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名将会ブログ (旧 名南将棋大会ブログ)

名古屋で将棋大会を開いています。
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大山将棋研究(154); 四間飛車に左美濃

2016-05-14 | 大山将棋研究
昭和49年5月、米長先生と第1回名将戦です。


大山先生の四間飛車に米長先生は中央位取り

大山先生は向い飛車に振りなおして

32金の形で急戦含み。陣形整備の立ち遅れている米長先生は間に合うかどうか。まずは角を使い

歩を控えて打ちます。25から打つと22飛から34金や33桂で取り返されることも気にしなくてはなりませんから。

結局は左美濃と石田流になって

ここから中盤戦です。大山先生の飛角のほうが働きがよいのでしばらくは主導権があります。

36歩の反撃には応じないで2筋から動き

飛車は追い返しました。米長先生は中央から動きます。金銀交換から

右金を繰り出して角を目標にします。

ここに金を打たされるのはつらいのですが

46角が厳しいので64銀と打つしかないでしょう。

歩の手筋で拠点を作り打ち込むのは勢いがあります。

これがぎりぎりの受けで、大山先生はどうにか形勢を保ちます。

米長先生は角を活用できて好調をキープ。

「53のと金に負けはなし」で、米長先生が有利です。大山先生の歩の突き出しがよくわからない手です。26同飛でも飛車交換できないでしょう、だから1歩損するだけという気がします。

米長先生は73銀と放り込んでから

飛車をぶつけました。(74歩を払われるのを気にしたのでしょうが、取らせても問題ないです。)飛車交換は居飛車よしです。

63と を許してはいけませんから飛車を回ります。

これに対して金を出るのは好手に見えます。66飛には67飛を用意して、遊んでいる金を使います。

でも26銀を打たれるので忙しくなりました。一つ金を出て飛車を取りに行くのが継続手ですが、53のと金を払われてしまいました。つまり、と金を簡単にとられないように54歩52歩の交換を入れておいて46金とすべきだったか、もう少し前に27飛ではなく28飛として58飛とすべきだったか、ということですね。

54歩に44角は好手です。44同金は17の角の利きが止まるので27銀成。飛角と取られてしまいます。飛車のほうを取りましたが

この歩成は相手をしてもらえず

大山先生の66角は気分の良い王手です。飛車を取って

角も取って銀を受けます。

大山先生が駒得になりましたが、互いに攻め駒は十分、寄せ合いです。単純に行くと米長先生のほうが速そうなので、62金打が普通かと思いましたが、角を打って

飛角交換から

85歩はよくわからなかったのですが、これが寄せのセオリーに則った最善手です。つまり、86歩と取り込めば87金から詰み筋があると。ただし銀をかけられて詰めろ。でも71金で次が難しいのですね。

米長先生は72銀打で1枚捨てて王手。

金を捨てて

85の歩を払いました。この手順、金駒1枚損したのでうまくいっていません。駒損して粘るしかなかったのではだめでしょう。

金を打たれて、馬が逃げれば85歩から86歩ですから後手よし。馬は捨てるしかありません。

米長先生が玉を固めて粘っているようでも駒損ではだめです。

あとは形つくりで

投了図。

かなり力のこもった熱戦でした。押したり引いたりの手順が多く、いい将棋を並べたなあ、という実感があります。
大山先生リードの序盤から、開戦が早かったということでしょう、中盤ではいつの間にか米長先生がよくなりました。不可解だと書いた26歩の突き出しが米長先生をだますことになり、53のと金を払って形勢不明です。
終盤は難解かと思ったのですが、大山先生の回答が素晴らしく、しっかり勝ち切りました。この勝ち方は強すぎます。

#KIF version=2.0 encoding=UTF-8
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:米長邦雄8段
後手:大山十段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 4八銀(39)
6 3二銀(31)
7 6八玉(59)
8 4二飛(82)
9 7八玉(68)
10 6二玉(51)
11 5八金(49)
12 7二玉(62)
13 9六歩(97)
14 9四歩(93)
15 5六歩(57)
16 8二玉(72)
17 5七銀(48)
18 7二銀(71)
19 5五歩(56)
20 4三銀(32)
21 5六銀(57)
22 3五歩(34)
23 2五歩(26)
24 3三角(22)
25 6六歩(67)
26 2二飛(42)
27 4六歩(47)
28 3二金(41)
29 9七角(88)
30 5二銀(43)
31 8六角(97)
32 2四歩(23)
33 同 歩(25)
34 同 飛(22)
35 2六歩打
36 5一角(33)
37 8八玉(78)
38 3四飛(24)
39 4七金(58)
40 4三金(32)
41 2五歩(26)
42 8四歩(83)
43 7八銀(79)
44 7四歩(73)
45 6八角(86)
46 2三歩打
47 1六歩(17)
48 3三桂(21)
49 2六飛(28)
50 7三角(51)
51 8六歩(87)
52 5四歩(53)
53 同 歩(55)
54 同 金(43)
55 3六歩(37)
56 2四歩(23)
57 同 歩(25)
58 2五歩打
59 2八飛(26)
60 2四飛(34)
61 5五歩打
62 同 金(54)
63 同 銀(56)
64 同 角(73)
65 5六金(47)
66 7三角(55)
67 6五金(56)
68 5七歩打
69 7五歩(76)
70 4六角(73)
71 3七金打
72 7三角(46)
73 7四歩(75)
74 6二角(73)
75 5七角(68)
76 6四銀打
77 5三歩打
78 同 角(62)
79 5四歩打
80 6二角(53)
81 4三歩打
82 同 銀(52)
83 6四金(65)
84 同 歩(63)
85 5三銀打
86 7一角(62)
87 6四銀成(53)
88 6三歩打
89 5三成銀(64)
90 5二銀(43)
91 3五角(57)
92 2一飛(24)
93 4四角(35)
94 3二歩打
95 4三歩打
96 5三銀(52)
97 同 歩成(54)
98 2四飛(21)
99 1七角(44)
100 2六歩(25)
101 7三銀打
102 同 桂(81)
103 同 歩成(74)
104 同 銀(72)
105 2六飛(28)
106 2五歩打
107 2七飛(26)
108 6四飛(24)
109 4六金(37)
110 2六銀打
111 5五金(46)
112 5三角(71)
113 5四歩打
114 4四角(53)
115 6四金(55)
116 同 歩(63)
117 5三歩成(54)
118 6六角(44)
119 7七歩打
120 2七銀成(26)
121 6三と(53)
122 1七成銀(27)
123 同 桂(29)
124 7二銀打
125 4二飛打
126 5二歩打
127 7二と(63)
128 同 金(61)
129 5二飛成(42)
130 7四角打
131 4二歩成(43)
132 5二角(74)
133 同 と(42)
134 8五歩(84)
135 6一銀打
136 7一金(72)
137 7二銀打
138 同 金(71)
139 同 銀成(61)
140 同 玉(82)
141 5四角打
142 6三銀打
143 7一金打
144 同 玉(72)
145 6三角成(54)
146 7二金打
147 8五馬(63)
148 8七歩打
149 同 銀(78)
150 7五金打
151 同 馬(85)
152 同 角(66)
153 6三歩打
154 3九飛打
155 5九歩打
156 3八飛成(39)
157 4八歩打
158 同 龍(38)
159 5八金打
160 4六龍(48)
161 6二銀打
162 8二玉(71)
163 7三銀成(62)
164 同 金(72)
165 7六銀打
166 3九角成(75)
167 6二歩成(63)
168 7五歩打
169 5三と(52)
170 7六歩(75)
171 6三と(53)
172 7七歩成(76)
173 同 桂(89)
174 7六歩打
175 投了
まで174手で後手の勝ち


20160514今日の一手<その325>; 寄せのセオリーから少しずれるけれど

2016-05-14 | 今日の一手

20160514今日の一手

4月3日の名南将棋大会から、IさんとNさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。



一昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
銀と桂歩歩の交換です。後手は持ち歩がないのでやや先手の駒得です。終盤なので損得なしと見てもよいです。
玉の堅さは同程度。
先手の攻め駒は44桂と持ち駒角桂で3枚。
後手の攻め駒は75銀と持ち駒角銀で3枚。

総合すれば互角です。

大局観として
後手は歩切れなので攻めにくく、その分だけ先手がややリードしているのだろうと思います。44桂のくさびがが先手で入ったのも大きいです。形勢は微差ですが悪くはないので、自然な手ならば大体は良い手になります。
守って勝てるかといえば、76歩は2歩で打てず、46角や69角が嫌味、歩を渡せば76歩がありますし、受けきりができるかどうかは怪しいです。
まずは有力な攻め筋を考えるほうが良いでしょう。その時は寄せのセオリーで考えます。
後手玉を直接攻める手が一番厳しく、次は玉に近い守りの駒を攻めることです。離れた駒を攻めるのは後回し。
攻める駒は歩から始めて大きな駒を使うのは後回しです。
ただしこの局面、安易に歩を渡すと76歩の反動があります。桂馬なら85桂ですし、何を渡しても反動がありそうです。ですから攻め方は少し難しいのですが、駒を渡したらそれ以上の成果がなければいけません。


△ 実戦は32歩でした。

これは小さな駒からというのにはあっているのですが、31歩成では取られて意味がなく、31角で王手するのは角を渡すのでややセオリーから外れます(後で考える手)。
65歩に24歩同歩31角

31同飛(逃げるのもありそう)同歩成同玉61飛41歩

ここから32歩以下玉を攻めていったのですが、少し足りません。後手の反撃のほうが厳しく負けになりました。でも65飛成から銀の入手を図れば23銀から32歩があるのでまだ先手のほうがよかったはずです。
また、32歩の後で24歩や31角とはしないで、72歩成とすれば同飛とは取りにくいです。41飛に31角なら同じようなものですが。



× 一番自然に見えるのは24歩なのですが

24同銀25銀だとして、76歩

逃げれば77銀と打ちこまれます。(そのほうがまだいいのかもしれません。)76同金右同銀同金67角

歩を渡すと厳しいということがわかります。24同銀のあとがそれほど厳しくないので負けそうなのです。24歩以外に14歩とか35歩とか55歩とか、歩を渡すのは同じようなことになります。


○ 歩を渡しにくいので24桂です。

桂馬の利きがダブっているので筋が悪いようですが、32金や飛で詰みます。どうやって手に入れるかといえば46角なら72歩成同飛61角

という筋です。41銀と受けるしかなく、飛車が取れますから優勢でしょう。

あるいは72歩成同飛32歩

これも詰めろになります。71飛くらいですが、31角同飛同歩成同玉71飛

75の銀を取ってしまえばまた攻められます。

戻って、24桂は同歩と取るしかなさそうです。

24同歩同銀23歩同玉25銀35銀打

これはやりすぎで千日手です。

少し落ち着いて銀桂交換だけにして

これでまた後手は歩切れです。23歩29飛65歩に24歩

24同歩23歩同玉25歩

今度は千日手にはなりません。先手優勢でしょう。

後手は65歩と攻めても間に合わないので24銀とか受ければ32歩

72歩成から31銀で攻められます。

なお、72歩成が先でもよさそうですが、余計な変化が出てきそうなのでこの場合は24桂が先なのでしょう。


△ 72歩成がよくある筋です。

72同飛に61角62飛43角成

飛車を攻めようというのではなく、43の金を取って攻めようということです。ただし角を渡すし、狙いが少し離れた金なので、セオリーでは後回しで考える手です。
43同金32金同飛同桂成同玉72飛

駒損で飛車を取るのはつまらないのですが、直後に銀を取れます。42歩75飛成46角78飛37角成44桂

これで71竜と潜るのが厳しい手になります。後手も工夫できないことはなさそうなのですが、少し先手がよいのでしょう。

戻って、61角に73飛なら角は切れないので76歩と受けます。

後手は強攻します。59角29桂77角成

77同玉76銀同金75歩86金85歩74歩

74同飛とはできず、86歩73歩成

これで後手玉はまだ詰まないようですが、先手玉は飛の横利きがあるので金銀だけでは詰めろが続かないから先手優勢です。


× 62角もやりたくはなります。

61飛72歩成62飛同と

これは52とが厳しいので先手の勝ち筋。

62角には31飛32歩41飛

我慢されてみると決め手がみえません。玉から遠い飛車を攻め、しかも角を使うのでは効率が悪いのです。


× 受けるなら47銀ですが

65歩同歩73飛76歩66歩

強引なようでも攻めている方が勝ちやすいでしょう。


☆ まとめ


寄せのセオリーにそって考えるのは基本なのですが、問題図では歩を渡しにくいのでややずれがあります。歩だったらいくら渡しても反動が少ないことも多いのですが、76歩から攻められてしまいます。ですから歩を渡す攻めはよく考えねばなりません。

利きがダブって重いようですが24桂が一番有力で、32に金がないので(42に寄らせたばかりです)24同歩と取りにくいからいいのですね。飛や金をもらえばすぐに詰むというのも心強いです。

矢倉に対して41銀とかけて61角というのはよく出てくる筋ですね。44桂と打ちこんであるので、41銀と同じです。ただしそのあと二枚換えで飛車を取るくらいでは少し攻めが足らないということに気をつけましょう。この場合は75の銀を抜けるので有力です。そこまで読まないとわかりませんね。

実戦の32歩はそのあとの手が角を渡し、この時は角で飛車を攻めているようなものなので効率が悪いです。でも悪い手ではありません。

後の解説は蛇足なのですが、寄せのセオリーに当てはまるほうを先に考えましょう。ただし歩を突き捨てる手はこの場合はやめておきます。

受けるのはあまりぴったりした手がないので、後回しでよいでしょう。うまく攻められるのなら考えなくてもよいです。
相居飛車では攻めて勝てるように組み立てていくほうがよいです。攻めがうまくいかないとき(不利になっているということになるのですが)は受けるしかないかもしれません。まだ相手の攻め駒が3枚なので受けが利くかもしれません。