三木奎吾の住宅探訪記 2nd

北海道の住宅メディア人が住まいの過去・現在・未来を探索します。
(旧タイトル:性能とデザイン いい家大研究)

コートハウスの古民家

2013年07月25日 04時44分55秒 | Weblog



家と庭、と書いて「家庭」になる。
というのは、まぁ実感のこもった多くの人々の経験知として伝わってきている。
ドイツの「クラインガルテン」とかロシアの「ダーチャ」など、
都市への集住が基本ライフスタイルになったけれど、
だからこそ、人間性復元の「権利」のような概念が発達して
社会システムとして郊外に菜園が各家庭毎に持たれたとされています。
人類の素朴な欲求として、
緑とか庭とかとの郷愁的な思いの強さを見るにつけ、
こういうものはやはり本然なのだろうなと思います。
人類というほ乳類は太古、基本的に森で樹上生活を営んでいて
食物採取の目的で地上に降りても、
夜には樹上で豊かな森の緑を屋根として暮らしていたに相違なく
そういったDNAに刷り込まれた「安楽感」を容易に忘れないのだろうと思います。
たぶん、そういった樹木は鬱蒼とした森を形成していて
幾重にも重なった葉の連なりは、雨露を十分にしのいでくれたのでしょう。
そういう生活ゾーンの中で、おのずとエリアが認識されるようになり、
原初的な「家」という概念が刷り込まれている。
そんな気がしてなりません。
庭や植物への強い感受性はそういうことに淵源を持っているのでしょう。

ちょうど「コートハウス」という次号Replanの特集にからんで
会議をしていて、そういえばと浮かんだのが
写真のような「家と庭」の光景。
これは沖縄の古民家「中村家住宅」であります。
風水思想もあって、沖縄の伝統的ライフスタイルの住宅には
必ず「中庭」があるように思います。
そしてそれが琉球石灰石の塀と床敷きとで構成されている。
まさに「コートハウス」なんですね。
考えてみれば、沖縄のような湿度と温度の高い地域なのに、
この「コート」(中庭)には、雑草が生えてこないようになっている。
それは日頃からの管理が行き届いているからなのか、
それとも琉球石灰石の敷き込み方に知恵と工夫があるのか、
そこらへんは定かではありませんが、現実に美しいコートハウスになっている。
その中庭に向かって全居室が向き合うようになっていて、
強い太陽日射が琉球石灰石の床面で和らげられて、
室内にバウンドして光が入ってくる。
室内側からはこのハイキーな空間が目に入って
室内とのコントラストが鮮明になる。
こういった光景は、先ほど触れた太古のわたしたちの祖先が認識していた
光と影の世界観に大変近いのではないか。
そんな気がしてきてなりません。
やっぱり圧倒的に癒されるような気がします。
コメント
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