映画「アメリカン・パスタイム」続きです。
冒頭写真はノリ・モリタ。(セス・サカイ)
収容所内の対決で「じゃすたりーるびっと」とやっていたおやじの
若き日のお姿です。
彼の情報は英語でもあまり見つからなかったのですが、
この写真によると軍籍にあったときには伍長で、
1950年代にNYの部隊にいたこと、ハワイ出身で、この写真は
上官に送られたものであることがわかります。
「ユア・パイナップル・ソルジャー」
という署名が、上官との親密さを彷彿とさせます。
この役名「モリタ」はパット”ノリユキ”・モリタの名前をデディケートしています。
(カラテキッズのあの人ですね)
モリタはこの映画製作の直前に亡くなりました。
彼は2007年5月、つまりこの映画の日本公開の2日前に死去しています。
その遺体は「日本式に」火葬されたということです。
さて、ストーリーに戻りましょう。
日系人社会ではいくつもの野球リーグがありました。
収容所の中ですらチームだらけ、というのがマンガになっていたくらいです。
その理由の片鱗がこの映画では父親カズが息子に向かって
このように語られます。
「わたしは小さい頃アメリカにやってきた。
英語が話せなくて近所の子に笑われたよ。
ある日野球を知った。
そして上達した。誰もが認めるほどにね。
するとその子たちはバカにしなくなった」
日系442連隊の訓練の様子は、逐一全米に報道されていました。
日系部隊の設立そのものが世界に、特に日本に向けて
「我々は人種を差別していない」
と弁明する為のものだったのですから、当然かもしれません。
「祖国アメリカとその理想を守る為に」
「民主主義と平和を守る為に」
そんな言葉が彼らに対して捧げられ、アナウンサーは
「彼らの健闘を祈りましょう」
と締めくくるのが常でした。
出征前の彼らの様子を、父母たちは収容所の映画館で観ました。
ライルとケイティは人目を忍んで逢い続けていました。
ライルは彼女と外で会う為、奨学金制度を利用して
外部の大学に行くことを計画しました。
ところがなぜか父のノムラはいい顔をしません。
ライルの本当の目的を知っているからです。
奨学金そのものにも反対し、
「みんなの噂になってる。白人は駄目だ!」
と厳しく言い渡すのでした。
いつもの「ジョーの店」に買い物に来たノムラ親子。
収容所の手作りのギフトをジョーに渡すと、
気のいい彼は
「サンキュー、カズ!」
と嬉しそうに受け取っています。
外に出ることを反対され、一人で拗ねていたライルですが、
なんと床屋のオヤジ、エドと相棒に襲われ、負傷します。
床屋のオヤジがどうしてここまで日本人を憎むのかは
説明がされないのでわからないのですが、この
「何の意味もなく」というあたりがリアルです。
差別心や敵愾心に根本的な理由などありはしません。
差別するものは最初に差別心ありきだからです。
ましてやこの時代、日本とは戦争していたのですから、
このような人間はそれこそいくらでもいたのでしょう。
442部隊がヨーロッパ戦線に投入されました。
山中に取り残されたテキサス大隊211名を、その4倍、
800人の死傷者を出して救出したという知らせは
すぐに全米に報じられました。
収容所には、戦死した442部隊の兵士たちの名が掲げられています。
それを苦渋の面持ちで眺める看守ノリス。
ライルとビリーの勝負を見ていたノリスには、
ビリーがライルの球を打てずにボールだとごまかしたのも
分かっていたのだと思われます。
ノリスはビリーに向かって
「彼らは皆トパーズ出身だ」
といいますが、ビリーは何も答えません。
そして、そのトパーズから442部隊に志願したレーンが
ある日、床屋のおっさんの床屋に現れます。
「トパーズに帰る前にさっぱりしたいから切ってくれ」
無視を決め込んでいたおっさんと、以前一緒にレーンを襲った
仲間の男は、軍服姿にたじろぎながらも、
「日本人はお断りだ」
そこに図ったように迎えにやってくるノリス。
ノリスはコーポラル、伍長ですから、負傷して中尉になった
レーンは階級にして11階級上官です。
ビリーの軍曹と比べても10階級、軍隊的には雲の上の人。
ノリス伍長は「ルテナン・ノムラ」と呼びかけ、
サー付けで「お迎えにきました」
憮然とした様子の彼らを尻目に答礼。
「At ease.」(休め)
「Welcome back, Sir.」
絶対これ、おっさんに聞かせるため言っただろノリス伍長(笑)
収容所の門をくぐるときも門番は車に最敬礼です。
生きて無事に帰ってきた息子と彼を抱擁する母、
二人をもの思わしげに眺めるノリス伍長。(伏線)
ノムラ中尉は左足甲から先を義足にする負傷をしていました。
床屋のおっさんの告げ口でライルと逢っていることが
父親にばれ、収容所行きを禁じられたばかりでなく
軟禁状態のケイティ。
一人で街を出ることを決意したとライルに言います。
ライルを見つけて近づき、レーンの様子を聞くノリス伍長。
「彼はたいした奴だ(He's a hell of a guy.)」
「シルバースター勲章のこととかじゃないぜ。
俺が彼を迎えにいった日のことだけど、
床屋であったことを誰にも言ってないみたいなんだ」
「床屋って何だ?」
「君にも言ってないのか」
ノリスに教えてもらって、自分をあの日殴った男が、
兄のレーンを辱めた男であり、今度収容所チームが
試合をする相手チームの選手であることをライルは知ります。
その頃ビリーの家。
ビリーが、デラウェア州立大学に合格し独り立ちしたいという娘に
「うちを出るな、ジャップとも逢うな」
と言い放ったことからケイティはキレて、
「兄さんを殺したのは収容所にいる人の誰でもないわ。
兄さんを殺したのはパパよ。
自分のようにさせようと嫌がる兄さんに野球をさせ、
兄さんはそれが厭で、パパが嫌いで海軍に入ったの!
そして殺された。
パパが兄さんを殺したの!」
お父さんショックで泣いてます(T_T)
そして収容所の野球チームと、彼の属するマイナーリーグ、
ビーズの親善試合が行われることになりました。
どうなるお父さん?
最終回に続く。