この日、ミサのあとに食事会があった。
それが終り、掃除をし、ほとんどのボランティアが帰宅したあとに、まだ残っていたプレゼントとお弁当を配った。
一つのグループが自転車に乗って上野に配りに行き、私はMC{マザーテレサの修道会の略}の施設に残り、センターにいるおじさんたちにお弁当を配ることにした。
MCの施設のすぐそばにはおじさんたちにセンターと呼ばれている城北労働・福祉センターがある。
暖房が効いている地下の部屋ではおじさんたちがテレビを見たり、友達がいる人は将棋などをしている、また何もせずに他者との関わりを持たず、蛍光灯の明かりのした、ただベンチに座り、有り余る時間を潰しながら寝ている人もいる。
私はその場所に行き、おじさんたちにまだお弁当があることを伝え、MCまで取りに来てもった。
50人ぐらいは来てくれたが、それでもまだお弁当は残っていた。
院長のブラザーセバスチャンが白髭橋近くにあるブルーテントで生活をしている人たちに配りに行こうと言うので、4人のボランティアとともに向かうことにした。
小雨ではあるが冷たい雨が降りだしてきた。
私は合羽を借りて自転車に乗った。
お弁当と食事会で残ったパンとパンケーキを詰めたものを持って行った。
隅田川沿いにあるテントに外から優しく声を掛けて、一人ひとりに丁寧にお弁当とパンを渡して行った。
優しく声を掛けなければ、誰かの悪戯や襲撃のように思われ、脅かしてしまう可能性があるからである。
ある橋のたもとまで行った、そこには午前中にプレゼントとお弁当を渡したおじさんがまだ居た、彼はそこを寝床にしていた。
「また来たよ、まだお弁当があるから、良かったらもらって」
彼は午前中にもらったお弁当を持ち立っていた。
「そんなにもらっても、オレ、トイレに行かなきゃならなくなるよ。トイレはあそこまで行かなくちゃ行けないから」と隅田川の反対側にあるトイレを指さして言った。
「そうか、そうなんだ」
「うん、いまね、ちょうどこのお弁当を隠そうとしていたんだよ。いつもね、こうして食べ物を隠しておくんだよ」と言い、川沿いに縁にあるツタの植物の下に彼はお弁当を詰め込んだ。
私はそれを見て感心した、こうして彼はどうにか食べ物を食べながら日々を生きているんだと思った。
彼の左目は見えないのだろうか、左目は閉じたままだった。
上下の服は泥やホコリや汗で汚れきっていたが、そんなことを少しも気にすることなく、私の目を見て、笑顔を絶やさずにいた。
「へぇーそこに隠すんだ。ネズミに食べられないの?」
「ここは大丈夫!ネコがいるから!この前もネコがネズミを捕まえていたよ!」と明るい口調で彼は言った。
「それじゃ、安心だね。まださ、食べ物があるから、良かったらもらって。パンだったら少しは日持ちするから」
「うん、ありがとう」と言って、パンの入ったビニール袋を手にしてくれた。
それから彼はお話好きなのか、普段は誰とも話さないからなのか、彼は笑顔のままでしばらくいろいろと話してくれ、「ここにこんなバカがいるのを忘れないでくれ」と最後に言った。
彼にはそう言わざるを得ない孤独があるのだろう、にもかかわらず、人懐っこい笑顔で居られるのはなぜだろうか、やはり神さまがそこには居るのではないか、私はそう思わずには居られなかった。
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