大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

REオフステージ(惣堀高校演劇部)026・GAME OVER!

2024-05-10 06:21:30 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
026・GAME OVER!                      
※ 本作は旧作『オフステージ・空堀高校演劇部』を改名改稿したものです





「ご、ごめん。イヤホン抜いたら、こうなっちゃって……」


 部室にもどると、空気がおかしかった。

 吸血鬼であることがバレた男って、こんな感じじゃなかったかと思う啓介であった。

 千歳も須磨も、できたら同じ空気を吸いたくない。そんな感じで距離を取っている。

 すぐに分かった。

 ノーパソが点きっぱなしで、画面の中では3か月かけて軌道に乗せたグローバルクラブがクローズドになっている。5人のメイドさんたちは、3か月前、クラブに来たときの私服に着替え、ボストンバッグやキャリーバッグを手にして背を向けている。

「だ、大丈夫。セーブさえしていなかったら、やり直せるから……」

 啓介は、エスケープキーを押して強制終了させてから再起動させた。


 GAME OVER! 時間がたちすぎてしまいました 最初からお始めください


 画面には無情の一行が点滅している。

「あ、あああああああああああ(ll゚゚Д゚゚ll) !!」

 啓介は、くずおれてしまい、年代物の椅子が断末魔のような悲鳴を上げた。

「で……でもね先輩ぃ……部室でアダルトゲームやってるのも、その……どーかと……(^_^;)」

 千歳は、車いすを軋ませて、やさしく言った。

「この部室では、何をやっても自由やねん。カルチェラタンやねん、せやさかいに……」

「そうなんだろうけど……あたしも、須磨先輩も、こういうのには慣れてないから……ってか、それと、もっと三次元に係わったほうがいいと思うんですけどぉ」

 やさしい物言いではあるが、けっこう厳しいことを言う千歳ではある。

「千歳ぇ、ちょっと言い過ぎじゃないかな。啓介はイヤホンでやってるし、席を立つときも画面は見えないようにしていたよ。今回は、部長さんたちが押しかけてきてオフにする暇もなかったんだし」

「いや、オーラルモードをロックしてなかったのが悪いんです。もっかい最初からやり直します」


 啓介は、カーソルをニューゲームに持って行ってクリックした。


 千歳と須磨は、申しわけない気持ち半分、好奇心半分で画面を覗き込んだ。

「あーー、掃除からせなあかんねんやったぁ……」

 グローバルクラブというゲームは、自分でメイドクラブを経営するゲームで、最初に、手に入れたクラブの建物の掃除からやらなければならない。

「ほー、ひたすら画面をクリック、あるいはタッチするのね」

 啓介は、三月の終わりにグローバルクラブを始めた時に腱鞘炎になりかけたことを思い出した。

「あ、先輩。あたしも手伝います」

 千歳が、しおらしく申し出る。

「じゃ、ボールペンの尻でタッチしてもらえるかなあ」

「よし、あたしも」

 須磨も加わって、三人で画面をタッチし始めた。


 <<<ドバッ!!>>>


 いきなり画面が震え、次の瞬間、爆発のようなエフェクトがあって、画面は無数の、そしてありとあらゆる害虫に覆いつくされた。

 高温多湿の6月なので害虫が大量発生しました!

「すごい、このゲーム、カレンダーに連動してるのね!」

「ハハ、リアル~!」

 やり始めると、面白がる二人だが、啓介は思い出した。

「そうや! えらいことになってるんやった!!」
 


☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜 松平(生徒会顧問)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局     



 

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