正博、池田富保監督による
「忠臣蔵 天の巻・地の巻」は1938年の作品。

脚本は天の巻:山上伊太郎 地の巻:滝川紅葉が担当している。

フィルムがブチブチ切れるし画質も良くなかったが、
メリハリのある演出が冴え渡って大変見ごたえがあった!

加えて阪東妻三郎、嵐寛寿郎、片岡千恵蔵、月形龍之介
大きな芝居、立派な顔、優雅な立ち居振る舞いに酔いました。
この面子、阪妻を除いて二役やっているところも特徴的だ。

「天の巻」は事の発端から
赤穂城明け渡しまでをマキノ監督が仕切っている。
前半は
畳替えエピソードをはじめとする、サディスティック吉良のいじめに
耐えて耐えてとうとうぶち切れる白塗りの片岡千恵蔵(浅野内匠頭)
こってりこてこてに描かれる。
松の廊下で、憤怒で真っ青になった千恵蔵がプツンと
糸が切れたように
一旦通り過ぎた吉良に向かって突進する様子は
上から撮っていることもあり、大変な緊迫感があった。

内匠頭に同情的な
脇坂淡路守(嵐寛寿郎)が、どさくさまぎれに
吉良の頭を扇子で叩いた後、
してやったりとあからさまににんまりするところは笑える。
吉良役にはいかにも憎憎しげな面立ちの山本嘉一。

この次のお楽しみが
赤穂城で知らせを受ける「待ってました!」の
大石内蔵助(阪東妻三郎)!

この映画、どこか歌舞伎調なので、ついこんな言葉も頭をよぎる。

さて阪妻だが、
それがあなた!
出てきた途端目をつぶっている!!

ためにためて
おもむろに口を開いたと思ったら!
周囲とは異なる次元にいるような
段違いの貫禄と大芝居で圧倒!

声は割れんばかりに大きいわ、渇舌は良すぎるわ、
台詞回しは大仰だわ
目玉は飛び出んばかりだわでたまげました。


何かとてつもないものを見ている気持ちにさせられる
独特の   魔 じゃなくて  !!

田村三兄弟はとんでもない親父さんを持ったものだと
しばし呆然としましたが、
三人がそれぞれ父から受け継いだものがあることも発見した。
野太く味のある声は高廣そっくりだし 
文楽人形のような眉毛の動かし方は正和そのもの。
亮は美しい横顔をもらったのだと納得した。

天の巻、地の巻とも
音楽にも趣向を凝らしており、盛り上げどころを突いて心憎い。

フィルムがところどころ切れてつながりが
悪いところもあったが
日活が総動員した作品だけあって、時代劇の楽しさ、
忠臣蔵の「肝」が押さえられていると感じました。

長くなりましたので池田富保監督がメガホン取った(これも面白かった)、
後編「地の巻」はこの次に。

1938年 監督 マキノ正博
脚本 山上伊太郎 撮影 石本秀雄
音楽 西梧郎 録音 中村敏夫 海原幸夫 時代考証 江馬務

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「座頭市御用旅」

2006年12月02日 | ★ぐっとくる時代劇
23作目。
ともなるとタイトルをつけるのにも苦労の跡が見えるような。
今回は
ラストに「御用!」となるので「御用旅」。

悪どい親分鉄五郎(三國連太郎)にただひとり反抗するのは
昔かたぎで一本気なめあかし藤兵衛(森繁久彌)。
不肖の息子清次(酒井修)は藤兵衛の悩みの種だ。
借金を背負った薄幸の娘に大谷直子
と、こうくれば筋書きは大体読めたようなものだが、
そこはそれ!?
名優たちが揃っているのでどんな見せ場があるのかと
期待してしまう。
鉄五郎の手下には石橋蓮司!と蟹江敬三が控えているし森一生だし。

美味しいです。
ストーリーはシンプルだけど、演技派揃いの「芸比べ」が見られるであろう。
という
期待通り、蓮司&蟹江は
毒づきながらもまぬけな三下を楽しくこなしているし、
森繁は枯淡の味わい。

気に障ると頬をぴくぴくさせる
残虐な親分を演じた三國連太郎は
場面によっては
顔面蒼白メイクで凄みを出している。
森繁との絡みはとても珍しいショットで、
いいもの見させてもらいました。

とは言っても
主役はやっぱり勝新太郎!

居合い抜きの見せ方や
立ち回りも工夫に工夫を重ねて楽しませてくれる。

座頭市は不死身ということは誰でもわかっているので
首に縄をかけられようが、火あぶりになろうが
どうやって脱出するのか?と、
まるでカッパーフィールドの手品を見るようでもあった。
案の定体に火をつけたまま立ち向かってくる座頭市は
まるで地獄から蘇った怪物のごとし。
肩からほんとに煙もくすぶっていて・・無茶やるなあ・・・

浪曲をバックにして最後の最後まで見せ場を作り
お客さんを楽しませる、芸魂に打たれました。

1972年
監督   森一生
脚本   直居欽哉
原作 子母沢寛
撮影 森田富士郎
音楽   村井邦彦
美術   太田誠一

*映画の中のイイおんな*
しめぎしがこ:賭場でサイコロを振っている女として出てます。
時代劇なのにマスカラバリバリの目張り(!)ばっちりで、
必要以上に?アップになるわで何やらいわくありげ・・と調べてみたら
「秘録おんな牢」「いそぎんちゃく」などに
出ている色っぽい方面のおひとでした。
ちらっとしか出ませんが違和感・・ではなく存在感あり。

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「忍びの者・続霧隠才蔵」

2006年10月24日 | ★ぐっとくる時代劇
「忍びの者」として五作目
霧隠才蔵ものとなって二作目
ややこしいがそういうことになる。

話は続いているが
前作鴈治郎だった家康が小沢栄太郎に、と
配役は変わっている。

大阪夏の陣からの幕開け。
またもやしょっぱなから大砲の音と共に
指揮を取る家康が吼えまくる。

徳川の勢いはとどまるところが無い。

だがただひとり
その流れに抗うストイックな男がいた。

ソレは誰かといえば・・

炎に包まれた城内で腹を切ろうとする真田幸村(若山富三郎)を
熱く説得し城から逃がす霧隠才蔵(市川雷蔵)・・
に決まってます。

幸村への忠誠を貫き、家康(小沢栄太郎)の命を狙う霧隠は
スイッチオンになったままのターミネーター状態だ。

元々捨て身の忍者には恐いものなどあるはずが無く
たとえ幸村が死のうとも年老いた家康が病魔に臥そうとも
その手を緩めることは無い。
案の定家康本人にまで
「おぬしがわざわざやらずともワシは病で死ぬワ」
と笑われるが、才蔵は意に介さないどころか
目標貫徹に向けて燃え上がるばかりだ。

遂に家康が死んで、
「やったやったぞ家康が死んだ!」と叫ぶ姿には鬼気迫るものがあった
だが老獪な家康の指示もあって徳川の世は
ゆるぎないものになっていく。
これはブラックなオチといわざるを得ないだろう。

屋根裏での忍者の戦い、水中戦、くノ一戦など見所は押さえてありますが
ゲストも地味でちょっと失速気味。

「忍びの者」は当初、シリーズを予定していなかったが
図らずも大当たりしたので次々と続編を作ることになった。

雷蔵自身は忍者五右衛門が、死んだ妻子の元へ向かう
二作目で「忍びの者」を演じきったつもりだったようだ。
(「雷蔵・雷蔵を語る」より)
人気沸騰したため、
会社側の意向で続けることになったが、
雷蔵は
五右衛門(1、2)→釜茹でから復活・出奔(3)
という展開に疑問を感じたそうだ。
加えて
→いきなり霧隠才蔵が主人公に(4から
)となったのだから
大いに戸惑ったのではないだろうか。

面白いのは、
そうして会社の命でシリーズを続けざるを得ない自分を
「私の境遇も大きな力に押し流されてしまう忍者の運命に
似ているかもしれません・・・」と書いているところだ。

やるからには面白いものにして観客を楽しませたい・・
と思ったに違いないが
この第五作の歯切れがイマイチなのは、
そんな雷蔵自身の迷いが出ているからのような気がする。

1964年 監督 池広一夫
脚本   高岩肇
撮影 牧浦地志
音楽   池野成
美術   西岡善信

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「座頭市あばれ火祭り」

2006年10月17日 | ★ぐっとくる時代劇
別名「座頭市対闇公方

勝手に名前をつけて
長年憧れていた作品。

どういうわけか、
レンタル屋でも
この「あばれ火祭り」だけは無かった。
台詞にこれでもかと差別用語が
使われているからだろうか??
VHSは発売されているようである。

闇公方」と呼ばれ、恐れられる裏社会のドンは盲目であった。

武士道残酷物語」のサディストな殿様もよかったが、
森雅之の悪役、最高!

勝新と森雅之、
対照的なふたりが碁を打つ貴重な場面があり、
絵がきまりすぎて気分が悪くなるほどであった。
声は抜群だし。
カメラは宮川一夫だし。

勝新は脚本も初執筆してノリノリ。
座頭市は腕はたつのはもちろんだが
ユーモラスな面も持つイイヤツ・・となっている。

ピーターが市にまとわりつく
チンピラ小僧を演じていて、ぶっきら棒な口調が可愛らしい。

ピーターを可愛いと思ったのは初めてだけど、
「中性的で不思議なボクちゃん」って感じで
『乱』の池畑慎之介より、はるかに魅力的だ。

崖ぷちに咲く
白百合のような大原麗子
淫蕩な妻(吉行和子)に振り回される狂気の浪人仲代達矢など
出演者は大盤振る舞いの豪華さである。
その中でもやっぱりピカイチは
悪の大王、闇公方様で、
思わずというか当然のように声援を送ってしまった。

狂四郎シリーズもそうだけど、
誰も主人公に勝てないとはいえ
魅力的な悪人が登場するとがぜん盛り上がりますね!

*映画の中のイイおんな*
大原麗子;レイコは花である。ここでは崖っぷちの白百合と書いた。
「市さん・・」とひと言言うだけでもつかみオッケ~である。
森雅之との「黄金の絡み」もあってドキッとさせるが
あくまでもチラリチラリ、とだけで気をもたせる。

1970年 監督  三隅研次
脚本   山田隆之 勝新太郎
原作   子母沢寛
撮影 宮川一夫
音楽   富田勲
美術   西岡善信

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「陽気な殿様」

2006年09月27日 | ★ぐっとくる時代劇
市川雷蔵主演の明朗時代劇。

一点の曇りも無い二枚目。二枚目半かな。
どこか暢気な若様は
大工の八五郎(小林勝彦)と鳶職の三次(佐々十郎)のお供を連れて
何でも見てやろうの旅に出、
珍事件に巻き込まれたり、恋に落ちたりする。

特筆すべきは
謎の浪人役天知茂
痩せた体から妖気ビームを放ち、
すごい面構えで悪役上等
どこか憎めない役だが十分スパイシーである。

雷蔵自身、結婚、子供も生まれて
私生活も充実していた頃の作品。

明るさがいっぱいで、
見ていて気持ちも晴れ晴れしてくるようだ。
こんな屈託の無い楽しい映画を作れたのも
大ドル箱スター、
市川雷蔵の存在があったからだろう。

若様と恋におちる姫を演じている坪内ミキ子のことが
雷蔵・雷蔵を語る」に書かれていた。

雷蔵の奥さんと坪内は、小学校から高校までの同級生で
奥さんを介して映画の世界に入ったそうだ。
そして、この作品がデビュー作となった。

”家には自分がいないときに遊びに来て
女房と「コシャコシャ」喋っている、
仕事場ではほとんど口をきいたことがない、
どうやら敬遠されているらしい”とあって
笑った。

また、
美人で才女だが、
映画のスクリーンでは小さくまとまりすぎる気がする・・とか
結婚してからよくなってきたとか
テレビではなかなかいいだとか、
映画界の先輩としての指摘も鋭い。

大スター雷蔵の
率直な気持ちを綴った内容で、
この本を片手に雷蔵映画を見るのが
楽しみのひとつになっています。

*映画の中のイイおんな*

坪内ミキ子:雷蔵さんも本の中で書いているように
早稲田大卒の才女。お嬢さんタイプの美人。
おしとやかなお姫様にはぴったりだが
ちょっと面白みに欠けるかも。目元がすっきりとした一重で
日本的な感じがします。

1964年  森一生 監督作品
脚本   笠原良三 原作  五味康祐
撮影 今井ひろし 音楽   斎藤一郎
美術   下河原友雄

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