クララは、ほとんどのところ分かっているようだった……。
マユは、女子トイレで用を足した。むろんポチとしてである。
マユの姿をした拓美が手伝ってくれるが、なんとも気恥ずかしい。便座から滑り落ちないように拓美が体を支えてくれる。悪魔というのは何からでもエネルギーを摂ることができる。人間のように食事もできるが、食べたものは百パーセントエネルギーに代わり、排泄ということをしない。しかしケルベロスは犬であるので、豆柴の姿になっても、食事もすれば排泄もする。
羞恥と快感、マユは、思わずため息をついた。
「楽になりましたか……」
――いやはや、なんとも……。
「え……?」
犬語なので、拓美にもクララにも通じない。
「犬に化けてるけど、マユさんなんでしょ?」
そう言いながら、クララがウォシュレットのボタンを押した。
「キャイーン!」
マユは、水圧で吹き飛ばされるところだったが、拓美が支えていてくれたので、なんとかこらえることができた。
――化け・てる・んじゃな・くて犬のか・らだ・を・借りて・るだ・け……。
思念で、これだけのことを分からせるのに、一分もかかってしまう。
仕方がないので、ケルベロスの魔力で人間の姿に化けた……。
「わ……!」
狭いトイレの個室で、豆柴が、いきなり人間の姿になったので、個室はギュ-ギュー……おまけに、その姿はスッポッンポン。マユは慌ててトイレットペーパーで最低限のところを隠した。
「天使の雅部利恵ってのが、なんか企んで、AKRに対抗しようとしてるの、だから緊急事態。それで、魔界の犬の体を使って、ここに来たわけ。で、犬の姿じゃ、意思の疎通もムツカシイから、犬の魔力で、人間に化けてるの。でも犬の悲しさ、化けても服までは手が回らない。で、お願いなんだけど」
「あ、服ですか!?」
「ううん。便器の中のモノ流してくれる。ここからじゃ、レバーに手が届かなくって……」
クララがレバーを押して水を流した。
「でも、裸でいいんですか」
「いいの、またすぐにポチに戻るから。利恵は、ルリ子って子たちの欲望を、純真な向上心と思いこんで、このAKRに対抗してきてるの。下手をすると、このAKRが潰されてしまう。その動きはここのスタッフも掴んでいるわ。この世界ってクサイ臭いで満ちてるから……」
拓美が、思わず鼻をクンクンさせる。
「ばか、その臭いじゃないわよ!」
その五分後、マユはポチの姿にもどり、トイレの通気口からダクトに入り、黒羽ディレクターたち幹部のいる部屋を目指した。ここのスタッフたちが、どれだけオモクロの情報を掴み、対策をもっているか知るためである。
拓美とクララは、衣装部屋に行き、マユがポチから人間の姿に戻ったとき、困らないように服を探しに行った。
「どれも、ステージ衣装だから派手ね……」
拓美がため息をついた。
「これがいいよ!」
クララが一着の衣装を取りだした。それはAKRのデビュー曲『最初の制服』に使った衣装で、ほとんど、女子高生の制服と変わりがなかった。
二人は、それをトイレの通風口下の用具入れの上に目立たぬように置いた。
「でも、クララ」
「なに?」
「マユさん、人間に化けたとき、クララに似てなかった。なんとなくだけど」
「わたしは、なんとなく、あんたに似てるような気がした」
ポチの悲しさ……人間に化けるときは、見本がいる。つまり、その時見えた人間の姿を真似てしまうのだ。だから、マユの姿をした拓美と大石クララを足して二で割ったような姿になったわけである……。
マユは、女子トイレで用を足した。むろんポチとしてである。
マユの姿をした拓美が手伝ってくれるが、なんとも気恥ずかしい。便座から滑り落ちないように拓美が体を支えてくれる。悪魔というのは何からでもエネルギーを摂ることができる。人間のように食事もできるが、食べたものは百パーセントエネルギーに代わり、排泄ということをしない。しかしケルベロスは犬であるので、豆柴の姿になっても、食事もすれば排泄もする。
羞恥と快感、マユは、思わずため息をついた。
「楽になりましたか……」
――いやはや、なんとも……。
「え……?」
犬語なので、拓美にもクララにも通じない。
「犬に化けてるけど、マユさんなんでしょ?」
そう言いながら、クララがウォシュレットのボタンを押した。
「キャイーン!」
マユは、水圧で吹き飛ばされるところだったが、拓美が支えていてくれたので、なんとかこらえることができた。
――化け・てる・んじゃな・くて犬のか・らだ・を・借りて・るだ・け……。
思念で、これだけのことを分からせるのに、一分もかかってしまう。
仕方がないので、ケルベロスの魔力で人間の姿に化けた……。
「わ……!」
狭いトイレの個室で、豆柴が、いきなり人間の姿になったので、個室はギュ-ギュー……おまけに、その姿はスッポッンポン。マユは慌ててトイレットペーパーで最低限のところを隠した。
「天使の雅部利恵ってのが、なんか企んで、AKRに対抗しようとしてるの、だから緊急事態。それで、魔界の犬の体を使って、ここに来たわけ。で、犬の姿じゃ、意思の疎通もムツカシイから、犬の魔力で、人間に化けてるの。でも犬の悲しさ、化けても服までは手が回らない。で、お願いなんだけど」
「あ、服ですか!?」
「ううん。便器の中のモノ流してくれる。ここからじゃ、レバーに手が届かなくって……」
クララがレバーを押して水を流した。
「でも、裸でいいんですか」
「いいの、またすぐにポチに戻るから。利恵は、ルリ子って子たちの欲望を、純真な向上心と思いこんで、このAKRに対抗してきてるの。下手をすると、このAKRが潰されてしまう。その動きはここのスタッフも掴んでいるわ。この世界ってクサイ臭いで満ちてるから……」
拓美が、思わず鼻をクンクンさせる。
「ばか、その臭いじゃないわよ!」
その五分後、マユはポチの姿にもどり、トイレの通気口からダクトに入り、黒羽ディレクターたち幹部のいる部屋を目指した。ここのスタッフたちが、どれだけオモクロの情報を掴み、対策をもっているか知るためである。
拓美とクララは、衣装部屋に行き、マユがポチから人間の姿に戻ったとき、困らないように服を探しに行った。
「どれも、ステージ衣装だから派手ね……」
拓美がため息をついた。
「これがいいよ!」
クララが一着の衣装を取りだした。それはAKRのデビュー曲『最初の制服』に使った衣装で、ほとんど、女子高生の制服と変わりがなかった。
二人は、それをトイレの通風口下の用具入れの上に目立たぬように置いた。
「でも、クララ」
「なに?」
「マユさん、人間に化けたとき、クララに似てなかった。なんとなくだけど」
「わたしは、なんとなく、あんたに似てるような気がした」
ポチの悲しさ……人間に化けるときは、見本がいる。つまり、その時見えた人間の姿を真似てしまうのだ。だから、マユの姿をした拓美と大石クララを足して二で割ったような姿になったわけである……。