飲んでも人格がとくに変わるわけじゃなく、いくらか顔が赤くなるだけで陽気にも陰気にもならない
もんですから、先輩とか上司とか目上の人と酒席をともにすると「飲ませがいのないやつだなー」
と昔はよくツッコミが入りました。近ごろは多少、座持ちのことも考えて飲む冷静さを獲得したので、
かえって「飲ませがい」とか「飲みがい」とか薄まってるかも。
「サカタは酒を殺しながら飲むからな」
入社当時、ポカQがぼやくのを聞いては「酒を殺しながら飲むってなんだろう?」と思っていました。
ポカQというのは破滅型の先輩で、酒を飲んでは会社をポカ休する困った人なので、いつしか皆に
ポカQと呼ばれることになったそうな。平凡で歌本を作っていた頃もポカ休をくりかえし、ブルータス
に飛ばされてからもポカ休をくりかえし、製作部に追いやられてもポカ休をくりかえしていたところへ
新入社員のサカタがやってきたのです。「おまえは酒を殺しながら飲むだろ? いいんだよべつに、
つぶす気ないから。だけどな、せっかく飲んでるんだから乱れてメチャクチャ言ったほうが得だぜ?」
とアドバイスのようなメチャクチャなことを後輩に諭しながら朝まで飲んで、騒いで、翌日ポカ休です。
翌日どころか3日も4日も、1週間も2週間もポカ休することがよくあり、周囲も慣れっこで 「こんどは
いつくるのかなー?」なんて、のどかなものでした。忘れたころに、しれっと出社してきては、バリバリ
仕事するのです。若干、有能なのです。波はあるけど、天才的なところが時おり垣間見えるのです。
サイボーグ009に出てくる赤ちゃん (寝てばかりいる超能力者のイワン) みたいです。そういえば、
お茶の水博士にそっくりな上司もおなじ職場にいるのでした。イワンはその後もポカ休をくりかえし、
サカタがアンアンに異動してしばらくすると退職し、故郷に帰って、いつしか亡くなりました。サカタは
あいかわらず酒を殺しながら(?)飲み、酔って乱れることもない代わりに、しらふでメチャクチャ言う
困った人になり果てました。酒はただ単に、おいしいので飲んでいます。
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