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どういうわけか、昨年までひとつも花をつけなかった実家の庭のやまぼうしが、今年になってはじめて花をつけました。母もよろこんでいます。秋の紅葉もきれいですし、庭に隣接する六畳間の障子に木の姿がシルエットになって浮かぶのもすてきなんです ^^
写真は、折々に季節の茶花のお話を聞かせてくださる紫草さまからいただきましたもの。おたよりに「万葉時代には山法師を『柘(つみ)』と呼び‥」とあり、『万葉集』の歌二首が添えられていました。
この夕柘のさ枝の流れ来ば簗は打たずて取らずかもあらむ
(巻三 386)
いにしへに簗打つ人の無りせばここにもあらまし柘の枝はも
(同 387)
吉野に伝わる柘枝仙媛(つみのえやまひめ)の伝説です。
むかし、ある男が梁にかかった柘の枝を拾い上げたところ、枝が美しい女・柘媛(つみひめ)に化身して男に添うのだけれど、ある日柘媛はとつぜん昇天して消えてしまうという、仙女のおはなし。
巻十の1937の長歌にも「柘の小枝(つみのさえだ)」が詠まれています。神名備山の柘の小枝のほととぎすが妻恋をする‥とあり、「妻恋」を消えた柘媛を(男が)慕うと解釈すれば、やはり柘媛伝説をもとにした歌なのでしょう。
調べるうちに、はて、これに似た物語をどこかで読んだような。とおもったら、そうそう、木下順二の『夕鶴』。あの“つう”の物語でした。「鶴の恩返し」はみなさまもよくご存知ですよね。木下順二は、もしかすると柘枝仙媛の伝説を知っていたかもしれません。
ほら、やまぼうしの花が、鶴の舞姿に見えてきませんか。