ドアの向こう

日々のメモ書き 

あうんの呼吸

2005-11-15 | 犬のブロンコ・ダン
 いつも上着は自前、ツヤのある黒い天鵞絨だ。真冬でもこれ以上着ない。寒がりだけど窮屈なセーターは格好わるい。ビロードが誇らしい。
 散歩に出ると仲間が親しげに近づいてくる。それでも貴公子然として、愛想がない。脇目もふらず大まじめであるく。性分は曲げられない。 by rugby 

         -☆-

 散歩は綱を着ける。鵜飼いのように、引き綱をとおして気持ちが伝わる。微妙な綱の張りぐあいで、いらいらも、せかせかもわかるようだ。こうなると犬まで落ち着かない。うきうきを届けよう。
 反対に、犬のきもちも綱の調子で理解できる。少し疲れただとか、気乗りしないとか。
 しっかり結ばれた、これぞ本当の「きづな」である。

 犬の目線で低い位置に気をくばる。白内障の彼のために、ぼーっと行くようでも、車をよけ、マンホールの穴に細い足が入らぬかなど考えている。 突如、犬は躯を斜めにして首に力をいれた。
「こっち、こっち」と言っている。 犬の用事に付き合わされた。 

         -☆-

 グリーンを見ながら歩いた。
 あざやかな黄色いハートの連なりが、まるで万国旗のように風に吹かれ、柿や梅の木に絡みつき、フェンスをかけあがる。生け垣のてっぺんでも、貝塚いぶきの上にもぐるぐるとできた冠。
 零余子の蔓である。
 今頃いくらでも見つけられた。赤味がかった茶、インディアンレッド。陽が透けるベージュ、
山吹いろ、レモンイエローが惹きつける。

 立ち止まると、今度は犬が付き合っている。黙ってこちらを見上げている。蔓の行方を飽かず眺めた。そのうち飽きて「クゥーン」と一声かけてくる。 「もう、帰ろう」ということだ。

 人と犬、歩きながら無言で話す。ハートとハートをロープでつなぎ、零余子のように心を通わせる。「あ」「うん」で、いつでもそろう。 今日の会話を教えてあげる
 「そっちじゃない」 「止まれ」 「ゆっくり」 「だめ!」 「かえりたい」 だよ。

 このあいだ 「筋肉もしっかりしてます」 と獣医にほめられた。それで最近げんきになった。まだまだ歩ける。 静かな住宅街で、アスファルトをひっかくような爪の音だけ聞こえる。 
 シャカ シャカ、シャと軽快なリズムが どうぞ、いつまでも続きますように  by kawazu
コメント (2)
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