大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・59『やくもにそっくり……』

2021-01-15 14:32:46 | ライトノベルセレクト

物語・59

『やくもにそっくり……』    

 

 

 あら!?

 

 門を入って来るなり、「ただいま」も言わずに、お母さんが声をあげた。

「え!?」

 あまりに素っ頓狂な声なので、家族としての礼儀である「おかえりなさい」の挨拶もできない。

「やくも、駅前にいなかった?」

「え、駅前?」

「え、あ……ごめん、お母さんの見間違いだ。あ、ショートケーキ買ってきたから、あとで食べよ(^▽^)」

 ヒョイと持ち上げたパッケージは、駅前に開店したって噂ケーキ屋さんだ。

「嬉しい! 広告しか見てなかったから、食べたかったの(^▽^)!」

「今からじゃ、お夕飯が入らなくなっちゃう。デザートにね」

「あ、うん、もちろん!」

 正直、ケーキの一つくらい入るよ。

 でも、お爺ちゃんお婆ちゃんには夕飯前のケーキは重たい。母子そろって気配りをする。

 

 お風呂掃除をしていると、リビングの話声が聞こえてくる。

 いつもは聞こえたりしないんだけど、カビ取りをするので浴室のドアを開けッパににしているので、聞こえちゃう。

『え、お父さんもですか?』

『うん、オレは中央図書館でさ……いやあ、本を十冊くらい積んでさ、真剣な顔で読んでるんだ。だから、声かけにくくって……ほら、ジブリのアニメにあったじゃないか、女の子が、図書館でさ』

『ああ、「耳をすませば』の雫でしょ、あなたったら「陽子みたいだ」って喜んじゃって」

『いやだ、あそこまで情熱的じゃないわよ』

『て……陽子も?』

『ええ、駅前で。ロータリーに出たとこで……』

 

 内緒話と言うのは、聞かなかったことにするのが礼儀なんだろうけど。こういうシチュエーションなら首を突っ込んだ方が家族円満のためにはいい。

「いったい、何を見たっていうんですかあ?」

 手を拭きながらリビングに入る。

「あ、聞こえた?」

「うん、お母さんの声、おっきいもん」

「ハハ、いやね、駅前でやくもによく似た子を見かけたんで」

「あ、それで、さっき驚いたんだ」

「それで、陽子の見たのは、どんなやくもだったの?」

 お婆ちゃんが身を乗り出す。

「ああ、なにか、待ち合わせしてたみたいで、ニコニコしながら駆けていくの。すぐに人ごみに紛れたんで、それ以上は分からなかったんだけど」

「え、そうなの?」

「あ、わかる。男の子と待ち合わせしたみたいなでしょ?」

「お婆ちゃん、お母さん、そんなこと言ってないよ(#´0`#)」

「ええ、言ってないわよ」

「でも、陽子は、そういう顔してましたわよ」

「え、そうか!?」

「ほら、陽子が高校の時の」

「ああ、あの時のなあ(^▽^)」

「あ、もう、お父さんまで(#´△`#)!」

「わ、わ、聞きたいなあ!」

「そうだ、ケーキ買ってきたから、お茶にしよ。きのう開店したばかりで、パティシエの人が市の文化教室でね……」

 お母さんは、強引にケーキと文化教室の話に持って行って、デザートになるはずだったケーキでお茶になる。

 久々に家族三人でケーキと文化教室の話で盛り上がる。

 夕飯も、お爺ちゃんお婆ちゃんもしっかり食べてくれた。

 明るく話して、モリモリご飯やケーキをいただいて、有意義だった。

 

 でも、わたしのソックリさん。ちょっと気になる。 

 

  • やくも        一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石

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