今年に入ってから「消逝的老街1996-2000」写真集5000部が完売になったので、その中身を少しずつアップしていく事に。写真集は第一版と改訂版の第二版があるが、中身は少し写真を変えてあり、撮影年月日と場所は第二版が正しい。第一版と第二版の見分け方は、表紙に写真があるか無いかなので判別可能。付録のミニCD(MP3)は前世紀に街で拾った音が録音されていて、すでに物売りの声など消えてしまった前世紀の街や路地裏の音が収録されている。
外灘の歩道から1999年 TX-1+TX30mm f5.6
1999年撮影の外灘遊歩道から見た和平飯店南楼(中央)は上海万博前なので改装前。前世紀に何度か泊まったが、内装の雰囲気が租界時代を思わせるクラシカルで落ち着いた雰囲気だった。1906年竣工で当時パレスホテルと呼ばれていた。
1996年から始めた上海旧城内の撮影には、ドイツの「Noblex135U」をメインに「WIDELUX F8」をサブに1999年まで使用してきた。途中富士フィルムからパノラマカメラTX-1が発売され1999年の途中からはおもにTX-1をメインカメラに切り替えた。カメラを変えてから、今まで回転式パノラマカメラでは撮れなかった写真も生まれ、また三脚からも解放されて撮影は随分と楽になったし、レンズが3種類選べるのも大きな利点。
Noblex135UとWIDELUX F8の大きな違いは、前者がモーター駆動で後者が機械式。WIDELUXは26mmレンズ付でピントは5mに固定されていてピント合わせは出来ない。シャッタースピードは1/15 1/125 1/250の三種類のみで、フォーマットは24mm×56mm。この26mmレンズは路地裏などの比較的近距離ではワイド過ぎて歪が強調されやすく路地裏などの狭い場所では使いにくいカメラだったが、安定性ば抜群で信頼出来るカメラだった。
もう一方のNoblex135Uは、ドイツのドレスデン製でレンズはワイドラックスより29mmとやや長くシフト機能あるのと固定焦点だがピント位置はワイドラックスより近距離だったと記憶している。フォーマットは24mmx65mmとワイドラックスより横長な画面で、フジのTX-1と同じ。このカメラが優れていたのは、シャッタースピードが1secから1/500までをカバーしているので、暗い室内ではこのカメラには随分と助けられた。ただ、このカメラはシャッターを押すと最初の半回転はレンズの回転を安定させる為に回転し、後半の半回転で露光するタイプなので露光が終わるまで時間がかかる。曇の日の常用スピード1/60を例にとると、シャッターを切ってから露光が終わるまで2.5秒もかかり、人など動いている被写体の先読みが必要だ。ちなみに1sec露光するためにはシャッターを切ってから約2分半もかかってしまう。また、このカメラのレンズは29mmとワイドラックスより焦点距離が長いので、歪がワイドラックスよりかなり少ない事が利点。わずか焦点距離3mmの違いはワイド系なので結構大きいのだ。
フィルムは初期の頃イルフォードのXP2を使い、途中からコダックのT400CNに切り替えた。これらフィルムはネガカラー現像のC-41処理に対応している新しいタイプのフィルムで、ラチチュードがとても広く少しオーバー露光で撮影しておくとシャドウ部の階調が豊富で微粒子なままという不思議なフィルムだ。これは上海の細い路地裏は一日中陽の当たらない場所もあり、明暗差の激しい場所でも対応出来るので重宝したフィルムだった。ただ、フィルムの抜けが悪いので慣れないとプリント時に戸惑う人も多いようだが、当時はマルチグレードの印画紙があったので私はさほど気にしなかった。
☆今やこの二台のカメラも製造中止していて中古しか市場には無いが、Noblex135Uは発売当初からフィルムにキズが入る個体が多く、またモーターのトルク不足で縦位置に構えると回転が途中で止まってしまう個体も多く購入する場合は注意が必要。一方のワイドラックスはほとんどメンテナンスフリーのカメラと言われているくらい故障知らずだが、すでに製造会社は無い。