Blog of SAKATE

“燐光群”主宰・坂手洋二が150字ブログを始めました。

憲法記念日のきょう、戯曲『憲法くん』から、短篇劇「憲法くん結婚する」、特別公開

2020-05-03 | Weblog
憲法記念日のきょう、戯曲『憲法くん』より、短篇劇「憲法くん結婚する」を、特別公開します。

この「憲法くん結婚する」を含めた憲法関連のテキスト群が、本日、「非戦を選ぶ静岡演劇人の会」による「憲法記念日のオンラインピースリーディング」として、8:00 PM より、大阪、札幌、東京、静岡の皆さんによってオンライン上演されるからです。
本日の出演者 ≈ ・こたつ。・松永智子・高野順也・西山仁実・泰井良・会津里花・山崎里美・堀池高彰・上田能弘・杉山伸明・megu・油山みけ・堤芳子・瀧浪みほ・あべよしみ・円城寺あや・西山水木

燐光群公演『憲法くん』
原作◯松元ヒロ 台本・演出◯坂手洋二
2019年11月29日(金)〜12月8日(日) 座・高円寺1 続いて、岡山、伊丹、名古屋にて上演
「憲法くん結婚する」初演の出演者 ≈ 木下祐子 樋尾麻衣子 吉村直 杉山英之 武山尚史  中山マリ 鴨川てんし 

以下が、台本です。

  



               ※ 憲法くん結婚する ※

        写真館のスタジオらしい。
        ウェディングドレスの二人、冬子、夏代が立っている。
        写真屋、所在なげに立っている。

冬子 いつまで待つの。
夏代 うん。
冬子 来やしないわよ。
夏代 ……。
冬子 どうして写真だけでも撮ろうなんて思いついたの。
夏代 ……だって。
冬子 結婚式とかそういうのなしねって決めたじゃない。
夏代 ウェディングドレスは着てみたいって言ってた。
冬子 とっととすませましょ。
夏代 そんな言い方。
冬子 私たちのためでしょ。私たちだけでいいじゃない。
夏代 賛成してくれたじゃない。

        ウェディングドレスの二人、夏代、冬子、見つめあう。
        思わず互いに微笑んでしまう。

冬子 そりゃウェディングドレスは着てみたかった。
写真屋 (シャッターを押し)飾っていいですか、うちの写真館のショーケースに。
夏代 ……えええ。
冬子 そのぶんサービスあるんでしょうね。
夏代 すみません、お待たせして。
写真屋 いいんですよ、どうせ暇だし。スマホで立派な写真撮れる時代だし、素人さん撮影上手になって、商売あがったりですから。……どなたがみえるんです。
冬子 この子の父親。
写真屋 ……ああ。
冬子 親一人子一人ってやつ。
写真屋 ……そりゃ、一緒におさまれるなら、一生の思い出だ。
冬子 ……まあ、来るわけないのよ、反対してるんだから、私たちのこと。
夏代 それはそうだけど。
写真屋 まあそう簡単にはなくならないね、そういう偏見。
夏代 偏見はないんです。
写真屋 そうなの?
冬子 なのよ。
夏代 うん。
写真屋 じゃあ? どういうこと。
冬子 憲法違反だって。
写真屋 え? 
夏代 私たちの結婚は、日本国憲法では認められないって。
写真屋 だってお二人は同性パートナーシップの証明書もらったんでしょ、渋谷区から。
冬子 同性パートナーシップ条例は、確かに証明書出してくれるけど。
夏代 そのために家賃高いけど渋谷に引っ越した。
冬子 でもそれは同性カップルが、「異性間の結婚に準ずる関係」であるって認めてくれただけ。
夏代 これで晴れて区営住宅に入居できるし、手術や入院の付き添いもできるようになる。でもそれって当たり前でしょ。
冬子 「異性の婚姻関係と異ならない程度の最大限の配慮」っていっても、配偶者控除、税制や社会保険の優遇措置は受けられない。
夏代 あらためて「正式な婚姻関係じゃない!」って思い知らされちゃった感じ。

        作業用のロングコート姿の春彦、入ってくる。

夏代 お父さん! ……来てくれたの。
春彦 ……うん。
夏代 そんな恰好で。
春彦 現場が早く片付いたから、寄ってみた。(撮影が)まだ終わってないのか。
夏代 待ってたんでしょ!
冬子 お仕事お忙しい中、ありがとうございます。
夏代 ……父です。
写真屋 どうぞどうぞ。……花嫁のお父上に、ご参列いただきました。
春彦 写真を撮るだけだろう、結婚式じゃない。それに、だったらそちらの親御さんも揃わなきゃおかしい。
冬子 うちはいまでも(実家に)反対されていますから。
春彦 ……ウェディングドレスが二人。
写真屋 本当にお似合いで、華やかです。
春彦 二人とも花嫁で、夫婦か。
夏代 ええ、そうよ。女二人の夫婦。男役女役なんて分かれたりしてないの!
冬子 夫婦かどうかはわかりません。でもお父さん、私と夏代さんは一生を共にする家族なんです。
春彦 家族か。
夏代 そうよ。
春彦 写真を撮って、おまえたちがそういう二人だってことを世間に触れ回るわけか。
冬子 ええ。
夏代 胸をはって。
春彦 覚悟はできているんだな。
夏代 愛する人と幸せに暮らすことに、覚悟が要るの。
春彦 憲法24条には「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し」とある。両性つまり男性と女性、両方の性の合意ということだ。同性どうしの結婚は認められない。
夏代 憲法が問題なのね。
春彦 何があろうとも、憲法を守る。それが秋山家の家訓だ。
冬子 お父様。これだけは言っておきます。私、憲法が私たちを引き裂くというなら、憲法とだってたたかいます。
春彦 この国が今どんな状態になっているかわかるか。史上最悪の総理大臣。誰も未来に期待してない。高齢者社会で働き手は海外から来てもらうしかない。晩婚化が進み、おまえたちも少子化に貢献できない。ご先祖様に申し訳が立たない。
夏代 そんなに孫の顔が見たいの。
春彦 憲法を守らなかったら、日本は終わるぞ。
写真屋 あのー。
春彦・夏代・冬子 なに!
写真屋 あらかじめそういうお話を伺っていたので、じつは、憲法くんを呼んでいます。
春彦・夏代・冬子 憲法くん!

          憲法くん、登場。

憲法 こんにちは、憲法です。いや、あの、憲法なんです。姓は「日本国」、名は「憲法」。「日本国憲法」と申します。ちょっと名前が長いですね。だから、気安く「憲ちゃん」と呼んでください。
春彦 ……お目にかかれるとは、光栄です。
憲法 憲法24条の「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し」なんですけど、これは、戦前につくられた民法や戸籍法が、同性婚を想定していなかったことが背景にあります。
写真屋 そんな昔なら仕方ないよね。今でも「性同一性障害」というコトバがある。異性を性の対象にしないことは、異常であり不道徳。医学的には人口の三から五パーセントが同性に惹かれることが証明されてます。左利きとおんなじ。
憲法 憲法14条はご存知ですか。
春彦 「法の下の平等」。
憲法 憲法14条に定められた「法の下の平等」のもとでは、同性婚を認めないことこそ、憲法違反です。
春彦 ……そ、それは確かに。
憲法 僕もね、結婚しようと思うんです。
写真屋 うん。
春彦・夏代・冬子 えっ!
写真屋 僕たち、そのつもりです。
冬子・夏代 そうだったの。
春彦 憲法くん、なのに?
憲法 確かに法律の整備はまだですけど、僕、憲法くんの中では、24条の婚姻規定よりも、14条の「法の下の平等」の方が、重いんです。
写真屋 でも難関が多くて。婚姻届を出してみたら、担当者が「お二人は戸籍上、男性ですよね?」って。
憲法 うん。
写真屋 賃貸契約書に「妻」って記入したら、「友人」って書き直されちゃった。
憲法 婚姻に関しては「両性の合意による」と言われてますけれど、僕たち二人とも性を持っています。
夏代 それぞれの性で、「両性」。
憲法 うん。
冬子 聞いたことある。いま、研究者の解釈として多いのは、「両性」とはたんに男女を指すのではなく、「結婚の意思のある個人」を示すものだって。
憲法 「婚姻は両性の合意のみに基づく」というのは、結婚相手を親が強制的に決めたり親の承諾を必要としたりした戦前の「家」制度から、本人の自由意思を尊重するようにと、社会を変革するためのものだったんです。
夏代 婚姻に家長の許可は要らない。
写真屋 当事者どうしの合意があればいい。
春彦 確かに憲法は、戦前の女性への差別をなくすことも目標にしていた。
冬子 この憲法ができるまでは、婦人参政権だってなかった。
春彦 まだまだこの国は憲法に追いついていない。
憲法 これだけ話題になってもセクハラがなかなかなくならない原因も、憲法13条が保障する「人格権」、14条の「平等権」への意識が、まだまだ低いからだね。
夏代 憲法24条は、同性婚を否定したものではない。
春彦 「両性」がそれぞれの性、同性どうしでもいいという解釈は、憲法上成り立つ。
憲法 同性どうしで結婚できるかどうかは、民法を変えればいいだけです。
写真屋 頑張ってもらいたいね、民法くんには。
冬子 夫婦別性も認めない自民党政権の間は無理よ。

         春彦、ロングコートを脱ぎ捨てる。
         その下は、タキシードのいでたち。
         そして、別な男女、冬子の父母がやって来る。

夏代 ……パパ!
春彦 お前のこれまでの苦労は知っている。知らないふりも疲れた。お前たちの決意が本物なら、憲法違反でも賛成するつもりだった。憲法が認めなくても私が認める。憲法くん、ごめんなさい。
冬子 ……お父さんお母さん。
春彦 ようこそ来てくださいました。
冬子の父・母 おめでとう。
夏代 認めてくれるのね。
春彦 おまえの家族なら、私の家族だ。一緒に生きていく相手がいて、よかった。
冬子 ありがとうございます。
冬子の父 話は後だ。
冬子の母 とても似合っているわよ、お二人さん。
春彦 昔、リカちゃん人形をプレゼントしたとき、おまえがもう一人のリカちゃんをお年玉で買ってきて二人で遊ばせているのを見て、気づくべきだった。
夏代 ああ!
春彦 二人のリカちゃんそれぞれにウェディングドレスを着せ替えて結婚式ごっこをしていたとき、察するべきだった。
冬子 そうなの!
春彦 リカちゃんが別なリカちゃんを好きになって、何が悪い。
夏代 これまでは、なんとか生き延びてきただけの人生。
冬子 結婚するって決めて、やっと将来を生きていく気持ちになれた。
写真屋 さあ、みんな並んで並んで。
春彦 (憲法にも)どうぞこちらへ。

         写真屋以外、整列する。

写真屋 ……次は僕たちの番だよ。
憲法 わかってる。
写真屋 さあ、皆さん、笑って。……おしあわせに。

         シャッターが押される。
         溶暗。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

憲法を改悪することは許さない

2020-05-03 | Weblog
報道によれば、安倍首相が、3日に行われる憲法フォーラムに寄せるビデオメッセージで、憲法に「緊急事態条項」を盛り込む必要性を訴えることがわかった、という。

新型コロナウイルスの感染拡大に触れ、「緊急事態で、国家や国民が果たす役割を、憲法にどう位置づけるかは大切な課題だ」と指摘するのだと、いう。

冗談はよしてもらおう。

憲法を改悪することは許さない。

「緊急事態で、国家や国民が果たす役割」は、言葉としておかしい。

国民は人権を守り、国家が国民を守らない可能性があるならば、それを監視し、阻止するだけだ。

憲法は、国民に対する規制法ではない。

ふざけるな。

憲法に「緊急事態条項」という項目を検討したとしても、

「憲法は、いついかなる場合でも国民の人権を守る」

という一言で、不要となる。

以上。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする