サ カ タ の ブ ロ グ 

やぁ、みんな。サカタだよ。

時効

2017年05月10日 | サカタだよ
もう時効ですから書きますけどね、20世紀の終わりごろ、女性芸能人のメイク座談会を組んだ
ことがありまして、都内某所のスタジオで確か18時集合だったんですね。3人のタレントさんが
メイクをして、19時くらいから座談会撮影という予定でした。Aさんも、Bさんもメイクを仕上げて

「Cさん、どうしたんだろうね?」

まだスタジオに来てないCさんのマネージャーに電話しても、「おかけになった電話は、電波の
届かない場所にあるか、電源が入っていないため、かかりません」の繰り返し。Aさん、Bさん、
Aさんのマネージャー、Bさんのマネージャー、みなさん大人の対応で

「Cさんを待つしかないですね」
「うちはこのあと大丈夫ですから」


テレビの話とか映画の話とか、編集部の面白話とか、なるべく本題にふれない話題で待つこと
30分、1時間、1時間30分、2時間……「おかけになった電話は、電波の届かない場所にある
か、電源が入っていないため、かかりません」 もう対談にしようかと思ったころ

「おはようございます~」

Cさんが悪びれず入ってきました。「おはようございますじゃないでしょ、遅くなりましたでしょ!
ごめんなさいっていうところでしょ?」 なんて責めても時間のムダなので、とりあえずメイクを
進めてもらって、あとでマネージャーさんに話そうと思いました。

「お世話になります」

マネージャーさんが入ってきて、あやまるのかと思ったら大股開いてイスに腰かけ、ふんぞり
返っているだけです。なんじゃこりゃあ~~~! 「18時集合でしたよね?」「前が押しまして」
遅れた認識はあるようだけど、悪いとは思ってないらしい。前が押したのではなく、別の仕事を
急遽ねじ込んで、こちらとAさん、Bさん、および関係者を待ち呆けさせてたのでは。

「お待たせしました~」

メイクを終えたタレントCさんに申し訳なさそうな様子が全然ないのは、そういう性格というより、
大幅な遅刻をマネージャーが伝えていない(隠している)せいかも? 気を取り直して、Aさん、
Bさん、Cさんの座談会撮影をちょっと巻き気味にやって、終わったらCさんとマネージャーは
誰よりも先に帰っていった。

「何あれ?」
「本人もそうだけどマネージャーの態度がひどいね」
「今日は長時間お待たせしてすみませんでした」
「何とかなってよかったですね」
「お疲れさまでした」


待たされたほうのマネージャーさんたちと後日、ときどき飲みに行くと、そのたびにこの日の
エピソードがつまみになります。Cさんはとっくに引退しました。マネージャーは他の現場で、
マネージャーさん同士いっしょになる機会があるようで、

「あいかわらずですよ」

といった噂をたまに耳にしました。この程度のことを、いちいち気にしていたら編集者なんて
務まらないので気にしませんけど、忘れもしません。待たされた側のマネージャーさんたちと
「ぼくらが知るかぎりマネージャー史上最悪じゃないかな~」なんて、数年に一度、酒の肴に
していました。



ある日のことです。とあるタレントさんの撮影でスタジオに入っていると、事務所の社長さんが
立ち会いに来たので、名刺を交換しました。Cさんの元マネージャーでした。あれから何十年。
とあるタレントさんと一緒に独立したようです。当時、待たされた側のマネージャーさんたちに
いますぐ伝えたい! と思いましたが、顔には出さず撮影を終えました。もう時効だし。

「日にち変更いただいてすみませんでした」

現場マネージャーさんが気を使って言葉をかけてくれます。そういえば、いちど決まった日時
ばらして別日に組み直したのも、きっとCさんの元マネージャーが別の仕事を急遽ねじ込んで
こっちにシワ寄せがきたんだろうな……そういうところ、変わってないと思いました。


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コメント
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