素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

「堆肥葬」初耳でした

2023年12月06日 | 日記
 今日の毎日新聞の「論点」は《お墓を考える・下》だった。3人の方がそれぞれの立場から、故人を誰がどのように弔えばよいのかを書かれている。私も父の墓が志摩市の浜島にあり年に数回訪れて管理維持している。帰るたびに「墓」というものが地域の中心に存在していた頃の幼少期からのことを思い浮かべ、今は過度期に来たことを実感させられてきた。

 現場に密着して葬送や墓についての本を4冊書かれてきたフリーライターの井上理津子さんの「今は、古い家制度が崩れ、新しい共同体が生まれる転換期かもしれない。この転換に社会一般の意識が追いつけば、無縁遺骨の問題はかなり解消されていく気がする」という指摘には共感する。

 横須賀市福祉専門官の北見万幸さんは、行政の現場で終活支援事業を生み出し「無縁遺骨」の問題に取り組まれている。多くの市で取り組まれているエンディングノートの配布、配っておしまいではではだめで、その情報を生かすことが行政の仕事ではないかという話は示唆に富んだものだった。「生前意思を生かす行政」が「無縁遺骨」のための公費支出削減だけにとどまらず、住民の生前、そして死後の尊厳を守ることにある。という話は説得力があった。

 3人の話の中で、「これは!何だ?!」と思ったのが4浄土真宗本願寺派僧侶松本紹圭さんの「地球環境循環する堆肥葬」であった。葬送の方法の変遷や国による相違など多少の知識はあったが、「堆肥葬」という言葉は初耳で驚いた。

『 ヒューマンコンポストをご存じだろうか。直訳すると人間堆肥(たいひ)。遺体をバクテリアや菌類の力で分解し、約7週間で「土」にする。「土」は故人の畑や花壇などにまける。言うなれば堆肥葬だ。米国の一部などで広まりつつあり、日本でも導入の動きが起きるのではないかと思っている。

 元々、環境保護の文脈で出てきた。5年ほど前、米国人で起業家の友人に初めて聞いた。「火葬は最も多く二酸化炭素を排出する埋葬法」で、体重68キロの人の火葬には車が7725キロ走るのと同じエネルギーが必要だという。その火葬の対極が堆肥葬なのだ。

 火葬以外を考えたこともなかった私は、聞いてぎょっとした。が、しばらくして「これもあり」と思えるようになった。友人の僧侶や私の所属寺のイベントに来る人にも、肯定的な意見が多い。

 人間は、何らかの「大きな物語」が必要な生き物だ。先祖代々の歴史に自分も連なるという物語は、仏教本来の教義以上に人々の心を捉えてきた。だから、寺はしばしば、墓による「家族教」を事実上の経営基盤としてきた。だが近年、この「家族教」が弱まってきた。

 おかげで、無縁遺骨も増え、「私らしく」埋葬されたい人も増えた。散骨や樹木葬、ロケットで遺骨を打ち上げる宇宙葬まである。いずれも、自然のような大きなものへ返るイメージだろう。ただし、宇宙葬は大量の化石燃料を使う。樹木葬は、墓石に代えて木を墓標とする以外、通常の火葬による埋葬法と構造は変わらない。高温で火葬されれば骨はセラミック化するため、散骨しても分解されない。

 堆肥葬ならば、余分な化石燃料を使わず確実に大地へ返る。堆肥葬に共感するような若い世代は、「ナチュラルにオーガニックに死にたい。墓標も残したくない」といった意識が強い。ある人は「将来良い土になるために、オーガニックな食事を取るようにしたい」と言っていた。ここまでくると、発想が自分目線どころか地球目線だ。「家族教」に続き「私らしさ」の物語も賞味期限が切れつつあり、個人感覚を超えた「地球教」が芽生えているように思う。

 私たちは「自分の体も最後はゴミのように燃やされるだけ」と感じて、どこか心の奥底で傷ついてきたのではないか。だからこそ、燃え残りである遺骨にこだわってきたのかもしれない。堆肥になれば、私たちは地球環境を循環しながら生き続けられる。特定の家の「先祖」に収まらず、未来世代の人間を含む環境丸ごとの「祖先」になる。

 もちろん、いくら堆肥葬が普及しても、火葬を選ぶ人はいてよい。「無縁遺骨を肥料にせよ」と叫ぶつもりも毛頭ない。ただ、火葬以外の選択肢を知っておくことが大事だと思う。いかに生きていかに死ぬかを考える、とても重要な要素にもなるはずだ。

 なお、浄土真宗の宗祖、親鸞も「遺体は川に流して魚の餌にしてほしい」と遺言した。遺体が堆肥になるまで「四十九日」かかるヒューマンコンポストは、実は仏教との相性も良い選択かもしれない。
』という話は、新しい視点を与えてくれた。

【アメリカ】遺体を火葬せずに“堆肥”に 賛否分かれる中で進む環境にやさしい選択
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