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バーキン片手に靖國神社

台湾新幹線の旅「台北~台南」

2013-01-11 | お出かけ

去年もお正月休みは台湾に来ました。
台北と台中に半々ずつ、台中は日月潭の「ラ・ルー」というホテルで、
信じられないほど快適なサービスと洗練されたお料理を楽しんだものです。

台北から台中までは国情をわからなかったこともあり車をチャーターしましたが、
その後いろんな資料を見ると、台湾は電車の移動が非常に快適であり、
日本式の鉄道システムが行き渡っているのでほとんど日本と同じように
国内を移動できるということもわかってきました。

と言うこともあって今回は台南まで新幹線に乗る、というのを目的の一つにしました。

去年の夏ごろ、中国で新幹線が脱線し、たくさんの乗客が亡くなる事故がありました。
その技術を一部JR東日本に売ってもらいながら、一旦出来上がると
「これは中国の独自技術であるからよその国に売る。なんなら日本にも売ってやる」
と豪語し、拙速で無茶苦茶な運用をして人災ともいえる事故を起こしたこと。
世界が見守る中、車両内に遺体があるのに車体をクレーンで潰し、埋め始めたこと。
事故当初、まわりの住民が現場にハイエナのように押しかけ金属片を盗んだこと。

全てがあの国の民度の低さを表す、実に胸の悪くなるような事故であったわけですが、
世界中が眉を顰める中、台湾は早々に世界に向けてこう表明しました。

「我が国の新幹線は日本製で運用も日本に協力を仰いでいるので安全である」

中国がもし「日本には何の協力もしてもらっていない」と開業前に強弁していなければ、
事故もまた日本のせい、と言い出しかねない国だけに、この時期の台湾の表明は
日本にとって実に「ありが台湾」な援護射撃となったような感がありました。

この暮れにも、台湾が日本からまた新幹線を購入するというニュースが流れましたね。
今この時期に日本にとっては大変ありがたいことです。

エリス中尉、海軍の特攻飛行機「桜花」を開発した技術者が新幹線を作った、
という記事を書いたこともあるように、新幹線に非常な思い入れがあります。
台湾で運用されている新幹線にも、ぜひ一度乗ってみたいと思っていました。
というわけで、台湾新幹線に乗ってまいりましたので、ご報告します。

 

旅は台北駅から始まります。
駅舎はご覧のように古めかしいものですが、
「駅舎内の飲食物販店を充実させ、利用客以外の人を呼ぼう」
というコンセプトのもと、中がすごいことになっていました。

日本ではこの傾向は久しく昔からあり、今やそれは高速道路のインターチェンジや、
道の駅の「モール化」に及んでいるほどです。
台湾も一歩遅れているとはいえこういう「日本化」にかけては熱心ですから、
ほどなくどこもこのようになっていくものと思われます。
台北の空港も去年から今年にかけて「大改装」が完成しつつありました。



駅舎内に到着。
ここは店舗以外は少し建物そのものが建ったころの古さが残っています。
しかし、アーケードのたたずまいはどう見ても日本。
札幌駅の地下がこんな感じだったような・・・いや、岡山だったかな。
とにかく外国の駅にいるという気が全くしません。

 

モールの中で異常に長い行列ができていたのは、なんと
「てつおじさんのチーズケーキ」の店。
なんでやねん。
「ビアードパパの店」やら「ステラおばさんのクッキー」もあるというのに、
なぜてつおじさんの店にだけこんな列ができるのか。
もしかしたら、最近テレビで紹介されたとかで一時的にブームなんでしょうか。

並んでいるのを見る→美味しいのかと思って並んでみる→さらに人が並ぶ

この構図は日本も台湾も全く同じ。
皆てつおじさんと日本語でロゴの入った紙袋を受け取り、
嬉しそうに「買えた買えた!」という感じで去っていきます。
本当にそれほどおいしいのかな。
ちょっと並んでみようかしら・・・って、その気になってどうする。



バーガーキングの宣伝。
実に高級感あふれるチキンのメニュー。

 

さらにレストラン街に行くとそこは全くの日本。
日本のお店が多数進出していて、表示も日本語。
ここではもんじゃ焼きも食べられます。



しかしながら、やはり異国の言葉ゆえ、このようなミスも散見されます。
や、とヤ、って間違いやすいですよね(たぶん)。
あと、「ー」じゃなくて、これハイフンを使ってないか?



無印良品は実にあちこちにありますが、ここは駅なので、
日本だと空港などにあるMUJI to GO(旅行グッズを扱う)が。



勿論ハンズもあります。
HANDS TOKYU ではなくHANDS TAILUNG。
台隆手創館。
日本のハンズと違うのは、出入り口に盗難防止用のゲートがあること。



ここに出店している各レストランシェフのかっこいい写真がいたるところに。
もしかしたら「料理の鉄人」のノリ?
こういう「職人ヒーロー化」という傾向も、日本の影響か。
それはいいんだけど、日本なら「腕組み」が定番のシェフのポーズ、
ここではなぜか「敬礼」です。
真ん中のシェフはカンフーポーズかな?

シェフたちの背後からまるで軍艦旗のような後光が差しているのに注目。



お店の写真そのものは撮影禁止らしく、「大戸屋」の前で
モールの係員に止められたので撮りませんでした。
「大戸屋」はメニューが日本とほぼ一緒。
入ってみたかったのですが、時間がないのと「日本と一緒なら意味なくね?」
という息子の冷静な一言で却下され、結局回転ずしで食べることになりました。
お店の人は「いらっしゃいませ~!」と日本語でご挨拶。
注文も板さんにはほぼ日本語で通じます。

 

あまりお腹がすいていなかったのでこの二皿とお汁だけいただきました。
サーモンとイカのいずれもあぶり焼きですが、
なぜかどちらにもアクセントのつもりか明太子が乗っていました。
まあ、これはこれでいいんですがね。

 

食事がすんで、いよいよ乗車です。

高鐵列車と言うのが台湾の新幹線。
左営とは新幹線の終着駅で、高雄の少し手前。
そのうち高雄にも伸ばす予定がありそうですが、現在の全距離は345キロメートル。
台北から左営迄のノンストップ便は1時間30分で行くそうです。
2007年に開業しましたが、当初2005年の開業予定が二年も遅れたわけは、
なんと韓国ゼネコン(もちろん現代)の手抜き工事が露見したためだとか。
だからあの国とかかわるなとあれほど(略)

正式名は「台湾高速鉄道」、だから略して台鉄。
新幹線という名称がすでに日本の新幹線を指す固有名詞なのか、ここでは使われません。
しかし、ホテルから台南の新幹線駅に行ったとき、ホテルの人も運転手さんも
「新幹線」と言っていたし、通じたということは、やはりみなそう呼んでいるようです。

このエスカレーターを降りていくと新幹線のプラットホーム。
地下鉄から出発するというのがなんだか日本人には不思議なものです。

 

月台というのはプラットホームのことで「ユエタイ」と読みます。
南に下る新幹線乗り場。
台北は新幹線始発駅なので、すべての車両は南下です。

しかしこうしてみると新幹線なのにまるで地下鉄みたいな狭いプラットホームですね。

 

全く日本の新幹線と同じ。
というか、日本が作った新幹線なので同じなのは当たりまえですね。
シートの色は独自の明るい色でなかなかおしゃれです。
外装もオレンジのラインで独自性を出していますが、
この明るさが南国の台湾に非常にふさわしいような気がしました。



三菱と多くの提携を結んでいるのでしょうか。
荷物棚にはこのように三菱の電化製品の宣伝がプリントされています。



途中の駅はすべて新幹線のために作られた新設駅ですから、広くてきれいです。
台南までは二時間。
社内の案内アナウンスの調子が日本のとそっくりでした。
電光掲示板の
「We will soon make a brief stop at~」というのも全く同じ。
息子が
「言ってる意味は分からないけど、日本と全く同じってわかる」とウケていました。

 

台南に到着。 



初めて台湾新幹線の「顔」を見ました。
日本の塗装より「アヒルの口」っぽさが強調されているような気が。

 

駅のコンコースと自動改札。
改札口の自動ドアは日本と違って、ドアのようにではなく、
扇のように開きます。



台南駅一階コンコース。
赤い看板は「エミネント」というスーツケースのお店。



左の画像の和服の男女がいる広告は、
大金=ダイキンエアコンの宣伝。
「用大金、省大金」、つまり
「ダイキンを使う ダイキンで省エネ」ってとこでしょうか。
どう見てもお正月のような恰好をしているので、
季節広告だと思いますが、それにしても大々的ですね。

ところで、この「台湾新幹線」に乗って、皆さまに
このことだけはお伝えしたい!という光景に遭遇しました。



台北駅で車両に乗ってからふと振り返ると、
そこに階段を全力で降りてくる一個小隊を認む。
これは、今や世界でもyoutubeで話題の「新幹線お掃除隊」台湾版!

日本のあのお掃除隊の手際よさと、仕事に対する姿勢の気持ちよさに、
いまや世界の人たちが称賛を捧げているのですが、こういういいところは
積極的に取り入れるのが台湾の人々の素晴らしさ。

帰りにもこのお掃除隊を見ましたが、台北駅は地下でプラットホームが狭いので、
彼らはきっちりと二列縦隊で道具を手に手に待機していて、それがまた
思わず微笑んでしまうくらい、見ていて心洗われる光景でした。
「日本がやっているんだから当然我々もやってるぞ!」という意気の表れ。
誰が何と言おうと、これは「日本発祥」だと胸を張りたい気分でした。

車体を買ってくれただけでなく、運用システムや、こういったメンテナンス、
さらにはお掃除隊の姿勢に見られるような「心」まで取り入れてくれている台湾。
馬英九勝利後、さらに大陸への傾倒が懸念される台湾と言う国ですが、
こういう部分を見る限り、たとえ今後どうなっていっても、
この国と日本とはいい関係でいられるのではないかと思えます。

台湾新幹線の旅、もう少しお付き合いください。