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表現も美しいが評価が分かれるところ『マチネの終わりに』by平野啓一郎

2019年03月01日 | 小説レビュー
『マチネの終わりに』by平野啓一郎

~結婚した相手は人生最愛の人ですか?ただ愛する人と一緒にいたかった。なぜ別れなければならなかったのか。恋の仕方を忘れた大人に贈る恋愛小説。「BOOK」データベースより


僕は好きな部類に入りますが・・・、評価の分かれる作品だと思います。

情景描写が美しく心理描写も精緻で互いの揺れ動く心の裡が良く描き出されています。

とはいっても、登場人物の台詞回しなどが高尚すぎて、ややついていけない部分が多くありました。

クラシック音楽や外国映画に造詣が深い方なら大丈夫なんでしょうが、説明や感想を述べ合う箇所が、ややしんどいですね。

天才ギタリスト・蒔野聡史と、美人ジャーナリスト・小峰洋子の二人が、強く惹かれあいながらも、様々な障害によって引き裂かれてしまいます。

読者としては、何とか二人が結ばれて欲しいと願いながら読み進めるのですが、どうしても叶わない運命に、かなりの焦燥感が募ります。

脇役の三谷や、陽子の母親などが、とても良いスパイスとして効いているので、物語が引き締まって良かったです。

エンディングは爽やかですが、当然「この後、どうなんのよ?」という疑問は残ります。

しかしながら、読み終えて「時間の無駄やったな」ということは全くなく、いろいろな知識も増えますし、著者の語彙の豊富さも勉強になります。
僕の大好きな「バッハ 無伴奏チェロ組曲(ギターバージョン)」も登場します。

また、比喩表現が巧みで、唸らされる箇所が多々出てきますので、一つ二つ紹介しますね。

~「それは、繊細なニットに引っかかってしまったアクセサリーか何かのように、慎重に取り扱わなければ彼女の心に取り返しの付かない痕を残してしまいそうだった。」

~「一旦芽吹くと、洋子の中には、夏休みの朝顔のように三谷の存在がいくつも鮮やかな花を咲かせ、感情の隙間にその蔓を絡ませていった。一つ一つの花は、決して長くは保たなかったが、蕾の数はなかなか減らず、どうやらこの夏いっぱいは続きそうだった。-蒔野に会うまでは。」

・・・等々、美しく、「言いえて妙」の表現を使われる著者です。

そして、今年の秋には、福山雅治と石田ゆり子のダブル主演で映画化されるそうです!


『映画版 マチネの終わりに』

福山はハマり役やと思いますし、石田ゆり子が、小峰洋子をどのように演じるのか?少し線が細い感じもしますが、どうでしょうね楽しみです!


さて、★の数ですが、4つ付けたい気持ちもありつつの、
★★★☆3.5ですね。

コメント
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