海上撮影家が見た上海2

上海で撮影活動をしている海原修平のBlog。「海上」とは上海の逆で、新しい上海という意味。更新は不定期。

テッサータイプレンズの話

2023-10-29 | GFX+オールドレンズ

Elmar50mm f2.8・Elmar90mm f4 ・Hektor135mm f4.5 全部テッサータイプの古いレンズ

 

日本で活動していた頃の話だが、4x5カメラの常用レンズ一部をAPOタイプに変えた事があった。で、何か大きな変化があったかというと、ほとんど変わらないかった。まぁ、しいて言えばコントラストが上がりヌケが良いかなぁという程度。毎日のように夜空や地図の複写や建物の壁を撮るならAPOタイプのレンズが必要だろうが、通常は全く必要性を感じないと当時思った。4x5カメラはビュータイプ以外に、CAMBO TWR54(4x5の二眼レフ)を人物専用として使っていた。このカメラをほとんどの人は知らないと思うが、上下同じ焦点距離の4x5レンズが付いていて、4x5フィルムホルダーを入れてもピント合わせが出来るという優れものだったのだ。オリジナルレンズは、Schneider製のSymmarがカム連動して付いているが、210mmのみRodenstock製のSironar210mmに調整してもらい使っていた。このSironarは、とても軟らかい描写なので人物撮影に最適でタレントなどの撮影では活躍したレンズだった。その後ずっと、Rodenstock製"Sironar"とKodak製の"Commercial Ektar"が、私のベスト大判レンズだと思っていた時期が長かった。

上海に事務所を移転した後に日本へ一時帰国する度に、今は亡きVH・PICTURESの角田善彦さんには恵比寿の喫茶店で毎回会っていたのだが、ある日彼から見せられた大全紙サイズのネガカラープリントは、しっとりとした湿度を感じるような描写に驚愕した。その写真の作家名は忘れたが、その撮影に使ったレンズは日本の山崎光学のCongoレンズだったのだ。この光学会社とレンズのブランド名は知っていたが、一度も手に取った事もなく試写した事もないのは、私の周りのカメラマンでも使っている人が誰一人としていなかったからだ。でも、すでに後の祭り。すでに世の中はデジタル一直線に向かっていたので、大判カメラは必要ない時代へ。

それ以来レンズの事を冷静に考えてみると、私が一番好きな描写のコマーシャルエクターと山崎光学のコンゴーレンズのレンズ構成をみると両社ともテッサータイプだと気付いた。なんだ、高額で複雑なレンズ構成のレンズより単純な3群4枚構成のレンズで十分だと思ったのは、随分と後の事だったのだ。それを思うと、現在単純な3群レンズ構成を一番理解して製造しているのは、フォクレンダーブランドのコシナだろうな。特に先代の小林博文社長は、日本ではシンプルな3群タイプのレンズを一番理解している人だと思うよ。

☆現在のデジタル用レンズの構成は、AFの機能もあり複雑になりレンズ枚数も相当増えて高価になり過ぎている。写真がフィルムからデジタルになり様々なレンズ収差を取り除く為には必要なのかも知れないが、大き過ぎて重過ぎるレンズなんてまっぴらごめんの私。そして、APOタイプのレンズなんて、私の撮影スタイルでは一番必要のない部類のレンズだ。レンズの描写と人を同列に比べるのは間違っているが、生真面目で勉強も運動も出来て性格も良い学校の先生が褒める優等生タイプの人って、一緒に遊びに行くと意外と面白くない人が多かったような気がするのと似ている。まぁ、何をどう撮るかでカメラもレンズも決まるのだけれど、私は昔のゆるいレンズ描写の方が好き。写真がデジタルになった今、レンズ描写で不満な部分はある程度ソフトウェアで解決出来る時代だしね。

☆現在はボケ至上主義のような時代で、レンズのf値が明るいレンズが好まれているが、感度設定を自由に選べる事を思うと開放f値ってf2もあれば十分だと思っているけどね。


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