第1問
攻めを継続します。
A 85歩 B 75歩 C 62飛
第2問
74同飛、74同銀では利かされです。
A 85桂 B 66銀 C 77歩成
第3問
飛車は殺されましたが承知の上です。
A 66歩 B 48馬 C 45歩
第4問
多分大山先生がうっかりした攻め手です。
A 57桂成 B 48金 C 47金
第5問
地味ですが確実な攻めです。
A 66歩 B 45歩 C 54歩
20180412今日の一手
1月13日の名南将棋大会から、TさんとAさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。
一昨日の一手の回答
☆ 形勢判断をします。
駒の損得はありません。
玉の堅さは後手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は88角1枚。
後手の攻め駒はありません。
総合すれば互角か後手もちか。
☆ 大局観として
定跡にありそうな局面ですが、定跡化されていません。この図は互いに手損がないのですが、居飛車の46銀37桂の攻撃型は、四間飛車が43銀型で46銀に32銀と引いて37桂を誘うから出現するのです。
35歩には45歩で反撃できるから、居飛車は37桂と跳ねてからの仕掛け
を狙うというのが定跡で、これだと問題図よりも後手が2手手損しているはずなのです。結構難しい定跡ですが、先手も十分に指せます。
序盤を見ていないのですが、先手が先に37桂と跳ねたのではないでしょうか。
46銀には45歩があるからということで桂を跳ねてから46銀ではなかったかと推測します。37桂ではなく38飛が定跡で、35歩同歩46銀を狙うのですが、これが先手にとって思わしくなく、右46銀急戦があまり指されない理由です。後手が藤井システムだと少し形が違うのでうまくいくこともあるのですが。
さて細かいことを書きましたがもう一度問題図です。
端を受けてもらえたので、この図から攻めても何とかなるかもしれませんが、簡単ではありません。
右46銀急戦の利点は、銀を引けることにあるのだと思っています。金銀4枚の舟囲いは結構堅いので、金銀3枚の美濃囲いには劣りません。それが実現するかどうかで、急戦がうまくいくかどうかが決まると思っていてよいでしょう。ちょっと腰を引いて攻める感じです。
ちなみに左46銀急戦の場合は、舟囲いが薄いのですが攻撃力でカバーする感じです。
この図では後手の左銀が54ですから、美濃囲いが堅いです。反面3筋が手薄ですから、そこをうまくつけるかどうかにかかっています。後手からの45歩が強力ですから、それにうまく対応できるかどうかです。
○ 実戦は35歩で
当初からの狙いです。そのために端を突いて飛車を浮いていたのです。54銀をとがめる意味からも、これを優先で考えたいです。
当然後手は45歩の反発です。33角成同桂34歩
こう行きたくなるのもわかります。46歩33歩成41飛46飛
後手から44角もあるので飛車で歩を取らなければならなさそうです。46同飛同歩。
ここまでは直線の変化で進みました。
問題図に比べて、先手が駒得になり(銀VS桂+と金)、玉がやや薄くなり、攻め駒は3対3、形勢判断の要素が変わりました。駒得だけれど薄い先手玉が耐えきれるかということになります。
素直に寄せ合えば、38飛41飛36角
後手は57銀というのもあります。いずれにせよ後手の攻めがかなり速いので、先手が不利なのです。
79銀の形の舟囲いは8段目に飛車を打たれたら厳しいですし、68銀の形の舟囲いは9段目の飛車が厳しいです。こういう展開は、先手の37桂が取られるだけの駒ですし、持ち駒が桂なので受けには不向きです。かなり勝ちにくい形勢だと言えます。
実戦では38飛ではなく39飛の方で、66角19飛成95歩
19香を失って駒得は消えてしまいました。悪そうなので端を攻めて勝負しようとしたわけです。以下手順は省略しますが、角を切って寄せに行ったものの
攻めきれず、舟囲いの薄さが目立ちました。
さて、先手はどこかで工夫が必要です。桂を取ってもまずいのならば銀を逃げてみます。
44角88銀35角28飛
(44角に66角だとここで43金と受けられて不発)先手が歩切れなので飛車をさばくことができません。角が手持ちとはいえ、後続の攻めがないので失敗です。
もう少し工夫して角を換えずに57銀と引きます。
今度は88角成同銀44角に77角
35角28飛12飛
やはり先手が1歩損なのですが、後手の飛車を1筋に追いやりました。後手の65銀を避けて、86歩から銀冠に組んで待っていて、少し指しやすいのだと思います。
後手は57銀に35歩か。
これなら24歩同歩33角成同桂24飛
とさばけます。36歩34歩37歩成33歩成
後手の37と がかなりの脅威なのですが(36角~47とがある)、とりあえずは飛車取りで と金を作り返して飛車を侵入できればまあまあ指せるでしょう。
後手には大山流で43金の受けもあります。
24歩同歩55歩
45桂があるので、55同角同角同銀24飛22歩31角33角
というのが予想される順で、飛車は取れても形勢互角くらいです。
他には57銀ではなく55銀ですが
35歩なら24歩同歩64銀
でまあまあ。
55同銀なら
55同歩44角24歩35角
55同銀を角で取っても
55同角同歩44角24歩35角
どちらも銀交換で57銀と打たれる筋が負担です。やや苦しい変化です。銀は交換したくないです。
△ 前の変化に隠れているのですが、24歩同歩が入っていれば有利になるかもというのがあります。だから24歩を先につき捨てたいのですが、24同角
というのが厄介です。55銀しかなさそうで、43銀64銀
というのはまあまあですが
銀交換だと
はやり57銀の負担があります。すぐには大丈夫ですが、33桂~45桂で狙われそうです。少し指しにくいかもしれません。
× 後は待つ手ですが、55歩は45歩
がカウンターで、54歩46歩同歩同飛
というのはさばかれています。
× 68銀でも45歩
これは88角成同玉44角が王手飛車になってしまいます。それを避けて33角成同桂としても、57銀44角
で両取り。35歩99角成34歩44馬33歩成同馬77銀
うまく桂馬を取り返せたとしても、守りの香を失って馬を作られたのですから後手よしです。
とすれば45歩に55銀しかないですが
46歩同歩55銀同角同角同歩44角
で55角を見られてまずいです。(後手は46飛もある。)
× 86歩と突いて
天守閣美濃を目指すのは、後手の65銀を避けて自然なようにも思えます。
ただ、無造作に組むと45歩を食らって
また王手飛車の筋にはまります。88角成同玉というのがまずい形なのです。
77角と備えてから囲っても
65桂66角45歩
これも不本意な戦いです。
△ 持久戦なら66歩が正しくて
それから天守閣美濃~銀冠です。
だけどこういう瞬間が危なくて、44角27飛35歩同歩32飛
というさばきを狙われます。右桂を跳ねているのに持久戦というのはあまり思わしくないようです。
○ 待ち方としては68金上とか
68金寄とか
で1手待って、74歩と指させて効果があるかどうか、ということになります。そんなに得でもないような気はしますが。
☆ まとめ
やはり仕掛けるのが本筋で、事前に研究しておくのだろうと思いますが、35歩です。
当然の45歩に57銀と引けるかどうか。
実は右45銀急戦では、銀を戻るのがかなり有力な手です。これは何度も経験していて、前に書いた記事もあります。
銀を引くと金銀4枚の舟囲いは結構堅いのです。この場合は後手の54銀も守りに働くかもしれませんから何とも言えないのですが、玉が堅いままでさばき合いになる急戦はかなり有力です。例えば45歩急戦や中飛車への加藤流袖飛車急戦があてはまります。
ちょっと気が付きにくいですよね。こういうのは何度も定跡書を読んで、実戦を指して、なぜよくなるのか悪くなるのか、こういう形は良い、悪い、という経験があってわかるのだろうと思います。定跡を学んだら、ちょっと高い視点でもう一度眺めてみるというのは有益ですし楽しいです。
ところで、この問題の対局者はどちらも中学生なのですが、若者の将棋は直線的な変化を選びがちです。銀を引かずに角を換えて、銀と桂を取り合って・・・と先の手が早く読めるのでそういう順に飛びつきやすいです。それが少々悪くても選んでしまうのが不思議なのですが、詰将棋重視で訓練するためではないか、というのが仮説です。(これを避けるためには、詰め将棋よりは必至問題のほうが手が広くて有効です。もちろん棋譜を並べて変化を考えるのも。)
直線の手順を深く読むことよりも、早めに良くなりそう(ならば深く読めばいい)悪くなりそう(ならば打ち切る)という判断をして、悪くなりそうならば手を広く読むことです。そのために今日の一手を作り続けているようなものです。
なおベテランが若者と対局するときは、少し有利な形にしておいて、直線的な手順に持ち込むことです。無理そうな形で攻めさせるとか、やや有利な態勢で寄せ合いにするとかを考えます。