般若経典のエッセンスを語る8

2020年10月04日 | 仏教・宗教

 

 『大般若経』転読の式文

 

 以下、エッセンスについて述べる導入として、大般若会の儀式で唱えられる『転読大般若中唱文(てんどくだいはんにゃちゅうしょうもん)』という短い文章を紹介しておこう。

 先に言ったとおり、すべてを唱えて読むには時間がかかりすぎるので、短い文章を唱えながら経巻を開いて閉じる転読を行なうのだが、内容を読んでみると、かなりエッセンスを掴まえていると思われたので、まず見ておきたい。

 

 諸法皆是因縁生(しょほうかいぜいんねんしょう)

 因縁生故無自性(いんねんしょうこむじしょう)

 無自性故無去来(むじしょうこむこらい)

 無去来故無所得(むこらいこむしょとく)

 無所得故畢竟空(むしょとくこひっきょうくう)

 畢竟空故是名般若波羅蜜(ひっきょうくうこぜみょうはんにゃはらみつ)

 南無一切三宝(なむいっさいさんぼう)

 無量広大(むりょうこうだい)

 発阿耨多羅三藐三菩提(ほつあのくたらさんみゃくさんぼだい)

 

と唱え、さらに密教系では、

 

 納慕簿伽筏帝。鉢刺壞波羅弭多曳。怛弭他。室姪曳。室曬曳。室曬曳室曬曳。細。莎婆訶。

(ノウボバギャバテイ。ハラジャハラミタエイ。タニャタ。シレイ。シレイ。シレイシレイ。エイサイ。ソワカ)

 

…と、聞いても意味のわからない呪文を唱え、しかしわからないからこそ有り難いという印象を生み出す。

 その後に「内空。外空。内外空。空空…」と、空について二十項目を述べた経文も唱えるが、これは般若経典の中に出てくるので、後に解説をしたい。

 こうしたものを唱えながら、六百巻を何人かで分担して開いて閉じ、終わったら短い般若経典である『般若心経』を唱える、といった儀式を行なうのだが、この『転読大般若中唱文』に、『大般若経』のエッセンスとして挙げられているところを見ていこう。

 なるべくわかりやすく説明するために、最初の句の「諸法」と四番目の「畢竟空」からいこう。

 「諸法」は「すべての存在」、「畢竟」とは「究極のところ」、「空」とは「実体ではない・非実体」という意味で、つまり「すべてのものは究極のところ非実体である」というのがこの文章の結論であり、般若経典全体の説くところである。よく知られた『般若心経』の言葉でいえば「諸法空相(しょほうくうそう)」である。

 

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