ETUDE

~美味しいお酒、香り高い珈琲、そして何よりも素敵な音楽。
これが、私(romani)の三種の神器です。~

セル&クリーブランドのベートーベン「英雄」

2005-04-25 | CDの試聴記
オリジナル・ジャケット・コレクション
セル&クリーヴランド管弦楽団のベートーヴェン:交響曲全集(10CD)が、HMVのネット通販の「クラシック 本日の特価」として先日販売されていたので早速GETしました。

国内盤ではひととおり持っていたのですが、
「LP発売時のオリジナル・カップリング&ジャケット・デザインと、最新のリマスタリング(20ビットDSD&SBM)」
というキャッチフレーズに惹かれて、買ってしまいました。

今日はまず第3番「英雄」です。

<曲目>
 ベートーベン:交響曲第3番変ホ長調 op.55『英雄』

<演奏>
 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団
 (1957年2月22,23日、セヴェランス・ホール)

セルの録音では音質のことがよく話題になりますが、私は今回のアルバム、いい音に仕上がっていると思います。
LPよりもまた国内盤のCDよりも、ずっと良い音です。
SACDのほうがもっと素晴らしいのかもしれませんが、CDとして不足のない音質だと断言できます。
特長は、全体に響きが豊かになったこと、それでいて細かな音も1957年当時のものとしてはよく録れていることでしょうか。
特に前者については、エピックレーベル特有の乾いた音が、今までセルの音楽にどれだけ偏見を与えてきたかを考えると、本当によかったと思います。

肝心の演奏ですが、第1楽章冒頭の決然とした和音の響きと、続く主題の表現(とくにテーマを支える弦のきざみの見事さ)が、既にこの演奏のレベルの高さを物語っています。
「格調高い演奏」というほかありません。
第2楽章は哀しみをじっとこらえながら、感傷的にならずに立体的に音楽が構築されます。
第3楽章は理想的なスケルツォ。しかしセルのエロイカの真骨頂はフィナーレにあります。
まずテンポの素晴らしさ。猛スピードで始まりますが慌てた感じは全くしません。つづくバリエーションは本当に神業です。セルの変奏曲の扱いの上手さは、ブラームスの4番のパッサカリアやハイドンバリエーションでも実証済ですが、ここでもその名人ぶりがいかんなく発揮されています。
最初の変奏における対旋律を弾くチェロの見事なこと。続く複雑な変奏もまさに完璧です。
そして極めつけはコーダで、この猛烈なテンポとアクセントの見事さ、リズムの切れ味はどんなに賞賛してもしすぎることはありません。クリーブランドのオケの腕利き達が、セルの棒に必死にくらいついていくのが手に取るように分かります。

久しぶりにこの演奏を聴きましたが、手にびっしり汗をかいていました。
音質が向上したことで、セルの素晴らしい音楽がよりストレートに伝わってきます。
残りの曲が楽しみになってきました。


コメント (4)
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