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台湾の「洗練」

2013-01-10 | お出かけ

大晦日、TAIPEI101の周りを歩いたとき、このあたりに
三越、阪急はじめデパートやモールが立ち並んでいるのに驚きましたが、
中でもできたばかりらしいこのショッピングモールは
その洗練度と言い充実度と言い、目を見張るばかり。



日本では見たことのないようなシャネルの大型店が一階にあり、
それこそ『この世におけるブランドものと呼ばれるもので無いものは無い』
というくらいの店揃えであった101からそう離れているわけでもないのに、
ここにもまたこれでもかとブランドショップが立ち並んでいます。

台湾の消費者だけではきっとこれだけの店は立ちいかないであろうと思うと、
やはり台湾人が眉をしかめながらも、大陸からの観光客を
受け入れているらしいことが窺い知れて同病相哀れむといった気持になります。

そんなモールですから、入っている飲食店も選りすぐりのものらしく、
ここでは「最高級」とされる日本料理店、「日式しゃぶしゃぶ」が最上階を占めています。

そして驚いたことに、ここに「ジョエル・ロビュション」が入っているのを発見。
六本木ヒルズにあるロビュションは、カウンター席が中心で、
座って食事をいただいていると、目の端にどこかで見た芸能人が座っているような
わりと派手な客層ですが、ランチなどは比較的気軽に食べられるので
久しぶりに会う友人などとの会合に利用したりしたものです。



最近はヒルズに用事で行くと、全粒粉のバケットとか、
ハムとエメンタールチーズを挟んだカスクートを買うくらいですが、
赤と黒のトレードマークのおなじみのロゴにここ台湾で再会した時は、
ついなじみに会えたような気がして、気が付いたら入っていました(笑)

 

予約なしの飛び込みですが、ひとつだけラッキーにも席が空いていました。
この日は大晦日で、年越しのディナー予約がたくさん入っていたようです。

我々のテーブルに付いた若いお洒落なボーイさんはとても英語が上手で、
オーダーもソツなくこなし、身振りも洗練されたナイスガイでした。
ただ事務的に注文を取るのではなく、ディナーというハレの時間を
楽しませてくれるような暖かい心づかいがいたるところに見られ、
そのおかげで楽しい夕食となりました。



六本木のロビュションで食べたことのある方にはおなじみ、
超ミニサイズの「先のとがったバケット」。
先っちょが固くて、刺さってしまうくらい固いが味わい深いパンです。
六本木はこれと丸いパンだけが食事の際に供されたと記憶しますが、
ここではそれだけでなく、ベーコンの入ったエピ(右)も、
ロールパンも、ブールも、クロワッサンもヨモギパンも食べ放題。
ついお食事までにパンを食べすぎてしまう危険すらあります。

ご覧のとおり、全てが超ミニサイズ。
見ているだけでもかわいいのですが、お味の方もなかなか。
バターもオリーブオイルも付いてこないのですが、
それもそのはず、美味しいので何もつけなくても食べられてしまう。

TOがこのクロワッサン(一番左のパン)を気に入って一人で全部食べ、
家族のブーイングを受けているところにボーイさんが来て、
「これ美味しいですよね。わたしもこれが一番好きです」

お代わりをするともう一回フルセットで持ってきてくれます。
おかげでバスケットにはたくさんのパンが残りましたが、
なんと「持って帰りますか?」と聞いてくれ、(これは日本ではありえない)
次の朝食べようと思って見たらちゃんとクロワッサンも入っていました。
ボーイさん、ありがとうございます。



上が泡。
なんとフォアグラ味の軽ーいムースです。
これは全員にコースの最初として出るいわば「つきだし」。
頼みもしないのに美味しくも無いもの出して、と、
居酒屋関係では評判の悪いこのシステムですが、
こんなつきだしならOKだわ。



わたしが頼んだサラダ・ニソワーズ。
このケーキのようなものがサラダです。
レタスは原形のまま丸く切り出して、形が崩れないようにしてありますが、
不思議なことに中まで味はしっかりと絡んでいます。
ニソワーズ(ニース風)ですから、ゆで卵、アリコベール(いんげん)サーモン、
みんなちゃんと入っていて、しかもキャビアの上に乗っている!

見た目はこぢんまりしていますが、この「ケーキ」をほぐすと結構な量でした。



TOの頼んだサーモンのタルタル。
なんと、ドライアイスの煙の立ち昇るお皿とともに。
最初は煙で本体が見えませんでした。
見た目でも楽しいお料理です。

しかも、どれを食べてもなんだか六本木よりおいしい気がするの。



わたしのメインディッシュ、炙ったスキャロップ。
mizukiさんのコメント以来「タウリン」という言葉を意識している今日この頃、
貝類を積極的に摂取しようとした結果、このメインディッシュ選択となりました。



息子が頼んだイベリコ・ハム。
ハーフサイズにしてもらいましたがそれでも結構な量でした。
トマトの刻んだものを乗せたトーストに乗せていただきます。
このハムはスペインに行ったときお土産に買いましたが、
その時に地元の友人に勧められた「最も美味しいイベリコ」くらい美味しいハムでした。

「美味しいよね」
「しかもこの味の洗練されていること」
「見た目も完璧だし」
「ロビュション自身が今来てるんじゃない?」

などと舌鼓を打ちながらお料理をいただいていましたが、
そのうちボーイさんが

「私たちのシェフは、グランシェフもパティシエ(パン作り含む)も、
二人とも日本人です」

と言ったので全く驚きました。
そうだったのか!道理で。
というのもなんだか身びいきな感想ですが、本当にそう思いました。

ミシュランガイドに載っているお店が世界一多い都市。
世界で最も美味しいものがどこでも食べられるのが東京です。
この台湾のロビュションが東京から「東洋人の舌がわかる」
シェフを連れてきた、と言うあたりが、実に賢明な選択であると思いました。

 

そして、お待ちかね!デザートです。
わたしの頼んだスフレ。
スフレは暖かくて軽くてまるで雪のように舌に乗せるととろけます。



息子の頼んだのはティラミス。
これはまあ、「普通」だったかもしれません。



TOの頼んだデザートが来ました。
持ってきた人は「先に写真をお撮り下さい」
「?」と思いつつ言われるままに写真を撮ると、

 

熱~いソースをチョコレートのドームにかけ始めました。
これがかかるとドームに切れ目が入り・・・

 

チョコレートがあっという間に割れて溶け出しました。

 

割れたドームから顔を出したアイスクリーム。
もう、これは芸術です。
勿論、お味もそのサプライズに負けず素晴らしいものでした。



これも六本木と同じようなお味のマカロン。

フランス料理で、「ロビュション」というブランドであるのに、シェフは日本人。
この状況は、その昔日本がここでいろんな文化技術を教えたことを思わせます。

台湾では女性の褒める言葉に「日本人みたいですね」というのがあるそうです。
これは、お洒落で洗練されている、という意味なのだそうですが、
町に溢れる日本そのものの文化を見ても、この褒め方を見ても、どうやら台湾の人々は
日本に対し、今も文明先進国に対する憧れを素直に持ってくれているらしいとわかります。

しかし、ここロビュションでも思いましたが、この台湾と言う生徒、もしかしたら
教えたことを飲み込み昇華しさらに発展させるセンスを持っているのではないでしょうか。

こと味に関してですが、どこで何を食べても、同じレベルのものは明らかにこちらの方が美味しい。
もしかしたら素材そのものが流通システムの複雑な日本とは違い産地と近いので、
その美味しさに繋がっているのかとも思って見ましたが、今いる台南のホテルでは、
ケーキやパンなど、技術がものをいう部門の食べ物も、どれも美味しくて洗練されています。

少なくとも、同レベルの日本の飲食店に比べると、コストパフォーマンスは上と感じるのです。

その昔、料理と言えば「フランス」であったころ、日本人が熱心にフランス料理を学びに行き、
そのうち有名な日本シェフやパティシエが登場し、本場のフランス料理が日本食の
軽さを取り入れて「ヌーベルキュイジーヌ」を作ったように、
文化は融合して次第にその形を・・・その原型すら変えていきます。

台湾でもっとも先端のこの地域で日本人をシェフとするこのフランス料理を味わい、
ここ台湾が日本を先生として学び取った味は、台湾式の洗練を加え、
日本のそれとは違う進化を遂げつつあるのではないか、とふと思いました。

というくらい、この夜のディナーは美味しかったってことです。