二葉鍼灸療院 院長のドタバタ活動日記

私が日頃行っている活動や、日々の鍼灸臨床で感じたことなどを綴っていきたいと思います。

「不定愁訴症候群について」 石川県鍼灸マッサージ師会 中央学術研修会 参加

2009年12月04日 | 鍼灸
11月29日(日)、(社)石川県鍼灸マッサージ師会の中央学術研修会が津幡で開催されましたので、参加してきました。

≪中央学術研修会≫
◎日 時:平成21年11月29日(日) 午前10時~午後12時
◎場 所:条南公民館(津幡町条南コミュニティ-プラザ) 大ホール
      河北郡津幡町字太田ろ3  Tel;076-288-3115
◎内 容:総合診療科における不定愁訴症候群について
◎講 師:金沢大学付属病院 救急部  尾山 治 先生



 講師の尾山先生(右)と座長の中田先生(左)

皆さん勉強熱心で、31名の会員が出席されていました。

不定愁訴症候群は、血液、画像や病理学的など病的異常を示すような検査に異常が出ないにも関わらず、本人は苦痛を感じる症状を多く訴えている状態を言います。これに関しては、私の師匠である東洋医学研究所 所長 黒野先生が、社会構造の変化と、臨床の場での患者様の症状の変化、あるいは鍼灸師が多く遭遇するでろうこの症候群に対して、いち早く着目され、現在も継続して研究されています。
その関係で私も修行時代はよく勉強させて頂きましたし、常に現代の疾病には心や精神というものが関与するという患者全体を捉える診方を教えて頂きました。



講師の尾山先生は、現在は救急部でご活躍されていますが、本来は総合診療科をご専門とされています。金沢大学付属病院ではこの総合診療科がなくなったため先生は救急部に在籍するのですが、常に総合診療の方に関心をもって診療に取り組んでおられます。以前、総合診療科で行っていたときの経験をもとに全体的な医療の中での不定愁訴症候群はどう考えられているかなど講義して頂きました。

不定愁訴症候群についてのお話があり、大まかに分類して、器質的疾患を伴ってそこに不定愁訴症状を多数発症している”心身症”、と、器質的疾患が存在せずに様々な症状を発症している神経症や自律神経失調症などがあるとのことでした。そして、現在は不定愁訴症候群を含め、精神疾患は米国精神医学会が発行している、DSMⅣ-TR(「精神障害と診断の統計マニュアル 第四版」)をもとに診断されており、大規模でうまくまとめられた分類であるが非常に複雑であるとのお話もありました。その中で不定愁訴症候群を訴える患者の多くをカバーするのは身体表現性障害(身体化障害)であろうということでした。


基本的な不定愁訴症候群の知識を示して頂いた後に、症例を交えながら分かりやすく説明して頂きました。①脱力感、筋肉の痛みを訴えて来院した20歳代の女性…インターネットでいろいろ調べて不安を募らせ総合診療科受診。最終的にマリッジブルーであることが分かり結婚式が終わると症状消失。②集中力と食欲の低下を訴えて来院した40代の男性…様々な検査をしたが異常なく総合診療科へ。症状と経過から大うつ病と診断。③倦怠感を訴え来院した30代の女性…患者の年齢や生活背景、症状などから統合失調症と診断される。④体力と気力の低下と首の腫脹を訴え来院した60代の男性…検査所見には特に異常はなかったが、よくよく話を聞くと甲状腺機能低下症の薬を医師の指示通り服用しておらず、甲状腺の機能低下による症状と判明。これらの例で分かるのは、鍼灸診療を行う時も、この症状はどこから来ているのか、患者の訴え、生活状況、環境、既往歴、生育歴など話をしっかり聞いて判断することが重要であることが言えると思います。これは多くの症状を訴える不定愁訴症候群の場合ははとくに考慮しておかないといけません。

最後のまとめで、不定愁訴症候群など訴えの難しい患者を理解するためには、①訴えをきく ②既往をきく ③不安をきく ④苦痛を認める(共感する) ⑤生活機能障害を理解する ⑥自分の理解を患者に確認する、などがありました。
また、難しい患者とつき合っていくためには、①その日の対応を一つのことにしぼる ②身体疾患の可能性を考える ③経過観察の方法を考える、などのまとめがありました。
そして、不定愁訴症候群を診るとはどういうことか ①通院する場所を提供、紹介する ②患者の奥に潜む稀な疾患を見つけ出す ③時間をかけて患者の自己理解の手助けをする、ということを言われていました。

社会構造の歪み、自然環境の破壊、不適切な生活習慣など多くの要因が重なり合い、現代の社会は生活習慣病のみならず、精神疾患も増加の一途をたどっています。また、ストレスというのは日々誰にでも与えられるものなのですが、その対処の仕方、いわゆる人生においての心の在り方や考え方のような心の処世術を教えるべき人が教えることをせず(教えられない)、ストレスに弱い、対処できない子どもたちが育ってきているのも事実です。これからもっと、心を病んで、ストレスを心にため込んで不定愁訴を訴える人々は多くなってくるでしょう。そのような意味でも鍼灸師はこのような症候群や精神疾患、あるいは宗教心などに一定の理解が必要だと感じます。
本日も勉強になりました。

この後、質疑応答が活発に行われ(私も質問させて頂きました~)、あっという間の2時間でしたね。



実は、これが終わった後は、石川県医師会主催の「健康についてみんなで語ろう会」が行われるということで、それにも出席するため、金沢へ向かったのでした。動ける時に動いておかないと~ね 

二葉鍼灸療院 田中良和

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2 コメント

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こんばんは (おむぅ)
2009-12-05 01:01:09
いつもお返事ありがとうございます。

実は僕も20年前、不定愁訴で苦しんでいました。
僕の場合は、心臓と左の首筋がモヤモヤして気持ち悪いのと左睾丸の激痛でした。
心臓のモヤモヤに関しては、心療内科で心電図と心臓レントゲンを撮った結果、心臓が小さいなどの器質的異常はなく、心療内科と呼吸器内科の名医である桂載作先生には、たぶんパニック発作だと思うと言われました。
また、別の精神科の先生には、心気症だと言われました。
左睾丸の痛みに関しては、大学病院の泌尿器科の先生には、睾丸過敏症という心の病気ですと言われました。

さて、不定愁訴の症状が出たときに最も危険なのは、病院巡りでヒポコンドリーになり、霊能者、あるいはそういった類の宗教のお寺を訪ねてしまうことだと思います。
実は僕も心臓のモヤモヤで悩み、病院では解決しなかったので、除霊などを売り物にしている宗教に一時期はまってしまったのです。
そこの僧侶は、脳に器質的な異常のない精神病は霊障ですと言いました。
おそらく、あの僧侶は精神医学を勉強していないと思います。
にもかかわらず、あのような無責任は発言は許せません。
もちろん僕は、その宗教をやめました。
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どうもです (二葉院長)
2009-12-07 09:52:20
おむぅさん

コメントありがとうございます。

不定愁訴を訴える患者様に限らず、自分に何か大きな不幸が起こったり、アクシデントが重なったり、落ち込んでいる時、人は何かに頼りたくなるものです。そこに付け込んでくるのが、たちの悪い新興宗教です。中には真面目にやってらっしゃる方もいますが、私の知るところでは本当に少ないと思います。
しかし、そのような状況の時に心の支え、助けになるのも人との繋がり、人との出会いであることも確かだと思います。一時期、そのような宗教にはまってしまったのも人生の一部としては一つの勉強なのだと思います。病気に心の占めるウエイトは大きいのは確かですが、現代科学を利用することも必要な場合も多いです。
ようは”平穏な時、苦境の時、その境涯においてどのように自分の心を制御するか”であると思います。心の病気だから、ガンだからと言っても、心の持ちようは自分次第でどうにでもなります。どこに視点をおくかで人生も変わってくるのではないでしょうか。
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