いしだあゆみさんが亡くなった。
七十六歳と言われてもぴんと来ない。
こちらも自分の年齢さえ意識しないで生きている人間だから仕方がないのだろうか。
いしだあゆみさんの歌を憶えているのは確かで、でも、聴いたのは主に子供の頃、という記憶である。
『ブルー・ライト・ヨコハマ』『あなたならどうする』等は、ものすごくきちんと憶えているわけだが、当時こちらは本当に子供だったわけだし、それらの歌がヒットしていたのは、そう、一九七〇年のほうの大阪万博よりも前だったのだ。
私が上京した頃から、いしだあゆみさんは俳優として活躍した。というか、こだわりの作品に出ている感じだった。八〇年代以降。認知されていたとはいえ、倉本聰さんとの作品も多く、『阿修羅のごとく』もあったが、そんなにたくさん出ている人という印象はない。
綺麗な人だったし、「雰囲気がある」という褒め言葉は、この人にこそあてはまるだろう。
一九七〇年代後半、宝焼酎が「純」という焼酎を売り出し、対抗してサントリーが「樹氷」という焼酎というかウオッカもどきというか対抗商品を売り出し、その宣伝にもいしだあゆみさんが絡んでいたはずである。
なのでいしだあゆみさんというと「樹氷」が浮かんでくる面もある。
「樹氷」はその後、八〇年代、「タコがいうのよ」というフレーズで田中裕子さんのCMが有名になったらしいが、私はほとんどテレビを見なかったし、「樹氷」も飲んでいないと思う。
八〇年代といえば「トライアングル」という黒いボトルの焼酎が松田優作をキャラにした宣伝で売り出されたが、これもあまり良いお酒ではなく、某編集プロで仕事しているときに試供品としてもらって来た人がいて、事務所の何人かで飲んだが、悪酔いした記憶しかない。これは余談過ぎるな。
そんなわけで今夜は「樹氷」でなくとも焼酎かウオッカでも飲むべきなのだろうが、今日は泡盛を呑んでいる。
写真は、昔のもの。
今に負けないセンスのアーティストがいて、それが子供にまで知られていて、そういう良い時代もあったのだよ、と、思うけど、言うまい。そんなの言ったら、ジジイではないか。