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“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

「世田谷モデル」への誤解を解く

2020-08-27 | Weblog
加藤浩次という人がテレビ番組で、東京都世田谷区の新型コロナウイルスの感染拡大防止策「世田谷モデル」に対して否定的な考えを述べたという。
既に報道されているとおり、「世田谷モデル」の狙いは、検査拡充によって感染の有無を早期に発見し、感染拡大を防ぐことである。保坂区長は24日、区内の介護施設の職員や保育・幼稚園の職員など計2万3000人のエッセンシャルワーカーを対象に、症状の有無にかかわらず、無料で検査を実施すると発表。約4億1400万円をかけ、1日1000件の検査を目指す「社会的検査」。複数人の検体を混ぜてまとめて検査する「プール方式」を10月にも導入する予定である。

加藤氏は「一時の安心のために(税金を)かけるというのはどうなんだろう、ということになると僕は思ってしまうんですけど」「時間とお金をかけてしっかり効果があればいいと思うんですけど。世田谷区だけ介護事業者、保育園や幼稚園で働く職員方にやったところで、その方たちが世田谷区以外に住んでいたりとか、世田谷区の中に他から入って来る人もいる。子供たちの親は他のところで働いている人もいる。そこで抑え込めるのか。それを見つけることによって意味はあるんだろうか」と言っているという。
該当者がその職場にいるだけではないだろう、というのは、PCR検査につきもののことである。やらないよりやって見つけたほうが、他の場所での拡散を防げる。

そして、「これほど大規模な検査となると、結果が出るまでにそれなりの時間もかかるため「(時間が)それだけかかるんだったら全く意味がないと思ってしまう」「結果が出るまで4日かかるとしたら、その4日間に感染する可能性もありますから。感染した後に“陰性”って出て何の意味があるの?」という。この発言は、全くの誤りである。というか、こんな情報を垂れ流すマスコミには、罪がある。
このデマを真に受けて、「10人のプール検査が陽性だとしたら、1人の偽陽性者がでれば10人の再検査結果確定日までの隔離が実施される」「二回目の検査結果が出るまで陽性と疑われ、職場を休まされ、陰性と判断されても迷惑だし、職員のやりくりもできない」というような、想像による書き込みも、ネット上に多々見られた。

これは、全くの勘違いである。
誤解のないようにしておきたい。
そもそもが単体で検体資料を取っていて、その一部をミックスして「プール検査」する。‪プール検査で陽性が出た場合には当然、すぐに単体検査用の検体で単体検査に移るので、「疑いがあるぞ」という告知が出て被験者サイドが混乱するようなことは、ない。
現実には、「世田谷モデル」の「プール方式」の検体予定数は、四人である。
グループ陽性になっても、今度は四人それぞれの検体を保存していて再検査するから、陽性確定者が一人の場合、残り三人には陰性通知がいくだけである。
プール陽性の後の単体再検査の結果が出るまでは、二時間くらいとのこと。朝に検査を受ければ早くてその日のうち、遅くとも翌日には結果がわかるはずだ。「4日」もかからないようにするのが、「世田谷モデル」なのだ。

‪そもそも保健所指定の濃厚接触者でもなければ、かかりつけ医から症状があると判断された上での検査でもないので、極めて陽性は少ないはず。プールで検査すれば相当な数が陰性なのでトライアルの回数は激減する。それによって経費が飛躍的に激減し、オートメーション化することで人的コスト削減と再検査までの時間短縮に繋がる、ということである。

加藤氏は「陰性だったらと安心した人が街に出てしまって、その人が偽陰性の可能性がありますからね。偽陰性の可能性もあるのにそれ(大規模検査)をやることに何の意味があるのかな」というが、その本人が陰性だったからといって安心しないで、体温を測り、外出時にマスクをして、人混みをさけ、こまめに手洗いをして、食事と睡眠と休息を十分にとり、日常生活で感染防止をよりいっそう心掛ければいい。加藤氏にも「陰性だったら安心というのは誤解」という社会的コンセンサスを広げるようお願いしたいものである。

もちろんPCR検査は万能ではない。感度は70%前後であることも理解している。だが、感染拡大の引き金となる「無症状の感染者」を見つけ出す意義は、あるように思われる。

8月頭、最初に発表された「いつでも、誰でも、何度でも」という言葉が一人歩きしすぎている面は、否めない。だが「世田谷モデル」の対象は、まず、エッセンシャルワーカーであって、闇雲に全員に受けさせる、と言っているわけでもない。何より、過酷な現場での労働を担う者たちが、少しでもリスクを取り除きたいとする「検査を受ける権利」、そのさいの「検査を受ける負担の軽減」を考えることを否定するのは、納得できない。

科学的な知識があるわけではないので、この話題はなかなか難しいと思ってきた。しかし、私にさえわかる最低限の「世田谷モデル」への誤解は、解きたいと思った。ひょっとしたら行き届かぬ面もあるだろう。いろいろと教えていただければ幸いである。
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