性能とデザイン いい家大研究

こちら 住まいの雑誌・Replan編集長三木奎吾です 
いい家ってなんだろう、を考え続けます

【唐招提寺丸瓦がアタマに判子スタンプ】

2020年02月07日 06時32分03秒 | 住宅取材&ウラ話
やはり関東は人口も多いので情報量も圧倒的に多い・・・。
出張しての多数接触なので、情報収集型の動きになるのですが
しかし話しているウチに「縁」が膨らんでくる瞬間がある。
たまたま建材流通の企業を訪問したら、創業が明治4年で
日本の「建材ガラス流通業」の草分けだというお話しが飛び出して
ちょうどわたしのライフワーク「北海道住宅始原期」情報掘り起こしで
開拓期の北海道が日本全体でガラスの特異的最大消費地だったことと
連関することが判明してしまった(!)。
北海道内だけでは情報の掘り起こしには限界もあったのですが、
こういった新たな情報発掘でさらに研究が進みます。
いろいろと会話して情報を突き合わせると、知見が複層化して深まる。
たしかに「開拓使」も北海道と東京の二元機構だったので
その両方でいろいろな動きが同時進行したのが実際なのでしょう。
寒冷地住宅を本格的に開発しなければならなかった開拓使にすると、
その必要な建材について、外国からそれを「輸入」する必要性が生じる。
とくに伝統的日本住宅から「洋造」に建築基本方針を明確にしてからは
海外との交易関係が不可欠であり東京なり横浜なりでの情報収集が
待ったなしに発生しただろう事は自明ですね。
やがて明治末年頃にはガラス建材が国策として国産化されるのですが
それまではひたすら輸入材に頼っていたので、東京の流通事業者は
こうした情報について相当の蓄積があるに違いない。
あらたな研究の基礎的情報源が得られた思いがしております。

一方、写真はあちこち巡り歩いていた先の松井郁夫設計さんで
見せていただいた古建築の「瓦」であります。
漢字文字が5つ配列されていることはわかるけれど、
クイズのようで、どう読んでいいのかがわからなかったけれど、
「唐招提寺の瓦だよ」と教えていただいた。
真ん中の「律」はわたしもわかった。鑑真さんが唐から伝えたのは
「律」宗とそのあと名付けられたことがアタマに浮かんだのですね。
なので、その唐招提寺の寺院をあらわす一字として採用されたのでしょう。
瓦は長く使える建材とはいえ、千年も持つものではないでしょうから
いつのころに焼かれた瓦かはわかりませんが、
しかし、瓦の文字はその時代の人間が書いた文字なのでしょう。
先般来アタマを悩まされた「くずし字」ではない楷書なので
わたしたち現代人にもわかりやすい。
というか、現代書体の手本のように端正な書体。美しく読みやすい。
松井さんの説明ではさる建築の大家から譲り受けたということでしたが、
さすがに古建築の探求者、面白い学習素材を目にさせていただけた。
まわりの丸い突起はどういう意味合いがあるのかとか、
また外周縁部分に白く変色した部位が3箇所見えるけれど
それはどういったことが原因なのかとか、
素朴な疑問がたくさん湧いてくるのですが、
なんといっても「あちこち行脚」の出張の身の上なのでじっくり
疑問をぶつけられませんでした。
「今度来たら、夜じっくり教えてあげる」みたいな約束で
次の訪問先に向かっておりましたが、どうも疑問はアタマから離れない。
この「変色域」はどうも瓦運搬時に縄懸けしたときの擦過痕では?
というように推理があれこれ浮かんで止まりません(笑)。
印象的な丸瓦、ハンコのように頭にスタンプされた心境です・・・。
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安藤忠雄作品 札幌真駒内霊園・頭大仏

2015年09月20日 04時37分14秒 | 住宅取材&ウラ話



札幌の「真駒内霊園」というと、
札幌に住んでいる人にとっては、まことに微妙なイメージの場所。
なぜか、入り口近くにはモアイ像が林立していたり、
石造りのシカがそこにミスマッチにたたずんでいたりする。
どうも奈良の大仏のパクリで、シカも動員されたものと推測できる。
そういうなんでもありの混沌状況がキッチュで楽しいとも言えるのですが、
まぁ、なんとも微妙な、というのが偽らざる心境。
そもそも霊園墓地で、そういったキッチュさは必要なのか、
人類の定住が始まってから15,000年として、たぶん墓地というのは
それと同じか以上くらいの歳月、人類の歩みとともに存在してきたと思う。
死者への敬意は人類とともに存続し続けるものと思うけれど、
どう考えても、自然や物質に戻るのがイキモノとしての輪廻。
そういう悠久性で考えると、あまり仰々しくしたくはないのではないかと。
わたしとしては、ここに墓地を求めたいかと言われれば、避けたい気持ちも強い(笑)。
ただ、そういう墓地に商業主義がありうるのも現代資本主義社会。
話題を提供してという、売らんが為の作為が働くのも、理解出来る。

そういった雑感を抱く施設に、
これまで普通に建てられていた大仏があって、
その再活用を、墓園管理の企業から依頼を受けて、
そこにこれでもかの、安藤忠雄作品が「頭を出しつつ」ある。
<画像は、周辺に建てられている看板その他を撮影したものです>
安藤さんの札幌での講演会で、この「作品」のことを聞いて
一度は見てみたいと思っていたのですが、きのう、近隣に要件があって
訪問することが出来ました。
その制作意図はまことにわかりやすく、
プレゼンテーション・表現能力については、まことに強いメッセージ。
キッチュに建てられ、素裸にさらされていた大仏を
周辺から土を盛り上げて、頭部だけ残して埋めてしまう。
しかし、大仏の仏体自体には土は被覆させずに、
盛り土小山にトンネルを掘って、中心部に端座する大仏に向かって、
その明るさに向かって、人々を歩ませていく。
やがて徐々に高まる予感の末に、
いきなり明るい空間の中で、この神々しい大仏を仰ぎ見させる。
その劇的な体験感を味わわせようという、建築者としての構想力はすごい。
こういう回遊性と、出会いの衝撃性の演出は、茶室などに
一般的に使われ続けてきた技法だろうし、
人類社会に普遍的だったのではないかと思います。
たぶん、歴史的に「宗教施設」に対して建築がリクエストされてきたことが、
こういうわかりやすさであったであろうことも、想像するに難くない。

さてこの施設・頭大仏は、間違いなく
札幌の新名所になっていくことだろうと思います。
たしかにメッチャ面白い、しかし・・・。
この頭大仏が、はたしてどんな評価になっていくのか、
わたしとしては、むしろ、そのことの方に興味が湧いてきています。


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久しぶり「一般向け」住宅リフォーム講演

2015年09月06日 06時59分43秒 | 住宅取材&ウラ話
きのうときょうの2日間、ある住宅メーカーのイベントで
一般のみなさん向けの住宅リフォームをテーマとした講演を行っています。
まぁ年に10回くらい、講演は依頼されるのですが、
それが本職ではもちろんないので、
困る部分もあるのですが、自社の宣伝にもなるし、
一生懸命に対応するようにしております。
最近は、だいたいがプロのみなさん向けの講演が多く、
普段から用意し、準備を重ねているのはそういう情報ソースが多い。
たぶん、ここ3年くらいはおおむねそういった傾向にあったのですが、
今回は、まったく久しぶりに「一般向け」。
それも集まるユーザーは、その大手メーカーさんの既存ユーザーも
多くいるかもしれないけれど、まったくのフリーのみなさんも考えられる。
っていうような、非常に漠然としたターゲット設定。

考えてみると、このブログも、広く一般向けと言うよりは
どっちかというと、業界のプロのみなさんの読者の方が多い。
雑誌としてのHPは、一般向けとして考えていくのですが、
わたし自身が続けるブログでは、やはり自分自身の興味で書くしかない。
そういうことで自分自身の興味なので、それこそ
歴史ネタやら、時事ネタやら、種々雑多な「わたし発・人間情報」。
そういう普段の情報発信スタイルとは、やや違った角度が、
こういう「一般向け」講演では、意図しなければならない。
ただ、どんなひとが来るのかわからない、というのは難しい。
ということで、なかなか想定がつかず、
どうしても、手探り的な対応できのうの講演に臨みました。
そういうことなので、用意したプレゼンデータは大きく膨らんでしまった。
ふつう頼まれるプロ向け講演でも、データは多くなってしまうのですが
こういった事情もあって、「あれもこれも」と超過剰に詰め込んでしまった。
そこに持ってきて、直前に「MC」の方との打合せまであって、
「そうですね、じゃ、そういうのも入れましょう」みたいな展開になって
いよいよ、60分では絶対無理、120分でも・・・なものになっておりました。
ということで、最後は、集まった人の様子を見て、のお話しスタート。
・・・で、無我の境地(笑)での1時間。
こういうのは、また久しぶりの興奮だったので、動悸が止まらない(笑)。
大体が、多くのみなさんにお話しをするというのは興奮するのですが
いつにも増して、アドレナリンの分泌がハンパない。
興奮を静めるべく沈殿していた日帰り温泉で、自己反省大会・・・。
やはりお話しは、半分もいかないくらいでありました・・・。
その意味では目分量の把握自体は、おおむね正確に作動している(笑)。

で、本日ももう1回講演があります。
土日で2回もやるということで、すごいのですが、
反省に踏まえて、再度、データも大修正してなんとか任務を遂行したいと
ふたたびアドレナリンの静かな点火を確認しております。
再度温泉反省会になるか、汗流しさっぱり大会になるか、
というワクワク感に包まれております(笑)。 さぁやるぞ!
もし、札幌在住の読者の方でお時間のおありの方、
本日午後3時より、札幌市東区北8東10のLIXILショールームにて
その様子をご確認いただけますので、よろしく。

<写真は、無関係のサッポロファクトリーアトリウム>


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出江寛さんの「沈黙」のデザイン論

2015年09月05日 07時13分38秒 | 住宅取材&ウラ話


きょうはあるイベントで1時間ほどお話しする機会があり、
その準備のために、パワーポイントデータを作成しなければならないなか、
JIA北海道支部から、出江寛さん講演のご案内。
何度か、出江さんの講演を聞いて、ファンである身としては
身を切られるようでしたが(笑)、聴講して参りました。
出江さんの講演はもう7年も前にはじめて聞いて
そのデザイン論に、非常に惹かれておりました。

7年の歳月を経て、どのような展開になっているかと、
興味津々で、引き込まれるようでありました。
氏のデザイン論の中核は「沈黙」論。
デザインとして人を沈黙させるものが仕組まれている都市として
京都・奈良・倉敷を挙げられています。
「沈黙は人間の心を癒すものである」とされる。
典型としての、京都は仏の文化の世界として紹介される。
金閣のデザイン論を語られるくだりは、思わず息をのまされる展開。
金閣は、釈迦の骨とされる納骨堂が3階部分にあるそうですが、
黒漆で塗り込められた床板が、
あえて幅も不揃いな寸法のもので構成されているのだそうです。
室内も金泥が天井・壁面に塗り込められた空間で
そこに陽光の移ろいが忍び入ってきたとき、
その床板が微妙に反り返って、ちょうど海面のように「波立つ」。
黒漆で塗り込められた床が、そのとき法悦するような
光の揺らめきを見せるのだそうであります。
出江さんも、その様子は障子からそっと覗き見ただけだそうですが、
いまは名も確認できない、金閣の設計者のデザイン意図が
このような空間体験を創り出していることにリスペクトが伝わってくる。
教えとしての、釈迦入滅から56億7000万年後から衆生を救済することが、
建築デザインとしてイメージ装置として、現出しているのだと。
そういう宗教世界に正面から取り組んできた建築群が
われわれ日本人の精神文化の基底で、沈黙の美を構成していると。

そして、徐々にデザインの哲学論に入っていきます。
「真・行・草」という3つのスタイルへの論考を深めて行きながら、
最期には森侍者という盲目の側女との愛欲に生きたといわれる
一休さんを題材にして、エロスの世界にまで論を広げられていた。
まことに融通無碍、そして自由闊達なデザイン論の炸裂でありました。
そして、国宝の茶室、小堀遠州の「密庵」のデザインについて
繰り返し、詳細に語られていました。
寸法に於いて、基本空間構成に奇跡的に黄金比率が実現している。
天才だけが可能なデザインではないかと。

まさに出江さんのデザイン論が、はるかに時間オーバーで展開して
その迫力に、ひたすら圧倒されておりました。
なんでも、氏の講演としては2回分くらいの中身を
今回は、一気に話されたと言うことで、受け止め側でも、
徐々に沈殿させながら、整理整頓していきたいと思っています。
それにしても、人間は心の若さがすべてということですね。
出江さんの精神の若々しさには、本当に驚愕させられました。
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和風古民家をドイツ風デザインに再生

2015年09月04日 06時26分52秒 | 住宅取材&ウラ話


新潟に、ドイツから来て和風民家をドイツ古民家デザインに変える
そういうリフォームで話題になっている例があると聞いていました。
カール・ベンクスさんという方だそうで、
でもまぁ、ツアーの趣旨とは違うので見学はできないと思っていたのですが
同行の方が熱心にプッシュしてくれたので、見学コースに入りました。
この建築デザイナーさんは、新潟市の賞も受けられている。
以下、HPからその紹介文を。

「第2回新潟市特別賞
カール・ベンクス 建築デザイナー
「古い民家を壊すことは文化を捨てることと同じ。」
ベルリン生まれのカール・ベンクスさんが、築180年の古民家を再生して
新潟県十日町市(旧東頸城郡松代町)に移り住んだのは1993年のこと。
打ち捨てられ朽ちて行く古民家の中に、カールさんは自然環境に
寄り添うような生活の知恵と、日本の職人たちの高度な技とを発見し、
「古い民家を壊すことは、宝石を捨てて砂利を拾っている」
と警鐘を鳴らしてきた。
古い民家をいつくしみ残していくことは、文化を伝えると同時に
世界に誇る職人の技術を伝えることでもある。
遥か9000kmのかなたの国、ドイツからやってきたカール・ベンクスさんの
マイスター魂が、忘れかけていた日本文化の再発見に導いてくれた。
自ら新潟に居を構え、たくさんのメッセージを発信し続ける生き方に
敬意を表し、今後の活動に期待を込めて新潟市特別賞を贈りたい。」
とされています。
その活動の趣旨は共感できるものがあると思っていた次第。
なんですが、訪問したときは事務所は定休日と言うことで
お話を伺うことはできませんでした。
上の1枚目の写真の建物は、松代市街の古い旅館をリフォームした建物。
カール・ベンクスさんの事務所はこちらの2階になるのだそうです。
ということで、直接お話しを聞くことが出来なかったのですが、
いろいろな情報では、デザイン的には確かに東西の文化を越えて
古民家としてのたたずまいに共通性があり、
ドイツ的な感受性も、日本古民家と近似性を持っていることは伝わってくる。
しかし建築的には、ただデザイン的に手を加えているだけで、
断熱などの現代的要件については、無頓着とされていました。
「え、・・・」というところ。
で、ビジネス的には、そのリフォームで生活利便性の低い
山間地の古民家を、わざわざ生活のための住宅として購入するかどうか、
そういった評価が、一般的になっているということだそうです。




住宅建築としてというよりも
どちらかといえば、店舗デザインとしての面で評価されているよう。
ご本人は、旧東ドイツ・ベルリンの出身で、
日本文化に深く傾倒された家庭に育って、こうしたデザインを追求している。
写真のように、柱と梁の接合部の飾りなど、
一般的には宗教施設・寺院の外部で使われる部材を
インテリア空間に持ってくる手法やよく見ると照明のシェードが
お米を炊くお釜だったり(笑)など、キッチュで、
「なんかちがう」けれど、それなりに「似合っている」という印象。
でもこういう風に改装するのであれば、
せっかくだから、ぜひ断熱改修も同時に行えばいいと思うのですが、
そのような志向が無いというのは、まことに残念です。
ちょうど、この空間で現代的な女性書家による展覧会も開かれていましたが、
まことにぴったりとハマっていました。



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手塚貴晴設計・十日町産業文化発信館 いこて

2015年09月03日 06時43分53秒 | 住宅取材&ウラ話


ここのところ、情報がどんどん入力されている一方で
なかなか情報をまとめたり、発信したりすることができておりません。
いろいろな案件があって、忙しいこともあるのですが、
徐々に、整理整頓して情報発信していきたいと思います。
先般、お盆明け時期に訪問した新潟視察出張などはその最たるもので、
いろいろと面白い建築は見てきたのですが、
まったく整理整頓ができていません(泣)。
十日町のフラワーホームさんには、大変お世話になっていたのに、
その面白い建築である、表題の建物について書いておりませんでした。
申し訳ない思いを込めて、とりあえず、写真を掲載しておきたいと思います。

設計は、手塚貴晴さん。
お名前だけは存じ上げてはいましたが、
さてどんな建物を作られているのか、不勉強で予備知識はありませんでした。
この建物は、フラワーホーム創業者の藤田さんが地域への文化貢献を兼ねて
企画し、建設されたものだそうであります。以下HPから、コンセプト。

十日町産業文化発信館 いこて は、
私たちのふるさと、とおかまちで、
継承 と 革新 をコンセプトに歩み始めました。
十日町の伝統を絶やさぬよう、
変化や進化をさせ、チャレンジし続けます。
変わり続けることが伝統になると信じて。

建築としては、雪の多い越後・十日町の風土を表現するような
まるで「かまくら」を彷彿とさせる外観デザインが特徴的。
2枚目の写真のような架構になっていて、木造のドーム構造。
内部には、構造を支えるような柱はありません。
おおらかな空間が広がっていて、つつみこんでくるようなここちよさがあります。
こうした構造なので、明瞭な「外壁」というものは存在せず、
骨組みである木骨アーチ型フレームの立ち上がり部分以外は、
すべて開口できることになる。
で、実際に以下の写真のように、適時、オープンさせています。




まぁ、一種の「滑り出し窓」と言った方がいいのでしょう。
1枚の開閉できる「建具」というか、壁というかは、
かなりの重量、たしか200kgくらいと言われたと記憶していますが、
金物で開閉可能にはなっている。
実際にひとりの力でも開閉はできると言われていましたが、
お料理も食べ、お酒も入ったので(笑)、実験はしてみませんでした。
で、興味を持ったのは、その「屋根」なのか「壁」なのかの防水。
これを板金で処理しようとしたら、開閉の度にいろいろ問題も出る。
ということで、シート防水で処理されていて、それがまた
面白いデザイン要素として、表現構成されていました。
ちょうどわが家のお隣さんでも、既存板金屋根にかぶせるように
シート防水処理の工事をされていたのを見ていたので、
そうか、これで仕上げ、いいんだ、と眺めていただけで、
きちんとそのあたりを調査・確認しておりませんでした。
そんなときにこういった建物を見学できて、興味を深めた次第です。

内部空間は木造の架構が美しく、
かまぼこ形の断面が大きな開口部になっていて、
まことに開放的で魅力的な建物になっています。
なんですが、いっぺんにたくさんの建築を見たので、
個別の建物について、総合的な情報になっておりません(笑)。
昼間も、夜間も両方の時間を体験させてもらいましたが、
それぞれに魅力的な空間体験をさせていただけました。
フラワーホームさんにも、手塚貴晴さんにも深く興味を持った次第です。

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高齢化時代の住宅デザイン

2015年08月29日 07時01分53秒 | 住宅取材&ウラ話
きのう、なにやら見覚えのある筆跡の郵便物が届いた。
知人の建築家・藤島喬さんから、ご自分の事跡を表現した冊子だった。
あんまり詳しく年齢は憶えていなかったけれど、
あらためて見ていたら、1946年生まれということだから、
もうすぐ70歳になるのだと、驚かされた。
人間必ず歳を取っていく。当たり前だけれど、
こういうふうに「気付かされる」ことが最近、多くなってきたように思う。
建築家のひとたちは、大体、加齢してくるとこういう「仕事集」を
発刊したくなるようなのです。まぁ一種の自然現象のようなモノで、
ほほえましくもあり、一抹の感慨もあったりする。

わたしは、ユーザー志向の強い住宅雑誌を発行し続けてきています。
でも、大学は文化系であり、マスコミ志望だったので、
メディアの事業を始めた結果として、住宅建築の世界に入ってきた人間です。
本来、テーマは住宅でなくても良かったのかも知れません。
しかし、選択したその事業領域を深化させていくプロセスで
読者のみなさんといっしょに、建築への興味を深めていったように思います。
ビジネス的に、建築家のみなさんとの接点はあまりないのが実際なのに
住宅の取材をしていくなかで、建築家の家づくりに
深い興味を覚え、その仕事が果たすべき役割、
現代人の人間性の深い把握、それを通した建築デザイン、
さらにプロダクトとしての性能の進化の志向性などに共感を持った次第です。
広告や出版などのビジネスとしてだけ考えれば、
このような志向は、あんまり有用的ではないと思いましたが、
しかし、北海道というフロンティア志向の強い地域環境が
知らず知らず、自分自身にも影響を及ぼしているのかも知れません。
こういった建築家たちの仕事を、デザインの面でも性能志向の実践としても
寒冷地という条件の中で、最前線で戦っている現実の姿を
多くのユーザーに、住宅メディアとして伝えていくことを
できる可能性のある人間は、していくべきだと思った次第です。



そんな意味で、ある種、同時代人としての近縁性を
共有している実感を持ち続けております。
そういったみなさんから、このような冊子が届くようになり、
思わず、立ち止まるような思いに囚われる次第であります。
しかし、冊子の中でも
「これで引退か?と思われるかも知れない」
と書かれていたけれど、それに続けて書かれていた通りだと思います。
「まだそこまでには至っていない。建築を作りたい。
創作への憧れであり、創作意欲はまだあると思っている。
・・・タイトルを建築への憧憬とした所以である」。
高齢化時代とは、今後も社会が追究すべき大きなテーマ。
歳を取っても、いや歳を取っているからこそ気づけるデザインがある。
いまのわたしの大きな興味である縄文に即して言えば、
縄文はそれまでの社会から、定住という契機からの必然の変化として
一気に高齢化が進展し、そこで高齢者の「知恵」が、社会発展に
大きく寄与したとされているのが最先端の考えなのです。
いま、わたしたちの社会でも、そうした変化が
否応なく押し寄せてきているのだと、そんな風に思えてなりません。
そんなエールを送らせていただきたいと思います。
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現代人は、住む場所をどう選ぶ?

2015年08月28日 05時53分32秒 | 住宅取材&ウラ話
住宅は、集合としての住宅地に建つ場合が多い。
道路や公共エネルギーなど、集合的住宅地には利便性が高い。
歴史的には、住宅はその場所に住む理由がハッキリしていて
建てられるケースが多かった。けれど、
現代では、その条件が大きく変わってきているのかも知れない。
これまでの条件に強い決定力が薄れてきていて、
あらたな価値感の再構築の過程が進行しているのかも。
自由な選択肢が広がってきていて
その可能性も大きく拡大してきている。
そうであるので、選択に当たっての主体性が不可欠になって来た。
写真は新潟県長岡市のある住宅地の様子。
高田建築さんという設計事務所が基盤の地域ビルダーさんが
大きな敷地を住宅地として造成し、住みやすい「街」を考えていました。
道路もゆったりとカーブさせて、必然的にクルマの速度を制御し
地下水利用の共同の融雪のための放水装置まで装置している。
いわば、「地域としてのやすらぎ」に挑戦している。
まことに興味深い「住む場所」へのイマジネーションだと思いました。
下は、その会社のオフィスの様子。なんとも未来的。



どこに住むか、ということは、
そのまま、「どんなふうに生きていくのか」と同じ意味合いがあります。
歴史的には、住宅はその場所に住む理由がハッキリしていて
建てられるケースが多かった。
日本列島で定住が始まったとされる縄文では
豊かな海産物と、ブナの森のナッツ類など、
食の条件が最大の決定因子で決まっていた。
よりビッグスパンで考えると
弥生時代以降も基本的には食の生産と密接にからんだ条件で
ひとの「住み処」は基本的に決定されてきた。
一方で、世代更新というレベルで考えても、
弥生以降1世代20歳で見て、500世代くらいとなるけれど
そうした決定因子で「どこに住むか」ということは決まってきていた。

けれど、現代では、その条件が大きく変わってきている。
利便性という尺度が、クルマなどの移動手段の高度化などで
大きく変動してきているし、
所得を得る手段である職場自体も、その環境・立地が変化もしてきている。
さらに子どもの教育という要素からも、決定因子は大きく変化しうる。
追い打ちをかけるように「地域」という絆も希薄化が進んでもいる。
自由に住む場所を選択できるというのは、結構、現代的な選択肢。
家を求め、家族のシアワセを考えて
「どこに住むか」と考え、主体的に決めていくことが必要になってくる。
Replan本誌9月末発売の次号では、家づくりと住む場所について、
さまざまな事例を発掘して、考えてみる素材を探してみました。
あなたは、どこで、どんな暮らしをしたいですか?
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住まいの瑕疵事故、94%は雨漏り

2015年08月27日 06時42分31秒 | 住宅取材&ウラ話
さてきのうも引き続き、アース21の例会参加。
2日間の日程で1日目は会員企業その他による住宅見学が中心で
翌日は、テーマを大きく決めての研修が恒例です。
で、今回のテーマはタイトル通り。
国交省の指定する住宅瑕疵担保責任法人 日本住宅保証検査機構
通称JIOさんから講師を招いて、事例について学びました。

で、講演を聞いた後、
今度は、会員同士による活発な事例紹介、意見交換会。
JIOさんの事例はどうしても全国規模での事例紹介で、
外壁がモルタルで通気層もなく、
下地もきちんと施工されていない物件であるなど、
北海道の進化した家づくりの実際とは、相当に違いもあって
やや縁遠い内容であったのに対して、
会員同士の事例紹介では、ちょっと1枚の写真が出てきた途端に
「これは・・・」と即座に多数から発言が飛び出してくる。
活発と言うよりも、百家争鳴とでもいえるようなカオス状況(笑)。
とくに開口部周辺の防水対策については
たいへん活発なやり取り、実際的な発言が相次ぎました。



窓回りの通気層の確保の仕方、水処理は、
対応すべき建材の種類によっても千変万化していく実際が明瞭になって来ます。
軒の出が確保されなくなってきている状況の中で、
窓回りの防水は、施工にあたる事業者にとって、最大の問題。
とくに樹脂サッシ自体の劣化が原因と推定される事態も発表されていました。
その会社の手がけた建物ではなく、
築後20年以上の鉄骨造の住宅での雨漏り原因を調査してきて
考えられる可能性を丹念に潰してきた結果、
どう考えても、鉄骨駆体に接合されている樹脂サッシ隅角部の
劣化破断しか考えられないという状況が報告されていたもの。
さらに北海道で多い、ガルバリウム鋼板外壁と、
建て主さんのたっての希望で取り付けたサンルームとの取り合いで
事故が発生した原因調査も発表がありました。
この場合も、原因特定までに時間がかかり、
ようやく、外壁下端の排水穴とサンルーム接合部の処理という
結論に至るまで、大きな苦労があったそうです。
その論議の過程では、なぜデザイン的にも劣化せざるを得ない
サンルームを希望されるユーザーがいるのか、
その原因推定まで論議が及んで、その対策までが話し合われていました。
北国では雪かき作業が隣人同士のコミュニケーションの機会にもなっていて
その「ちょっとした会話の場所」として、
こうした空間装置が欲しくなる動機が解明共有され
それでは、もう少しデザイン的にも優れた装置化が対応として
工夫されても然るべきではという意見も出ていました。

まことに実際的、現場的な意見交換で
ふたたび三度、大いに勉強になった次第であります。
住まいと水のコントロール、永遠のテーマでありますね。




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2×4先進地・十勝で「かわいい」在来木造

2015年08月26日 05時47分51秒 | 住宅取材&ウラ話


きのうから北海道十勝にて、北海道の工務店グループ
「アース21」の十勝例会に出席しております。
おおむね、2カ月に一回のペースで道内各地に集まり
地域の家づくりを見学しあい、お互いの情報交流、地力アップを
図っていく趣旨で継続してきています。
全国規模でも、さまざまなこうした工務店による研鑽組織はありますが、
やはりレベルにおいて、大きく隔絶した活動を行っています。
現場力を持った工務店から、生々しい声を聞ける意味で
わたしの諸活動においても、中核的な情報交流の場になっております。
地域の工務店さんばかりでなく、
さまざまな職方の専門家のみなさん、またメーカーさんなど、
幅広く情報を交換できるのは、まことに稀有。

北海道十勝は、2×4工法が圧倒的に強い土地柄。
地元に根ざした工務店と設計事務所のみなさんが、切磋琢磨してきた
メインカレントの動きがあります。
日本の2×4工法は、最初の段階で「市場占有」的な大メーカーが
初動段階で、技術的な十分な深まりのない中で一気に大量に
市場投入された。
ところが、それらが技術的な困難に直面し、
性能的な欠陥をさらけ出したりしていた。
そういうなかで、北海道十勝では地道に、年に2棟3棟といった
少数のフロンティア的な住宅が建てられ、
それを地域の工務店・設計事務所が徹底的に検証し、
欠点について大いに忌憚のない論議を繰り広げてきていた。
そういった市場導入段階での、技術的試行錯誤が、
建築技術のベースを構築し、揺るぎない工法の確立につながり、
いまや、地域の木造建築で圧倒的な主流になっている。
このことは、地域のものづくりのひとつのプライドと言えるでしょう。



しかしまた同時に、こうした2×4工法の進化拡大と歩を合わせて
在来工法の技術革新も、少数のみなさんによって追求されてきた。
写真の住宅は、十勝で活躍する水野建設さんの最新住宅。
床面積の小さな住宅ですが、
熱損失計数は、Q値で1を切っている建物。
しかも木材は無垢であったり、集成であったりするけれど、
ほぼ地元十勝産の「カラマツ」が使われている。
構造も、野太い5寸の大黒柱が2本、力強く立ち上がり、
屋根にも登り梁ががっしりとした質感を見せている。
2×4工法とはまた、ひと味違う空間の美しさを感じさせてくれます。
シンプルで3色トーンで「かわいらしく」デザインされた外観。
破風端部がシャープにカットされていて、
軽快感がいっそう際だっている。
また、玄関周りの小屋根と雨樋もまことにバランスがいい。
薪ストーブの煙突もアクセントとして秀逸。
十勝で、在来工法も頑張っているなと、楽しい気分になりました。


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