大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

オフステージ・(こちら空堀高校演劇部)・134「真面目に下見・2」

2020-06-05 14:02:40 | 小説・2

オフステージ(こちら空堀高校演劇部)

134『真面目に下見・2』朝倉美乃梨   

 

 

 たいてい視覚障害か下肢障害ですから。

 

 ボブ子さんは一発で見抜いた。

 なんで分かってしまったのか、不思議だったので夕食の席で聞いてみた。

「普通の学校に通っている障がいの子は、その二つがほとんどですし」

「あ、そうなんだ」

「視覚障害なら、付き添ってあげれば済む話ですし、事前に現場を見るっていえば下肢障害かなって。それに女の先生が来るんだから、生徒さんは女の子」

「あ、なるほどお!」

 感心して、大学の専攻を訪ねると介護福祉系の大学だった。話が盛り上がって、思わず五人にビールを奢……ろうとした。

「あ、それならお風呂あがったあとにしません!?」

 なるほど、風呂上がりの方がだんぜんビールは美味しい。

 

 そして、実際に車いすで温泉に入ることにした。これはポニ子さんの勧めだ。

 

「『百聞は一体験に如かず』ですから(^▽^)/」

 客室から、車いすを押してもらい、脱衣場で入浴用の車いすに乗り換えてお風呂に向かう。

 入浴用の車いすは、専用の縁(へり)まで行くと、座面が十センチまで下がり、浴槽の中まで続いている手すりに摑まれば一人でも入浴できる。

「でも、水場ですから、必ず介助ですね」

「そうね、車いすを交換するときも感じたけど、腕の力だけでお尻もち上げるって……ちょっと……大変!」

「本人たちは、いつもやってることだから、健常者が感じるほどじゃないんですけどね」

「……うんこらしょっと!」

 

 浴槽に浸かってからは、体験は中断して、ガールズトークに花が咲く。

 演劇部の顧問だと言うと「すてき!」と喜ばれる。

 ポニ子さんとショートヘアの子は高校で演劇部に入りたかったらしいんだけど、入学する前の年に廃部になったんだそうだ。

「別に、役者になろうとかコンクールで優勝したいとかじゃないんです。なんてのか、表現力とか付けたくって」

「教科教育法の講座で言われたんですけど、アメリカとかじゃ、教職に『ドラマ』のコマがあるらしいですよ。人を相手にする職業は表現力がなくっちゃいけないって」

「そういえば、弁護士とかも。法学部とかロースクールとかじゃ、表現力の講座があるって聞いたことがあるわ。表現力一つで判決が変わることがあるって」

「ケント・ギ○バートさんだったかが、そんなに細い目で喋ってちゃ法廷闘争に勝てないって指導されたってゆってた」

「どんな演劇部なんですか?」

 ボブ子さんの質問で、うちの演劇部の話に変わった。

「あ、それがね……」

 この半年の顛末を話すと、五人の女子大生は手を叩いて面白がってくれた。

 部室が欲しいためだけに集まった演劇部だけど、文化祭で『夕鶴』をやったらけっこうノッタ話とか、部室が取り上げられそうになった時の松井さんの活躍とかは大いにウケけた。

 風呂上りには、約束通り生ビールを奢ってあげて、夜遅くまで新米教師と女子大生五人組との浴衣パーティーになった。

 成り行きで急きょやってきた南河内温泉。いわばアリバイ的にやってきたんだけど、楽しい下見になって、結果オーライの週末ではありました(^▽^)/。

 

☆ 主な登場人物

 小山内啓介     二年生 演劇部部長 

 沢村千歳      一年生 空堀高校を辞めるために入部した

 ミリー・オーエン  二年生 啓介と同じクラス アメリカからの交換留学生

 松井須磨      三年生(ただし、四回目の)

 瀬戸内美晴     二年生 生徒会副会長

 朝倉美乃梨    演劇部顧問

 

 

 

 


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