素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

光と陰」

2024年10月09日 | 日記
 今週は、ノーベル賞の各賞の発表があり、マスコミを賑やかせている。このノーベル賞はダイナマイトを完成させ、1896年63歳で亡くなったアルフレッド・ノーベルの遺言「私の全資産を基金に当て、その利子を賞として、毎年、その前年に人類に最大の寄与をしたものに授与する。この利子は五等分し、物理学、化学、生理学または医学の各分野で最も重要な発見をした者、文学で最も優れた作品を書いた者、世界の平和のために最善をつくした者に与える」によることはよく知られている。経済学賞は、1968年にスウェーデン国立銀行の寄付により新たに設けられた。

 1833年にスウェーデンのストックホルムで生まれたノーベルは、父親が発明家だったこともあり、小さい頃から科学や機械、発明に興味を持っていた。29歳の頃、父親の案を受けて、ニトログリセリンと黒色火薬を混ぜ合わせた爆薬の研究を始めた。黒色火薬は昔から使われている火薬で、取り扱いは簡単だが爆発力が弱いという欠点があった。ニトログリセリンは心臓発作の治療薬として用いられる物質だが、振動を加えたり圧力をかけたりすると強烈な爆発を起こす。馬車で運搬中にでこぼこ道で揺れて爆発する事故も多くあった。この不安定な物質ニトログリセリンのためノーベルの爆薬製造工場が爆発で吹っ飛び、弟のエミールを含む五人の死者を出してしまった。

 道路やトンネル工事を効率的に進めるためには強力な爆薬は必要とされていたこともあり、ノーベルはもっと安全な爆薬を作ることが出来ないかと考え、日夜研究に没頭した。そして、1867年34歳の時、ニトログリセリンを珪藻土に含ませて爆薬を作ると、振動や圧力が加わってもたやすく爆発することのない安全な爆薬、ダイナマイトを完成させた。
 
 これによって人の手ではなかなか掘り崩すことが困難な岩山に穴を開けてトンネルを掘る工事などに素晴らしい効果を発揮した。ノーベルの発明したダイナマイトは売れに売れ、たちまち彼は大金持ちになった。しかし、1870年に普仏戦争がはじまり、プロシア軍はダイナマイトを爆弾として使用し始めた。他の国も戦争に勝つためにプロシアにならった。このため、ノーベルの工場のダイナマイトはますます売れて、彼は世界有数の億万長者となっていった。

 しかし、その一方で戦場でダイナマイトによって命を奪われていく人たちもうなぎのぼりに増えていった。ノーベルは科学者として、自分の発明が世界の平和と人類の幸福に役立つことを望んでいたが、結果は彼の望んでいたこととは逆になってしまった。

 科学発明の「光と陰」である。原子力についても同様のジレンマが起きたことは周知の事実。このノーベル賞の発表の時期には人類の背負う宿命を考えてしまう。

 ゲノム解析の進歩で、難病の克服という光が見える反面、優生思想への寄与という恐れを感じる。ドローン技術は災害、過疎地の課題解決の可能性を高めてくれる反面戦場で使われるという負の部分も急速に拡大してきているという現実がある。

 先日、テレビでゲーム機を取り入れている介護施設が紹介されていた。eスポーツに嬉々として参加していた。生活への意欲が増し、認知症予防にも効果があるという。高校でも部活動に積極的に取り入れている学校が急速に増えていると別の番組で取り上げていた。生まれてこの方ゲームにはまったく無関心な私にとってはよくわからない世界だが、老若男女に多く受け入れられているのは事実でプラス面も多いと思うが、反面、垣間見ただけなので的外れかもしれないが、戦闘場面が多くあるのが気になった。

 これからの戦争は無人機によるものが主流になってくるのはまちがいない。その戦闘訓練に見えてしまうのは偏見か?

 文明のもたらす「光と陰」がああることを忘れてはいけない。と改めて思う。
 

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