東京都教育委員会が、高校日本史教科書選定に介入。実教出版の「日本史A」と、来年度向けに改訂された「日本史B」について、「国旗国歌法に関して不適切な記述がある」として「使用は適切ではない」とする見解を議決し、各都立高に「使用はふさわしくない」と通知を出すと決めたという。高校教科書は学校が選んで都道府県教委が採否を決めており、教委が各校の選定に介入するのは異例。強制力はないが、「指摘した教科書を選定した場合は、最終的に不採択とすることもあり得る」という。都教委が問題視しているのは、国旗国歌についての「一部の自治体で公務員への強制の動きがある」という記載。都教委は03年、学校行事で日の丸に向かい君が代を斉唱することを通達で義務付け、従わない職員は懲戒処分にする厳しい対応を取ってきたことは周知の事実であり、「公務員への強制の動きがある」ことは、紛れもない事実。最高裁は11年、起立斉唱の職務命令を合憲と判断したが、12年の判決では「減給や停職には慎重な考慮が必要」との判断も示している。実教出版の日本史Aは11年度の検定で「政府は国旗掲揚、国歌斉唱などを強制するものではないことを国会審議で明らかにした。しかし現実はそうなっていない」との記述に文部科学省の意見がつき、後半を「公務員への強制の動き」などと書き換えて合格。だが都教委は昨年3月以降、各校に電話で「都教委の考えと合わない」と伝え、13年度の教科書に選定しないよう要求。採択の最終判断は都教委ができることもあり、この教科書を選定した高校はなかったという。14年度から使う教科書を決める昨年度の検定で同じ記述がある日本史Bも合格したため、都教委は不使用を徹底するため、今回は文書で通知することにしたという。都教委幹部は「『公務員への強制』という表現は明らかに間違っており、採用するわけにはいかない」と話しているが、言うことを聞かなければ減給や停職にするのだから実質的に「強制」であることは否定のしようがない。そうでないというなら、国旗掲揚、国歌斉唱などを強制してはいけない。まずは過去に減給や停職の処分を施した相手に謝罪し、復職を実現すべきだ。国家や国旗に真に誇りを持つ者なら、「強制によって」国家や国旗が大切にされているとしたら、そのことに傷つくべきだろう。ほんらい憲法が国民のためにあることと同様に、国民の自由と権利を守るためにあるはずの「規則」が、国民を縛ることの異常性に、気づいてほしい。国旗や国歌そのものに疑義を唱える自由だけでなく、仮に自国の国旗や国歌を深く信奉する者でさえ、その国が本来あるべき国の姿を為していなければ、それを批判するためにあえて国旗や国家を否定する表現をとるという手段について、自由を確保しておきたいと思って然るべきなのである。「表現の自由」の法則だけを取っても、あまりにも偏狭なことなのだ。私の知る限り、国旗や国歌が強制や規制で縛らなければ敬意を払われないことの原因は、少なくとも国民の側にはないのだから。
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