ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
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モーツァルト 少年時代の音楽(K1)

2006-07-23 | CDの試聴記
以前のブログで、モーツァルトのシンフォニーの第1番を採りあげたことがありました。
最後のシンフォニーである第41番「ジュピター」の終楽章と同様の音型が、早くも第1番のシンフォニーでも見られて大変驚いたのですが、では、本当の原点である「作品1」ってどんな作品なんだろう。

モーツァルトの作品番号であるケッヘル番号で、1番はクラヴィーアのための作品です。
父レオポルドが娘ナンネルのために作成した「ナンネルの楽譜帳」のなかに、ウォルフガングの5歳のときの作品として記録が残っていたのが、従来K1と言われていた「メヌエットとトリオ ト長調」でした。
ところがその後の研究で、この曲は8歳のときの作品だと分かり、新たに5歳のときの作品が4曲発見されたのです。
そのため、K1は枝番としてa~fを持つ6つの作品になりました。
ちなみに前述の「メヌエットとトリオ」は、eとfに当たります。

早速、ファン・オールトのフォルテピアノで聴いてみました。
最初の曲であるK1aとK1bは、ともに20秒足らずの小曲で、「5歳の子が・・・」という前口上を言わなければ、正直あのモーツァルトの作品とは思わないでしょう。
つぶやきのようなものが、そのまま楽譜に書き留められたという感じです。

ところが、半年ほど経過して作曲されたK1cは、随分しっかりした音楽になっています。
このメロディは、よく言われるように、晩年のオペラ「魔笛」のパパゲーノのアリアと類似性があります。シンフォニーでも最初と最後の作品に同じテーマを用いていることを考えあわせると、モーツァルトの晩年の音楽には、少年時代の回帰がひとつのテーマになって、あの純度の高い音楽が生まれたのかもしれません。

ところで、このメロディは紛れもなくパパゲーノのアリアのテーマなんですが、私にはもうひとつ連想する曲があります。
それは、ドイツ民謡として知られている「山の音楽家」という曲です。
そうです、この歌詞の愛らしい曲。
 わたしゃ音楽家 山の小りす
 じょうずにバイオリンひいてみましょう
 キュキュキュッキュッキュ いかがです・・・
この民謡の原曲も、まさかモーツァルト作?

少し話が逸れてしまいました。
K1dのメヌエットも、半年間で随分優雅さを獲得しています。
そして8歳の作品であるK1e/fでは、優雅さとともに既にあのモーツァルトの雰囲気を感じさせてくれます。

ファン・オールトの誠実な演奏に触れた後、久しぶりにギーゼキングのディスクでK1e/fを聴きました。
うーん、何という美しさ! 何という優雅さ!
ギーゼキングの美しいピアノが奏でるK1e/fの素晴らしさは、また格別のものでした。


         

■曲目
アンダンテ ハ長調 K1a
アレグロ ハ長調   K1b
アレグロ ヘ長調   K1c
メヌエット ヘ長調   K1d
メヌエットとトリオ ト長調 K1e/f
ほか
■演奏:バルト・ファン・オールト(フォルテピアノ)
■録音:2005年11月、ローン、ヘルフォルムデ教会

コメント (2)
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