名南将棋大会ブログ 名古屋

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まずは将棋上達法則を見てください。

大山将棋研究(160); 向い飛車に金立ち戦法

2016-05-20 | 大山将棋研究
昭和49年6月、大内先生と第24期棋聖戦です。


大内先生の向い飛車。大内先生は振り飛車党ですがたまに矢倉もあります。攻める振り飛車党なので、向い飛車もそれらしい選択です。

向い飛車に金立ち戦法、初めてみました。

大内先生は陣形整備の前にもう動きます。72銀は指しておきたかったのですが、55歩を嫌ったということでしょう。

1歩を手に入れて角交換。狙いが見えてきました。

46金には45歩で金が死にます。なので角を打って

金をぶつけます。どうやら大内先生の仕掛けが無理だったようです。

香を取って大山先生の駒得。

大内先生は飛車を逃げずに桂馬を生かすのですが

飛車を捨てて手に入れた銀を自陣に投入するのでは苦しいです。駒損で守っているのではだめでしょう。

大山先生は相手の手に乗って角をさばきます。

この歩を突くのは意味がわからない手です。攻めようがないからどうにか玉頭を手厚くしてということでしょうか。

桂馬を打ちあって

大内先生はまたも金を投入しますが、これでは逆転しようがないです。

こういう時には無理をせずに、長期戦でもいいですよ、と金で攻めますよ、というのがいいですね。

66の桂は金と交換できて、角が手順に玉頭をにらみます。

あとは と金で攻めるだけです。

88の銀は壁なので、逃げるのでもいいですし、取らせてもいいでしょう。

76桂の嫌味を消して

馬を逃げても問題はないのですが、ここで鋭い寄せがあります。

桂から金を捨てる。指されても何のことかわかりにくいですが、71馬同銀92銀の筋を狙っています。つまり香で取れないのです。

これで投了図。格好いい決め方です。

大山先生の快勝譜、有利なときの指し方を学べます。

#KIF version=2.0 encoding=Shift_JIS
# ---- Kifu for Windows V7 V7.23 棋譜ファイル ----
手合割:平手  
先手:大山十段
後手:大内延介8段
手数----指手--
1 7六歩(77)
2 3四歩(33)
3 2六歩(27)
4 4四歩(43)
5 2五歩(26)
6 3三角(22)
7 4八銀(39)
8 2二飛(82)
9 6八玉(59)
10 4二銀(31)
11 7八玉(68)
12 6二玉(51)
13 9六歩(97)
14 7二玉(62)
15 3六歩(37)
16 8二玉(72)
17 5八金(49)
18 9四歩(93)
19 1六歩(17)
20 1四歩(13)
21 5六歩(57)
22 5四歩(53)
23 5七金(58)
24 4三銀(42)
25 4六金(57)
26 1五歩(14)
27 同 歩(16)
28 同 香(11)
29 1六歩打
30 4五歩(44)
31 同 金(46)
32 8八角成(33)
33 同 銀(79)
34 3三桂(21)
35 7七角打
36 3二飛(22)
37 2四歩(25)
38 同 歩(23)
39 4四金(45)
40 同 銀(43)
41 同 角(77)
42 2五桂(33)
43 1五歩(16)
44 3五歩(34)
45 3三銀打
46 3六歩(35)
47 3二銀成(33)
48 同 金(41)
49 2一飛打
50 7二銀打
51 8六香打
52 4三金(32)
53 3五角(44)
54 4四歩打
55 2四角(35)
56 3七桂成(25)
57 同 桂(29)
58 同 歩成(36)
59 同 銀(48)
60 2七歩打
61 5八飛(28)
62 7四歩(73)
63 4六角(24)
64 5五歩(54)
65 同 角(46)
66 6四桂打
67 6六桂打
68 8四歩(83)
69 2三飛成(21)
70 5二金打
71 3四歩打
72 4二金(52)
73 2二龍(23)
74 8三玉(82)
75 2四歩打
76 5三金(42)
77 3三歩成(34)
78 5四金(43)
79 同 桂(66)
80 同 金(53)
81 6六角(55)
82 7三銀(72)
83 4三と(33)
84 7二金(61)
85 5二と(43)
86 6五金(54)
87 4四角(66)
88 5七歩打
89 1八飛(58)
90 7六桂(64)
91 6一と(52)
92 8八桂成(76)
93 同 玉(78)
94 8二銀(71)
95 7七歩打
96 6四角打
97 6二と(61)
98 同 金(72)
99 同 角成(44)
100 4二歩打
101 6三馬(62)
102 3七角成(64)
103 4二龍(22)
104 6二歩打
105 同 馬(63)
106 7一銀打
107 9五桂打
108 同 歩(94)
109 9四金打
110 同 玉(83)
111 9五歩(96)
112 8三玉(94)
113 9三金打
114 投了
まで113手で先手の勝ち
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20160520今日の一手<その328>; 右玉の背景

2016-05-20 | 今日の一手

20160520今日の一手

4月9日の名南将棋大会から、YさんとHさんの対局です。形勢判断と次の一手を考えてください。




一昨日の一手の回答

☆ 形勢判断をします。
駒の損得はありません。
玉の堅さは先手のほうが堅いです。
先手の攻め駒は28飛と持ち駒角銀で3枚。
後手の攻め駒は持ち駒角銀で2枚。

総合すれば先手やや有利です。

大局観として

角換わりの戦法は、棒銀(27~26)、早繰り銀(37~46)、腰掛銀(47~56)とあるわけですが、この比較をご存知でしょうか。攻め足の速さは 棒銀>早繰り銀>腰掛銀 の順です。でも棒銀には早繰り銀で対抗すれば隙が少なく、早繰り銀は腰掛銀で追い返すことができ、腰掛銀は攻め足が遅いので棒銀に対応が難しい、という三すくみの関係があります。
問題図は後手の63銀(これは腰掛銀になる)を見て棒銀に出て、銀交換に成功したので先手の作戦勝ちです。作戦負けの時には視点を変えるというか、玉の囲い方を変えるのが有力な考え方です。この場合は後手は右玉にしてしまおうとしています。先手の右銀と後手の左銀の交換で、後手の守りの銀が消えて囲いが弱体化、先手は攻め駒として十分使えた、ということで作戦勝ちなんですね。玉を右に、62か72にもっていけば、後手の金銀3枚が守りの駒、攻め駒として銀を手にしたのですから互角になっていくという寸法です。ただし32の金は玉の守備に就いているわけではないのでやや薄く、代わりに飛車の縦横の利きでカバーしようとするわけです。

つまりあまりのんびりしていると形勢互角になり、もっとのんびりしていると怪しくなります。相手の飛車のほうに玉を囲うわけですから。おそらく一番いいのは早期決戦です。
普通は右桂を使って4枚目の攻め駒とすることを考えるのですが、37~45と跳ねても目標がないので響きが薄いです。ですから後手陣の弱点はどこか考えて、攻め筋を見つけます。棒銀や早繰り銀はなかなか4枚目の攻め駒を作るのは大変です。だから腰掛銀が流行するのでしょう。


△ 実戦は15歩62玉25銀と進みました。

15歩はこの場合は後手玉の反対側なので、急戦を狙うなら省略したほうが良いです。(後手が42玉としてくれるならとても良い手だったとなります。)さらに持ち駒の銀を打つのは少しつまらないのですが、34銀を防ぐのは案外大変です。33銀56角35歩26飛

26飛も指さなくてよい手です。この後は72玉34銀同銀同角33桂

24歩同歩同飛45角

45同角同桂34銀57桂成同金65歩

ここで37角として後手玉を目指して反撃すればまだ先手有利でした。実戦は35桂から23桂成として桂馬を渡したのでこういう図になり

後手の攻めが強力すぎました。右玉に対して玉のいないほうばかりを攻めても大きな戦果は得られません。

途中、26飛を省略して34銀としたいです。

もちろん16歩51玉のままならもっといいのですが。23の地点が守れないので銀交換は避けられません。34同銀同角24銀くらいで、もう少し進めてこういう図

24銀など相手にしないで、56角と戻して75歩を狙います。この筋が急所です。
同じような形が後で出てきます。


× もし持久戦を目指すとこんな図で

右桂を跳ねることを考えるわけですが、後手からの55銀から65歩という筋がうるさく、これは先手不利です。あるいは55銀は打たないで65歩同歩同桂というのも結構うるさいです。


○ 問題図ではすぐに45角と打つことができます。

63角成同金72銀という筋と34角の両狙いです。これに54角は34角27銀48飛

後手に歩があれば38歩でよいのですが、この後がありません。

ですから45角には62玉34角となるでしょう。

33桂23角成21飛には22銀

これは先手優勢。後手がカウンターを狙うなら23角成の時に39角と打って

ここでも後手に歩があれば大変ですが、27飛23金同飛成45桂

48銀57桂成同銀49銀59歩

これでどうにかなりそうです。

後手は34角に24銀と辛抱すれば

56角54歩46歩55歩38角

と、7筋に目を向ければよいです。前に出てきた図と似ていますが、16歩の形とはいえ1歩得していますからより指しやすいです。84飛に75歩同歩76歩

と行きます。(96歩を突いてあれば端を絡めて攻めることもできました。)74銀75歩同銀74歩76歩73歩成同玉88銀

銀をへこまされても桂馬を取ることはできるでしょう。狙いは67桂66銀75銀です。24銀が質駒なので4枚目の攻め駒になり、攻めきることができると思います。


理論的に説明したつもりですが、わかっていただけるでしょうか。

右玉は作戦負けを解消するための手段として有力です。その右玉を攻めるなら、玉のいないほうを攻めるのではなく、玉のいる方を攻めたいです。7筋や9筋を攻めることを考えます。
今回は96歩を突いていないので9筋から攻めるのをやりませんでしたが、符号で言えば95歩同歩93歩同香92銀とか92角とか。あるいは(問題図では攻め足が遅いのですが)地下鉄飛車で98香から99飛を作るというのもありますね。
7筋を攻めるなら56~38角のラインで75歩です。54の地点が空いていれば75歩同歩74歩同銀54角(これが32の金取りになるとか)というのも出てきます。
せっかくの作戦勝ちなのですから、それを生かす手順を考える、という問題でした。

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