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叙述トリックに走りすぎたか『出版禁止』by長江俊和

2020年06月22日 | 小説レビュー

~『出版禁止』by長江俊和

~社会の暗部を暴き続ける、カリスマ・ドキュメンタリー作家の「心中事件」。相手は、有名女優の妻ではなく、不倫中の女だった。そして、女だけが生き残る。

本当は、誰かに殺されたのではないか?「心中」の一部始終を記録したビデオが存在する。不穏な噂があったが、女は一切の取材に応じなかった。7年が経った。

ひとりのルポライターが彼女のインタビューに成功し、記事を書き上げる。月刊誌での掲載予告。タイトルは「カミュの刺客」。しかし、そのルポは封印された―。いったい、なぜ?伝説のカルト番組「放送禁止」創造者が書いた小説。「BOOK」データベースより

 

 

とても興味深い設定に「こんなパターンは初めてかも?」と、期待しながら読み出しました。

文書表現や描写に若干の拙さがあり、「うまく事が運びすぎやん」と、興ざめする部分はあるものの、中々引き付けてくれる展開で最後まで一気に読み切りました。

色々と細かな叙述トリックやアナグラムが仕掛けてあるんですが、「仕掛けの為のストーリー展開になっている」という、よくあるパターンですね。

終盤に二転三転するんですが、今ひとつ納得いきませんし、考察サイトを読んでみても、「ふ~ん、そうなん?」と、テンションが下がる感じでした。

小説の設定上の物語とはいえ、人の命を奪うということに、もう少し意味や重みを持たせるべきだと思いますし、そこがボヤけてしまうと、全体がボヤけてしまうんで、それこそ本末転倒です。

テクニックに走りすぎて、読者に訴えるべきテーマやメッセージが伝わらず、そういう意味では残念な小説でした。

しかしながら、筆者がやりたかった「読者を騙す」という意味では成功したとも言えるので、

★★★3つですかね

コメント
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