大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・タキさんの押しつけ読書感想『光圀伝』

2016-08-24 06:14:21 | エッセー
タキさんの押しつけ読書感想
『光圀伝』


この春(2016年4月)に逝ってしまった滝川浩一君を偲びつつ


これは悪友の映画評論家、滝川浩一が私的に仲間内に流した読書感想ですが、読んで為になる……かは、ともかく、面白いので、本人の承諾を得て転載したものです。

 凄いなぁ この人の書く本の中には間違い無く息吹がありますねぇ。司馬遼太郎や隆慶一郎とは違う息吹を感じます。
 それにしても、信じがたい程の文章巧者です。まるで水戸光圀が生きて目の前に佇んでいるように感じます。『天地明察』の時にも思ったけど、主人公がまだ何者でもなく、己が道を懸命に求めている前段・中段が圧倒的に面白く、人生に結果がでる後段はさっさと流してあります。

 仕方がないとは思います。その頃には安井算哲にしても水戸光圀にしても実史にはっきりと刻み込まれ、フィクションの筆が入る余地が無くなりますからねえ。ただ、本書には光圀隠居後に一つの事件が入り(これが実際に有った事なのかどうか、浅学にして知りませんが…こういう事実は有ったんでしょうねぇ)、 これが後の水戸藩の運命に符合する書き方に成っています。結構分厚い一冊なんですけど、二冊に分けて、この事件をもっと詳しく書いて欲しかったなぁ…う~ん、冗長になるかなぁ。
 『天地明察』では、日本神道の説明に相当紙幅を割いていましたが、今回それに当たるのは「儒教(朱子学)」です。しかし、今回は直接の説明ではなく、光圀の生き方、彼が下す選択の行方を通して語られます。
 時として、苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)な態度として現れ、また とてつもない悲しみの噴出として語られる。電車の中で読んでいて、思わず泣きそうになった事再三でした、ヤバイヤバイ。
 思ったのは、日本は儒教国じゃありませんが、形を変えて日本人の血肉になっているんだということで、一つ一つが自然に納得出来るってか、自分の中の収まるべき所にキッチリはまります。 なにも日常「これは“義”だ、“忠”だ」と考えているわけではありませんが、そんなご大層な事ではなく極自然な感覚として、儒教・道教的な考え方、受け入れ方が日本人にしみこんでるんでしょうね。

  一読、強烈にお勧め。「天地明察」未読ならまずそちらからどうぞ。
 「ハンターゲーム」第一部も読みました、今月末に映画が有りますが、すでにアメリカでは大ヒットをかっ飛ばしています。所謂ジュビナイルですけど、充分大人の読者にも訴えますよ。
コメント
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