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痛快!爽快!男の生き様!『死ぬことと見つけたり(上・下巻)by隆 慶一郎

2020年04月23日 | 小説レビュー

『死ぬことと見つけたり(上・下巻)by隆 慶一郎~常住坐臥、死と隣合せに生きる葉隠武士たち。佐賀鍋島藩の斎藤杢之助は、「死人」として生きる典型的な「葉隠」武士である。「死人」ゆえに奔放苛烈な「いくさ人」であり、島原の乱では、莫逆の友、中野求馬と敵陣一番乗りを果たす。だが、鍋島藩を天領としたい老中松平信綱は、彼らの武功を抜駆けとみなし、鍋島藩弾圧を策す。杢之助ら葉隠武士三人衆の己の威信を賭けた闘いが始まった。(上巻)「BOOK」データベースより

~鍋島藩に崩壊の兆しあり。藩主勝茂が孫の光茂を嫡子としたためだ。藩内に燻る不満を抑え切るには、光茂では器量が小さすぎた。老中松平信綱は、不満分子と結び、鍋島藩解体を画策する。信綱の陰謀を未然に潰そうと暗躍する杢之助たち。勝茂は死に際し、佐賀鍋島藩存続のため信綱の弱みを掴め、と最期の望みを託した。男の死に方を問う葉隠武士道をロマンとして甦らせた時代長編。(下巻)「BOOK」データベースより

 

小さい頃から、週間少年ジャンプの愛読者であった僕ですが、大ヒット作である

 

花の慶次(一夢庵風流記)』や、

『影武者・徳川家康』

の原作者である、隆慶一郎氏のことを全く知りませんでした

色々な方のレビューにもある通り、隆慶一郎氏は、「史実」と「フィクション」を見事に織り交ぜて、見事な男っぷりを描くのが抜群に巧い作家さんでした。

という過去形で書いているのも、すでに1989年11月4日に鬼籍に入られており、心踊るような氏の作品を読むことは出来ません。

Wikipediaによると、隆慶一郎氏は、旧制同志社中学、第三高等学校を経て、東京大学文学部仏文科卒という素晴らしい経歴の持ち主で、戦時中は学徒出陣で出征、陸軍士官として中国大陸を転戦し、この時期に陣中に持って行った『葉隠』が、作家として『死ぬことと見つけたり』を書くきっかけとなったとのことです。

この『葉隠』が、誠に潔い武士の生き様指南書のようになっており、新渡戸稲造の『武士道』よりも、さらに潔さとイケイケ度が増した内容になっています。

それにしても、本書の素晴らしいところは、佐賀鍋島藩の浪人である斉藤杢乃助、牛島萬右衛門と、藩士の中野求馬の三人が男の生き様を見事に表現してくれていて、連作短編集のようになっており、とても読み応えがありました。

しかしながら、最後の最後、物語のクライマックスである「江戸の大火」から、「さぁ、いよいよエンディングやで!どんな男の最期を見せてくれるのか?」と期待しましたが、そこで隆氏の命の灯火が消えてしまいました。

隆氏が遺した、物語のシノプシスから、編集部が汲み取った内容が巻末に収録してあり、ある程度のエンディングを理解することは出来ました。

それにしても、5年余りの作家人生において、名作ばかりを10作品ほどを書き上げ、その途中で天に召されてしまった偉大な作家さんの軌跡と、『葉隠』を読んでみたいと思いました。

未完のうちに終わってしまったことが残念であり、

★★★★4つです。


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