劇作家・文筆家│佐野語郎(さのごろう)

演劇・オペラ・文学活動に取り組む佐野語郎(さのごろう)の活動紹介

早稲田で過ごすひととき~公開講座~

2014年03月28日 | 日本演劇学会

 日本演劇学会の分科会「西洋比較演劇研究会」に所属していると、種々の講演会や催し物の案内メールが送信される。その中には、母校で開催されるものもあって興味深いものには自然と足が向かう。先日、パリ第三大学教授によるラシーヌ悲劇についての講演会があった。主催は最近とみに活動が目立つ早稲田大学演劇博物館で、共催は京都造形芸術大学と日仏演劇協会だ。
 高田馬場駅から「早大正門」行きのバスに乗る。現在は170円で他区間より40円低く設定されているが、私の入学当時は70円ぐらいだったろうか。樫山欽四郎先生(第一文学部長・哲学/女優・樫山文枝氏の父上)と同乗した日を思い出す。美しい白髪が印象的だった。
 余裕を見て早大構内に着くのが常なので、会場に入る前に「遅めのランチ」となる。長岡屋の蕎麦もいいが、この日は高田牧舎のステーキランチとしゃれ込んだ。
 49年経過すると、早稲田界隈が様変わりするのも世の常かもしれない。神保町に次ぐ書店街だった戸塚町もいまや見る影もなく、学生時代から通い詰めた金峯堂書店もついに数年前に姿を消した。戸山町や早稲田の喫茶店・食堂も新しい建物に取って代わられている。
 食後のコーヒーを飲みながら店内からぼんやり通りを眺める。過ぎ去った時間の流れに身を置くことができる数少ない店は、老学生には貴重である。 
  いよいよ楽しみな講演会だ。店の目の前の南門を抜け、「演博」近くの6号館レクチャールームに入る。定刻には、受講者で満員になった。知り合いは…と見回すと演劇評論家・佐伯隆幸氏がいらした。学習院大学でフランス演劇を担当されていたのだから不思議ではない。教え子の伯父にあたられるということもあり、これまでお付き合いを戴いている。
 講演会は通訳付きで、フランス古典劇の名作『フェードル』の舞台映像に沿いながら、古代劇詩人セネカの作品との関係にも言及するという内容だった。フロアからの質疑応答もあり、予定時間を超える盛り上がりを見せた。
会場を出ると早春の夕陽が残っていた。大隈さんの銅像に会釈して、大隈講堂前のバス停に向かった。一人の卒業生に戻る「いい時間」である。


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