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ネイビーブルーに恋をして

バーキン片手に靖國神社

映画「ザ・ダイバー」Men of Honor 前編

2025-01-29 | 映画

「リトルロック」艦内の展示で、海軍御用達でもあった潜水スーツ、
Mk.5の存在とともに、アフリカ系の最初海軍潜水士の一人であり、
また、アフリカ系初のマスターダイバー資格保持者でもあった、

カール・マキシー・ブラシア上級曹長
MACPO Carl Maxie Brashear


を主人公として描いた映画、「Men of Honor」
邦題「ザ・ダイバー」のことを知り、取り上げることにしました。

ブラッシャー本人を演じるのがキューバ・グッディングJr.、
彼の上官として最初はその前に立ちはだかる潜水士にロバート・デ・ニーロ、
となれば、もうこれは当たりの予感しかありませんでしたが、
実際、文句なしによくできた映画だと思いました。
ブログのために観た映画としては、今までで最も楽しめたかもしれません。


1966年。
ニュースでは、地中海に衝突により墜落したB-52戦略爆撃機が、
海中に落下させた水素爆弾を海軍が回収することを告げていました。

この事故は、パロマレス米軍機墜落事故といい、
実際には4個の落下爆弾のうち2個は通常爆発(核爆発ではない)し、
2個が陸と海に一つづつ無事に?落下したのですが、
捜索の結果事故80日後に発見された爆弾が海軍によって回収されました。


作業中のサルベージ艦USS「ホイスト」甲板にアフリカ系の軍人がいます。



さて、ここはどこでしょうか。

各座席の前に一つづつアナログのミニテレビが取り付けられた、
なんとも贅沢な?この待合室に3人の海軍軍人がいました。



両脇をセーラー服の水兵に挟まれたこの男、ビリー・サンデー。
傷だらけでおまけに手錠をはめられています。
何かやらかして海軍裁判所に連れてこられたようです。

テレビ画面のアフリカ系軍人を見ると、男は、

"Ornery son of a bitch."
(癇癪持ちのクソ野郎が)

と毒づき、それを聞き咎めた水兵が、

「曹長(Chief)様は黒人好きらしいぞ」

と言ったとたん、いきなりキレて手錠で二人を殴り、

「チーフじゃない、マスターチーフと呼ばないと手首折るぞ」

「あんた降格されたじゃないか」


(手首を捻りあげながら)「どうでもいいわ!」

「うう・・すんません・・・マスターチーフ」

「よし」

なんという乱暴者。
しかし、サンデー軍曹は、画面を凝視しながら、

「カール・・・・」

とその名をつぶやきます。

マスターチーフ・ペティ・オフィサー(MACP)は、
等級E-9の下士官、最先任(最上級)上等兵曹のことです。

なぜ彼は階級降格され、しかも裁判にかけられようとしているのでしょうか。



ここから遡ること23年、1943年の、ここはケンタッキー。

つなぎのジーンズと、靴を履いたままの格好で池に飛び込み、
水底に沈んだ車を潜って遊ぶ、14歳の黒人少年がいました。

なぜ着のみ着のままで泳ぐのかは謎ですが、とにかくこれが
のちの海軍ダイバー、カール・ブラシアの少年時代です。


黒人の人権など全くなかったこの時代、彼の父もまた、
小作人として苦しい生活をしていました。



手伝うよ、という息子に、

「俺のようになるな」

という父親。


学校に通いながら父の手伝いをして成長したカールですが、
彼にはこの生活から抜け出すための一つの望みがありました。

海軍に入ることです。



カールも海軍入隊を果たし、故郷を離れる日が来ました。



休みになれば帰るというカールに、父は、
二度と戻ってくるな、そして戦えと声をかけます。
そして唯一の財産ともいうべきラジオを手渡しました。



当時入隊した黒人の配置は例外なく厨房か雑用係です。
カールの最初の任務もUSS「ホイスト」のコックでした。



南太平洋に展開していた「ホイスト」は、
ある日暑さしのぎに乗組員に遊泳許可を出していました。

戦争も終わったからこそできることですが、
ここにはサメはいないのかしら。


黒人兵も泳がせてもらえますが、週一度火曜のみとされていました。
白人兵たちがはしゃいでいるのを見ていたカール、やおらズボンを脱ぎ出し、
何人かの制止を振り切って甲板から海に飛び込みます。



それを見ていた「ハドソン」艦長プルマンと、副長のハンクス。
すぐに彼を止めるために人をやりますが、



カールは競泳に持ち込み、相手を負かしてしまいました。


黒人水兵や下士官はこっそり快哉を叫び、



白人下士官たちはその騒ぎを不快げに見ています。
その中に、ビリー・サンデー上級曹長がいました。



その晩、ブリッグス(艦内牢屋)に入れられたブラシアのもとに
なんとプルマン艦長がやってくるではないですか。
そして、



「船から落ちた水兵を救助する仕事があるから、貴様、それになれ」

泳ぎが抜群に上手く、肝っ玉が座っている、と艦長は見込んだのです。
それは同時に上等兵への昇進を意味していました。



次の日、事故が起こります。
「ハドソン」に郵便物を運んできたヘリ(シコルスキーのHSS-1?)が、
甲板に荷下ろし中、海に墜落したのです。


海上で炎を噴くヘリ。
すぐさま艦長からダイバーに救難指令がかかりました。


ダイバー投入後、引き揚げが始まりました。
はて、ヘリ墜落現場までどうやって往復したのかな。



ダイバー目線。
以前当ブログでご紹介したマーク5のヘルメットという設定ですが、
映画で使われたのは別のメーカーのそれらしく作ったものらしいです。


パイロットを揚収したのはビリー・サンデー上級曹長でした。

軍医がパイロットの生死を確かめ首を横に振ると、
サンデーはあと数分早かったら助かったのに、と吠えます。



しかも、この日の「ハドソン」に、続いて事故が起こってしまいます。
副機長の救出のために別のダイバーを投入しようとしていたところ、
ワイヤが切れ、ダイバーがスーツを付けたまま海に転落したのです。



そこで、減圧室に向かおうとしていたサンデーが戻ってきて、
今すぐ行けば、窒素が溜まる前に15分未満の間隔を空けて潜る
「バウンス・ダイブ」と同条件だから助けに行く、と服を脱ぎ出します。

ウェイトをつけて素潜りする気です。

バウンスダイブは250m以浅の水深で行われることが条件ですが、
正しく行ったところで潜水病は避けられないほど危険な方法です。


しかもここは深すぎる、と言っていますね。

ハンクス副長が危険を理由にそれに反対しますが、
この、最後まで主人公二人の「敵」になる悪役キャラ、
こんな事態に「最後にサーをつけろ」などと言い放つくらいですから
おそらく優秀だが鼻持ちならないエリート意識まみれのパワハラ気質。

ちなみに「サー」と呼ばれたがる?のは士官だけで、
CPOクラスはこう呼ばれることを何よりも嫌います。



副長の阻止を振り切って海に飛び込むサンデーを、
驚きと称賛の眼差しで見つめるブラシア。



サンデーの働きにより、同僚潜水士の命は助かりましたが、
その代償はあまりにも大きなものでした。

彼は完治不能の空気塞栓症(動脈中に生じた気泡によって
各器官への血液供給が妨げられる状態)つまり潜水病で、
もう二度と現場復帰はできないと医師から宣告されてしまいます。



病院内で荒れて大暴れするサンデー。

なお被害者たち

この時働いた乱暴狼藉その他色々の罪で、
サンデー上級曹長は3ヶ月停職ならびに教官任務に戻す措置を受けました。


当然だろ、みたいな顔をしてすましているハンクス副長。
イケメンの無駄遣い(デビッド・コンラッド)。



言い渡されたサンデーがここで敬礼するんだけど、
この敬礼・・どう見ても無茶苦茶陸軍式なんですがこれは。

デニーロが偉すぎて誰も注意できなかったか。


そうそう、このプルマン艦長の敬礼、これがまっこと正しく海軍式。

しかし残念ながら、基本海軍(海兵隊)では無帽の敬礼はしません。
陸軍と空軍は無帽でも敬礼をするため、海軍軍人は、
彼らと一緒の時には無礼にならぬよう相手に合わせるそうです。

それからそもそも、ここ、MPもいるちゃんとした軍事法廷で、
艦長が裁判長みたいに判決言い渡しして槌まで打ってるんですが、
これって艦長じゃなくて法務官の仕事よね。



裁判を傍聴していたブラシアは、皆が退出後、いきなり艦長に、
ダイバーになりたいから推薦してくれと直球で頼みます。

「三日前にキッチンから掌帆員にしたばかりだぞ」

「借りは返します。サー」


黒人は養成所に受け入れてもらえないだろう、無駄になると思うがな、
といいながらも、プルマン大佐はそれを引き受けます。

ケンタッキーの徴兵官もそうですが、入った後でどんな目に遭おうと、
入れる者にとって知ったこっちゃないからですねわかります。


嘆願書を書きまくってようやく潜水学校入学許可が出た時には、
すでに2年が経過していたってんだからびっくりだ。

そこで彼はニュージャージにやってきたのですが、ここからがもう大変。
サンデーMCPOが無視したせいで、門から中に入ることすらできません。



何時間か後通りがかって、田舎に帰れ!というサンデーに、

「私は海軍兵士です。
誇り高き海軍兵士は、ラバで畑を耕しません」


とさりげなく自分の出自を匂わせつつ断言するブラシア。

するとサンデーは、コーンパイプを持った自分の手をちらっと眺めます。
そこにはブラシアの父の掌にあったのと同じ、鋤を握ったタコの跡が・・・。

その後、上級曹長は彼に入門許可をぶっきらぼうに言い渡しました。


やっと門の中に入れたと思ったら、今度は先輩水兵たちから、
噛みタバコを真っ白いズボンに吐きかけられるという歓迎を受けます。



白人ばかりの潜水学校生はブラシアに敵意を顕にしてきました。

ブラシアの入舎をサンデー曹長が皆に通告すると、
一人が嫌悪感を隠さず「黒人と一緒はごめんです」といい放ち、


最初に声をかけてくれた吃音症の青年、スノウヒル一人を残し、
全員がバラックをゾロゾロと出て行ってしまいました。

マスターチーフは白人水兵のこの行動に対し何も注意しません。


このスノウヒル一人が、彼に対し「普通に」接してくれ、
しかも、宿舎を出ていく他の連中にも付き合いませんでした。
不思議に思ったブラシアが、

「君は行かないのか?」

と聞くと、

「いや。俺はウィスコンシンから来た」

「・・・?」



しかも、ブラシアのベッドの上部にはいきなりこんな紙が貼られていました。

「溺れさせてやるぞ ニガー」

この貼り紙の嫌がらせは、カール・ブラシアが実際に受けたものです。


その夜、ブラシアはサンデーに叩き起こされ、リンチを受けます。
水責めにしながらサンデーは、ヘイトをぶつけ、ついでに

「貴様ら黒人が安い賃金でも平気で働くせいで、
俺の親父は農場を追い出されて酒浸りで死んだ!」

と個人的な恨みを吐き散らかすのでした。
これが彼が黒人を毛嫌いする理由の一つだったのです。
しかしそんなことを言われてもだな。

ただ言えるのは、おそらく彼もまた、そんな暮らしから抜け出すために
海軍に入り、努力と才能でマスター・ダイバーにまで上り詰めたということ。



翌日、新兵は潜水訓練を見学することになりました。


胸当ての「マーク5」が強調されていますが、これは
この胸当ての部分だけが本物のマーク5が使われているからだそうです。


「”彼”は神のしもべだが、俺は神だ」

海軍のチーフという人種が自分を神だと思っている、というジョークは
当ブログでご紹介したことがありますが、こいつマジで言ってます。

「彼」とは、実在の人物で、エバンジェリストのビリー・サンデーという、
彼と同名のメジャーリーガーでかつKKKから献金を受けていた聖職者のこと。

サンデーという名前は、多分この黒人ヘイトで名高い人物から取られました。


この字幕では「特務曹長」となっていますが、特務曹長は准士官のことで、
正確にはサンデーはマスターチーフ「最上級上等兵曹」です。

アメリカ軍の階級を日本語で表すのは文字的には可能ですが、
口語では「マスターチーフ」というしかないので、これは間違いです。

さて、その神たるマスターチーフがターゲットにしたのは、
黒人に同情して一人バラックに残った、可哀想なスノウヒルでした。

身上書を調べた上でここにやってきたらしく、スノウヒルが
ウィスコンシン大学の水泳部のキャプテンで州大会に優勝したことや、
大学2年生で彼女を妊娠させて結婚したことまで皆の前で暴露し、
その後、錘を抱かせていきなり海に突き落とすという暴挙に及びました。

そして、彼がウェイトなしで浮いてくると、
訓練の停止を(まだ訓練に入っていないのに)命じたのです。

ブラシアに同情したばっかりに、こんな目に・・・・(-人-)


さて、ともかくその後、陸上での訓練が始まりました。
そちらは順調ですが、中学までしか学校に行っていないブラシア、
筆記試験がどうにも苦手です。



座学の教官はテストを返しながら、

「次の試験に不合格だったら退学になるぞ」

しかし、彼は同時に小さな声で、外で勉強することを勧めてきました。
周りの全てが敵ではないとブラシアが知った2度目の出来事でした。



そこで彼は週末の休暇に図書館に行き、そこで誰かに
一般教養科目を教えてもらおうとしました。

もちろん図書館ではそんなことはやっていないのですが、
彼はそこで司書として働きながら医学部に通っている女性、
ジョーに目をつけて、泣き落とし始め、あの手この手で頼み込み、
なんとか個人教授してもらう約束を取り付けることができたのです。



何日間かの特訓で、次の試験は76点という及第点を取りました。

試験を返しながら口の端でだけ微笑む教官。(いい人)
思わず安堵のため息をつくブラシアでした。



そして始まった実地訓練。
二人組で海底に沈んだ練習船の穴を塞いで引き上げるというものですが、
ブラシアの前のルーク&アイザート(どちらもいじめっ子)組が作業中、
練習船が海底を15メートル滑り落ちるというアクシデントが起きます。

直ちに浮上が命じられましたが、アイザートのホースが絡まって動けません。


救出に向かうため、マスターチーフは服を脱ぎだしますが、
ブラシアは潜水服をすでに着ている自分が行くと名乗り出ました。


アイザートを脱出させるためには、ホースを外して
ブラシアの持ってきたホースに付け替える作業を行いますが、
そのためには一旦送っている空気を止めなくてはなりません。

しかし作業中船が激しく動き出したため、恐怖に駆られたアイザートは、

「もうダイバーなんかやめるぅー!家に帰るぅー!」

とパニクり、怖くなったロークはバディを見捨てて逃げ出しました。



ブラシアはアイザートが意識を失う寸前に冷静にホースを繋ぐことに成功。
アイザートは息を取り戻し、ヘルメットの中でブラシアに微笑みました。


こちら、バディの必死の制止を振り切って一人浮上してきたローク。


マスターチーフは無言のまま心底軽蔑した顔でロークを睨みつけます。
これがブラシアだったら、瞬時にクビだったでしょう。


それどころか!

事故に際し、「命をかけてバディを救った」として、
叙勲されたのはブラシアではなく、逃げたそのロークだったのです。



そして「ダイバーなんかもう嫌だ」と叫んでいたアイザートは
その言葉通り、ロークの叙勲式の真っ最中に基地を出て行きます。


ロークが表彰されているのをわずかに侮蔑を浮かべて見ていた彼ですが、
ブラシアと目が合うと、彼にだけわかるように目で挨拶をしました。

それはブラシアだけにわかるアイザートからの感謝と共感でした。


それにしても、こんな表彰誰も得しないよね。
解散しても誰も彼に声かけないし、本人も全然嬉しくなさそう。



ある日カールは実家にかけた電話で父の死を知らされました。


波止場で泣き濡れる彼の前に現れたド派手な美女。

「グウェン・サンデーよ」

つまりあのビリー・サンデーの妻であると。

「それは残念です」(Sorry to hear that.)

それがいきなり彼女こんなことを言い出すじゃありませんか。

「彼はあなたを海軍から追い出すつもりよ。
このまま黙ってされるままになるつもり?
彼がその気ならあなたも何かするべきじゃない?」


本作でおそらく美女的彩りのために投入されたシャリーズ・セロン演じる
このサンデーの妻ですが、最後までその立ち位置がわかりません。

下士官の妻がなんだってこんな格好で夜ウロウロしてるのか。
潜水艦学校内での夫のパワハラの内容を知っているだけでなく、
会ったこともない黒人下士官の味方をするのか。



グウェンが夫のいる酒場にブラシアを伴って入っていくと、
ロークその他が色めき立ちますが、サンデー本人は余裕かましてきます。


かましついでに、愛用のコーンパイプの由来を話し始めます。
またか、みたいな顔をするグゥエン(笑)

曰く、
これはマッカーサー元帥の愛用していたもので、
レイテ湾では彼の下で戦った(はて、海軍なのに?)。
特攻隊が突撃した護衛空母「セント・ロー」に乗っていた彼は
機関室から水没した艦内を5階分泳いで抜け出し助かった。

そしてその時にマッカーサーの声が、

「サンデー、このちくしょうめ、4分間息なんて止められないだろう」

と聞こえたので、パイプを賭けるならやってみせると答えた。
機関室にいた6人も俺が助けた。

なんで「セント・ロー」でマッカーサーの声が聞こえた気がしたのか。
そもそも海軍軍人ならそこで聞こえる声はニミッツの方がよくないか?

と、これを見ている人のおそらく26%くらいの人が思うでしょうが、
おそらく監督は陸海軍の相剋についてはあまり関心のない人なのでしょう。



そして彼は勢いで店内に都合よく二つ吊られていた潜水マスクを使い、
息止め競争で俺に負けたら出ていけ、と勝負を強制します。



そして二人のヘルメットに水が注がれていくわけですが・・。



いや、あの、真剣な顔をしているところ申し訳ないんですが、
このヘルメットって、スーツの首部分に捩じ込んで固定するやつだよね?
下から水漏れるよね?こんな金魚鉢みたいに水溜まらないよね?
大体今どこからどうやって水注入してるの?


その時バーにジョーが入ってきました。
そういえばブラシア、ジョーを電話で呼び出してたんだね。

きっかけを作った張本人グウェンは見ていられずバーを脱出し、
ジョーもまた勝負を見届けず出て行きます。

おいおい、二人ともそこは最後まで見守ろう。



4分経つ前に勝負はつきました。
サンデーが鼻血を噴き出したため中止となったのです。



その時外ですごい音がしました。
なんと、グウェンが車を暴走させ、事故ったのです。



あっという間に回復して走り出てきたサンデーは妻を抱きしめ、

「帰ろう」

いやだからさっきから何やってんのこの二人。
ってか、この奥さん何がやりたかったの?



ジョーは、カールと一緒ではこれからもこんな思いをするかもしれないと
彼を拒否しますが、なぜか次の瞬間プロポーズを受け入れます。

なぜ危険なあなたなど見ていられないと言った直後、タクシー運転手に

「(追いかけてくる男が)結婚してくれるか知りたがってる」

と言われたくらいで考えを180度変えるのかよくわかりませんが、
まあまずはめでたしめでたしってことにしないと話が続かないのでしょう。

どちらにしても、この実話ベースの話に無理くり盛り込んだ女性
(特にシャリーズ・セロン)の描き方が雑で、表面的。
実に感興を削ぐというか、はっきり言って邪魔ですらあります。

大体、いつの間にブラシアとジョー、恋人同士になったんだよ。

デニーロ演じる架空のマスターチーフがあまりに無茶苦茶で凶暴なので、
そのバイオレンスな部分を緩和するために配した女性役かもしれないけど、
いずれにしても他にもっと時間を割くべきところがあったんじゃない?

と思いました。

続く。


令和7年度年初め映画タイトルギャラリー〜日米リクルート映画

2025-01-04 | 映画


たった今知ったばかりのニュースに驚かされたので、
本題とは離れますが、英語版の記事を挙げておきます。

USスチールCEO、売却阻止のバイデン氏の「恥ずべき」行動を激しく非難

USスチールの社長兼最高経営責任者(CEO)は金曜午後の声明で、
同社が日本企業の日本製鉄に買収されるのを阻止するという
バイデン大統領の決定は「恥ずべきこと」であり「腐敗している」と述べた。

「バイデン大統領の今日の行動は恥ずべき腐敗だ。
彼は組合員と疎遠な組合長に政治的報復を行い、
わが社の将来、労働者、そして国家の安全保障に損害を与えた」

とデビッド・バリット氏はソーシャルプラットフォームXに投稿し、大統領は
全米鉄鋼労働組合のデビッド・マッコール会長に恩義があると主張した。

「バイデン氏は、経済と国家安全保障の重要な同盟国である日本を侮辱し、
米国の競争力を危険にさらした。
北京の中国共産党指導者たちは小躍りしている。
そしてバイデン氏は、事実を知るために
我々と会うことさえ拒否しながら、これらすべてを行った」

と同氏は付け加えた。
この取引は対米外国投資委員会によって1年以上検討されており、
委員らは米国の鉄鋼業界に影響を及ぼす大規模な変化の
潜在的なリスクと利益を検討してきた。

バイデン氏は、国家安全保障上のリスクと国際競争力への打撃を
決定要因として挙げ、この合意を阻止すると発表した。

「米国の国益のために戦いを主導し続けるためには、
米国の鉄鋼生産能力の大部分を占める大手米国企業が必要だ」


とバイデン氏は述べた。 

「行政府の国家安全保障と貿易の専門家委員会が決定したように、この買収は
アメリカ最大の鉄鋼メーカーの一つを外国の支配下に置くことになり、
国家安全保障と重要なサプライチェーンにリスクをもたらすだろう。
だから、私はこの取引を阻止するために行動を起こしているのです。」

トランプ次期大統領も、労働団体からの強い支持を得て
同様の発言を称賛しながら、この合意に反対する姿勢を示している。

しかし、バリット氏は、この決定は鉄鋼労働産業における米国の将来を妨げ、
長年の進歩を後退させるだろうと述べた。
USスチールの従業員のグループもこの取引を支持している。

「我々の従業員と地域社会は、より良い待遇を受けるに値する。
アメリカにとって最善の条件を得る方法を知っており、
それを実現するために懸命に働く大統領が必要だった」

とバリット氏は書いた。 

「誤解しないでください。
この投資はUSスチール、当社の従業員、地域社会、
そして国家にとって素晴らしい未来を保証するものです。
私たちはバイデン大統領の政治的腐敗と戦うつもりです。」

なんと売却に反対していたのは政府であり、
企業側はそれを進めたがっていたのですね。知らんかった。
なおこの新聞記事で労働者たちが持っているプラカードには

「We want Nippon Steel's investment」

と書いてありました。


さて、本題に戻ります。

平成6年度の映画ログより、タイトルイラストを振り返る企画、
年を跨いで三日目となりました。

最終日は、日米双方の隊員勧誘を目的とした宣伝映画です。

■ 嵐を突っ切るジェット機

前編

この映画の存在については全く知らなかったのですが、
知人のKさんが航空自衛隊の基地を訪問し、そこで撮った写真の中に、
空自の協力で制作された昭和の映画のポスターがあったわけです。

自衛隊を描いた、あるいは自衛官が主人公である映画は、
昭和期には宣伝目的でそこそこ制作されていたようですが、
DVD化されている作品はあまりないため、ネットで検索しても
なかなかヒットしないので、この情報は大変ありがたかったです。

その中で現在なんらかの方法で視聴できる唯一の映画がこれでした。

空自のパイロットを主人公としたこの映画は、源田實が空幕長に就任し、
その肝入りでアクロバット飛行チーム、「ブルーインパルス」が
正式に発足した、まさにその翌年の1961年に公開されています。

時期的に見て、これはもう間違いなく、ブルーインパルス発足と同時に
広報を目的とした映画の企画が始まっていたものでしょう。

当時イカすヤングスターだったマイトガイこと小林旭を主人公に、
ブルーインパルスの宣伝とパイロットへの憧れを育てようとしたようです。

しかし、現代の視点でこれを見ると、色々と疑問を感じます。
まず、主人公演じる自衛官像について。

当時の若者が「イカす」と思うような人物像は、
例えば石原慎太郎が描き、弟の石原裕次郎が主人公を演じた
「太陽の季節」から派生した太陽族のように、裕福な家庭に育ち、無軌道で、

「健康な無知と無倫理の戦後派」
(太陽の季節の宣伝文句)

つまり、その時代のアンファン・テリブル=アウトローに属するような
「不良」であったとすれば、この主人公、榊は、
自衛隊で素行の悪さから叱責を受け、それが原因で左遷され、
私生活では車をかっ飛ばしてジャズをやり、何かというと暴力を振るう、
という不良ぶりを遺憾無く発揮する人物なのですが、
そもそもそんな人物が自衛官というのはどうなのか。


後半

そしてこの映画の失策その2は、
主人公とその兄が立ち向かう敵が「第三国人」だったことです。

戦後のドサクサに麻薬を売買して儲けていた第三国人、
劉にヤバい商売の片棒を担がされていた榊の兄(元海軍パイロット)。

兄の犯罪に気づいた榊は、劉を追っていた刑事が
沖縄に逃げようとする劉を捕まえるため、自衛隊に出動要請
したのを受けて、
最初はF-86で、それもダメならT-33に乗り換えて劉を追います。

そもそも、一介の警察官が自衛隊の出動を電話で要請できるなんて、
並行世界の日本かよとこの映画を見たおそらく全員が思うでしょう。

わたしは思うのですが、もし自衛隊がこの映画でジェット機を宣伝して、
自衛隊への関心を深め、あわよくば入隊者の増加につなげたいのなら、
まず、チンケな密売人との戦いではなく、自衛隊の出動要件である、
治安出動や災害派遣、警護出動を満たすアクシデントを据えるべきでした。

感想の最後に、

「よくこんな映画に自衛隊が協力を許したな」

と書いたのですが、それはあくまでも半世紀後の常識によるもので、
1950年台の自衛隊は今とは全く採用基準、そして構成人員、
その他もろもろが今とは全くちがっていたことを考えなくてはいけません。

今では考えられませんが、名前さえ書ければ入隊できた時代もあるのです。
盛場でウロウロしている若者に、「ニイちゃんいい身体してるね」
と声をかける自衛隊の勧誘員がいたというのも伝説などではありません。

有名な「昭和の自衛官」

映画はこの時代(ヤンキー出現期)より遥かに昔であり、
そういう意味では、自衛隊に入隊しようとする若者の層もピンキリで、
それこそキリの方にはとんでもないのも紛れていたはずです。

もしかしたら、こんな映画でも「アキラの兄ぃイカス!」とシビレて、
パイロットになってジェットぶっちぎっちゃる!
と自衛隊に入隊する人もちょっとくらいいたかもしれない。

アメリカで「トップガン」を上映した映画館に窓口を設置しておいたら、
そこから海軍への入隊を申し込んだ人がたくさんいたという話もあったし。

■ HERE COME THE WAVES
(ウェーブスがやってくる)


アメリカの戦争コメディ(戦争中にコメディを作ってしまうアメリカ)
ばかりを集めた直輸入版のCDに収録されていた映画です。

日本では公開されなかった作品なので、邦題は直訳しましたが、
もし公開されていたら、その時はどんなタイトルになっていたでしょうか。
想像してみます。

例1:「海軍の美人双子」

この作品の前にご紹介した陸軍WAC勧誘映画、

「Keep Your Powder Dry」(常に備えあり)

が、「陸軍の美人トリオ」になったことから類推してみました。

例2:「海軍女子がきた!」

〇〇女子、という言い方はちょっと今風ですがどうでしょう。
まあ、いずれにしても日本では「WAVES」という言葉は使わないでしょう。
何度かこのブログでもお話ししているように、海上自衛隊では
女性隊員のことを、語尾の印象が良くない「ウェーブス」ではなく、
「ウェーブ」と呼んでいるので、万が一この言葉を採用しても、

例3:「ウェーブがやってきた!」

になるはずです。

本作は英語字幕がなく、シノプシスも見つからず、
要するに翻訳の助けになるものが何もなかったので、
全ての理解を聞き取りで行いましたが、正直なところ、
一部どうしても聞き取れなかったセリフもあったりして苦労しました。

さて、「嵐を突っ切るジェット機」は、入隊希望者を増やすために
設定すべき「憧れられる主人公」「憧れられるシチュエーション」
をすっかり見誤ったとわたしは厳しく断罪しましたが、
戦時中のアメリカにおける女性軍人のリクルートを目的とした当映画は、
当時アイドル&カリスマ的人気があった歌手、ビング・クロスビーが
海軍に入隊してウェーブスと恋に落ちるという展開で、
海軍への憧れを実に軟派な方向から憧れを煽ってきています。

これはアメリカ人にとっては大変効果的だったと思われます。

日本と違ってアメリカの戦争映画は必ず男女の恋愛を取り上げますし、
軍公式のリクルート映画などでも、それは例外ではなく、
はっきりと「女の子にモテるよ」などという直接的な文言で
航空隊への参加を誘ってくるような作りとなっていました。

愛国心とか公徳心、公に殉じる覚悟とかはもちろん誰の建前にもありますが、
人間誰しも自分の人生を良く生きたいというのが古今東西本音にあります。

陸軍の「常に備えあり」にしても、この「ワックがやってきた」にしても、
そこでは軍隊での生活を女性のライフステージの一つとして提案し、
そこではちょっとワクワクした非日常な出来事が起こるかも?
それは素敵な男性との出会いかもしれないし、
一生付き合える仲間との出会いかもしれない、という具合です。

軍隊に参加することは、多少は厳しいこともありますが、
決して自分を殺したり、我慢をしたりすることはないんですよ、
それに、国のために働くのはこれだけ格好良くて尊敬されます、
と、まあ現在のリクルートとはあまり違いのない角度からのアプローチです。


本編のイラストは、白黒映画だったこともあって、
「陸軍の美人トリオ」と同じ、アメコミ風に仕上げてみました。

また今年も、皆様があまり観る機会のない、
このような日本未公開の作品も頑張って取り上げていきたいと思いますので、
どうかお付き合いください。




令和7年度 年初め映画タイトルギャラリー

2025-01-01 | 映画


皆さま、明けましておめでとうございます。
本年度も淡々と、主に海軍関係のことや見たものについて発信していきます。
よろしければどうかお付き合いください。

さて、年末に戦時中に制作された日米の国策映画を取り上げましたが、
そこで年が明けてしまったので、掲載順ではなく、
なんとなく絵面が正月向きの「聯合艦隊司令長官 山本五十六」
のタイトルイラストで新年をスタートしたいと思います。

■ 聯合艦隊司令長官 山本五十六

本作品は、元ページでも説明したように、
東宝映画が毎年終戦記念日と同時に公開する「8/15シリーズ」の一つです。

確かに、夏になると必ず戦争大作がリリースされていた時期がありましたが、
それでは東宝の8/15シリーズとは結局なんだったのかというと、

「日本のいちばん長い日」(1967) 監督:岡本喜八 
「連合艦隊指令長官 山本五十六」(1968) 監督:丸山誠治 
「日本海大海戦」(日露戦争)(1969) 監督:丸山誠治 
「激動の昭和史 軍閥」(1970) 監督:堀川弘通 
「激動の昭和史 沖縄決戦」(1971) 監督:岡本喜八 
「海軍特別年少兵」(1972) 監督:今井正

「聯合艦隊」(1981) 監督:松林宗恵
「零戦燃ゆ」(1984)監督:舛田利雄

毎年季節の風物詩的に夏にリリースされた作品は6作。

戦後懐古的に語られることの多かった戦争映画も、ある時期から
極端に左傾化していった朝日新聞を筆頭とする言論に叩かれるようになって、
反戦・自虐の思想に配慮するようになるのですが、このシリーズも
「激動の昭和史 軍閥」辺りでその傾向が見えてきて、
(内容は竹槍事件いう言論事件が中心)「沖縄決戦」は言わずもがな、
「海軍特別年少兵」で子供を戦争に駆り出した軍と政府への非難、と、
とにかく日本が悪うございました的な反戦反日一色になっていきます。

こういった反戦思想が悪いというのではありませんが、
誰にとってもこの手の映画は単純にエンタメとして「面白くない」し、
映像作品としての完成度も高いとは言えないものがほとんど。

事実、この3作品は、少なくとも「山本五十六」ほどヒットはしていません。

これで懲りたのか、東宝の戦争映画シリーズは一旦途切れたのですが、
1981年、戦争映画の原点に立ち返った作品「聯合艦隊」で息を吹き返します。

「聯合艦隊」の制作が決定した直後、製作補の高井英幸は、
資料を探しに立ち寄った本屋で偶然遭遇した当時の東宝社長松岡功に、

「過去の戦争映画で、真珠湾攻撃やミッドウェー海戦、
山本五十六の戦死などドラマチックなエピソードはすべて描かれてしまった。

だからといって、今回、それ以外の秘話や
裏面史を探し出そうなどと考えないように。
秘話は一部の観客しか興味を持たない。

既に描かれてきたエピソードが最もドラマチックなんです。
だからこそ映画の素材として早く取り上げられたんです。
それ以上のもの探してもないんです。
今回も、これまで描かれたエピソードを照れずに使って下さい」

と言われ、真珠湾攻撃から沖縄特攻までを盛り込んだ作品、
「聯合艦隊」を作り上げ、ヒットにつなげました。

ちなみに松岡社長はあの松岡修造のパパです。

「真珠湾」

本作タイトルの絵は、作中登場人物とそのモデルとなった
実在の軍人の写真を並べるということをしてみました。

実在人物を扱う映画として、多少なりとも雰囲気が似ていると、
観ていて非常に納得感があるものですが、
1日目の「真珠湾」で一番似ているのは草鹿龍之介の安部徹だと思います。

本文でも縷々述べたように、三船敏郎の山本五十六は、特別枠で、
「造形は似全く似ていないがこの俳優しか考えられない」で賞に決定。


本作は、山本五十六が起案した真珠湾攻撃から、
「海軍甲事件」によって戦死を遂げるまでが描かれますから、
真珠湾の次のステージはミッドウェー海戦となります。

この頃の戦争映画によく顔を出していた加山雄三が出演しています。

ついでに、東宝は8/15シリーズに遡り、

太平洋の鷲・日本聯合艦隊は斯く戦えり(1953)監督・本田猪四郎
ハワイ・ミッドウェイ大海空戦・太平洋の嵐(1960)監督:松林宗恵
太平洋の翼(1963)監督:松林宗恵

これら「太平洋シリーズ三部作」を制作しています。
このシリーズは、戦後空幕長になった源田實の「海軍航空隊始末記」を元に、
戦闘機部隊の戦いを描く戦争映画シリーズで、これらは間違いなく
当時子供アニメまで波及した「零戦ブーム」を受けています。

加山雄三はこの中の「太平洋の翼」で戦争ものに初出演し、その後、
「青島要塞爆撃命令」「戦場にながれる歌」、そして、
8/15シリーズには「海軍特別年少兵」を除いて前作出演を果たしました。

本作で加山雄三は、真珠湾攻撃で「赤城」攻撃隊長だった
「爆撃の神様」こと村田重治大佐、そしてミッドウェー海戦における
「飛龍」攻撃隊で「ヨークタウン」の艦橋に激突自爆した、
友永丈一少佐二人をモデルに創作された伊集院大尉を演じています。

「ガダルカナル」

舞台がガダルカナルに転じると、画面が急にカーキっぽくなり、
設定上陸軍軍人多めになってきます。

特にこの日の扉絵で描いた人々は瓜二つの生き写しとしか言いようのない
佐々木孝丸演じる今村均を除いては、誰も全く似ていませんが、


畑俊六陸軍大臣を演じた今福正雄と、



大本営報道部長だった平出英夫と加東大介

この二組は思わず膝を叩いてしまうほど似ていました。
但しわたくし、畑陸軍大臣が出ていた場面は全く思い出せません。

ガダルカナルでは、輸送をめぐる陸海軍の相剋や、
壮烈なネズミ輸送の現場、そして海軍が引き受けた
ヘンダーソン基地艦砲射撃などが描かれます。

「ブーゲンビル」

この映画を掲載するにあたって、最終回を「ブーゲンビル」としたのは
そこが山本五十六の終焉の地であったからですが、この最終回では、
聯合艦隊の残照というべき勝利となった南太平洋海戦が、詰まるところ
ガダルカナル陸軍の支援に帰結しなかった、という皮肉な史実が語られます。

そして全ての山本五十六を描いた映画のシーンと同じく、
本作も、輸送機の座席に軍刀を脚の間に保ったまま、
泰然として彼岸に向かう聯合艦隊司令長官の最後の姿が描かれます。

■ Uボート基地爆破作戦
THE DAY WILL DAWN


1942年、イギリス映画をご紹介しました。

邦題「Uボート基地爆破作戦」
本題「夜明けの日」、
アメリカ公開時タイトル「ジ・アヴェンジャーズ」


何も知らない人は、この三つのタイトルが
同じ映画のものであるとはまず思わないでしょう。

もちろん、どれが一番本作にふさわしいかというと、本題である
「The Day Will Dawn」
です。
日米のそれは、タイトルだけでなんとか客を呼ぼうという、
商業的な媚びが透けて見え、本質からは離れています。

このタイトルは、映画の最後で字幕により紹介されるチャーチルの演説、

”今、ナチスのくびきの下にひれ伏している12の有名な古代国家では、
あらゆる階級と信条の人民大衆が解放の時を待っている。
その時は必ず訪れ、その荘厳な鐘の音は、
夜が過ぎ、夜明けが来たことを告げるだろう。
(The night is past and that the dawn has come.)


から取られていることから、その評価は妥当と考えます。

当作品の舞台設定はノルウェー侵攻作戦を経て、
連合国のフランス侵攻に対し、ドイツ軍が統治に至ったノルウェーという、
映画作品としては大変レアな設定です。

イギリスからノルウェーのドイツ侵攻について取材するため、
誰でもいいや的に派遣された競馬記事専門のメトカーフという記者が、
ノルウェーで漁船で操業する父と娘に出会い、娘と愛し合ううち、
いつの間にか英国とナチスとの戦いに巻き込まれていきます。

何よりわたしが驚いたのが、残存しているフィルムからは、
彼がなぜかドイツ軍艦に拉致され、解放され、フランスに行って
シェルブールで英国の撤退作戦に参加する、
という一連のシーンがごっそり欠落していたということです。

なぜこんな重要なシーンがカットされていたのか全く理由がわかりませんが、
映画解説サイトではちゃんとこの部分にも言及しているので、
DVD化するときにフィルムが物理的に欠損していたのかもしれません。

見どころがあるとすれば、それは第二次世界大戦下のノルウェーという
特にハリウッドではまず取り上げられないシチュエーションであることと、
イギリスの名女優、デボラ・カーの美貌が拝めることくらいでしょうか。

メトカーフはドイツ軍艦に拉致された後、なぜかイギリス海軍諜報部に、
ノルウェーのUボート基地を探し出す作戦の民間人スパイとして
(全く本人の同意なしで)パラシュートで現地に放り込まれます。

彼の働きでイギリス軍はドイツ潜水艦基地を爆破するのに成功しますが、
その後、彼を待っていたのは、容赦ないドイツ軍の報復処刑でした。

作戦に協力したデボラ・カー演じるノルウェー娘や村人と共に、
彼が銃殺刑に処せられようとした寸前で、間一髪イギリス海軍がやってきます。


当作品は戦時中に制作されたイギリスのプロパガンダ映画ですので、
そもそも中立であるべきノルウェーを狙っていたのはドイツだけでなく、
英側だって戦略上侵攻しようとしていた(仏にかまけている間取られた)
という視点はごっそりと(このフィルムのように)抜け落ちています。

年末にお話ししたプロパガンダ映画の要件を紐解くまでもなく、
そこには当然「我が方イギリスの側の正義」しかないわけです。

いずれにしても「プロパガンダ映画に名作なし」の典型みたいな作品でした。


ところで蛇足ながら、この映画の前半の絵は、人間ドックの待ち時間を利用して
iPadで検査の合間を埋めるようにして仕上げたせいで、
これを見るとドックを行った病院と待ち時間の様子を思い出してしまいます。

実は音楽の演奏も同じで、ある箇所をさらっているときに考えたことが、
意識下でプリンティングされてしまい、そこにくると
そのプリンティングされた映像や出来事、イメージが、
何回演奏してもふっと浮かんでくる現象があるのですが、
絵を描くという作業にも同じようなことが起こるんだなあと実感しました。

ちなみに”プリンティング”される事象は、人の顔だったり、
ブログ制作で取り扱ったシーンだったり、もっと他愛のないことだったり。
自分では内容やプリンティングそのものをコントロールできません。

この現象、楽器をやる人ならおそらく皆わかってくれますよね。

続く。

令和6年度 歳忘れ映画タイトルギャラリー〜日米国策映画を考える

2024-12-29 | 映画


早いもので、令和6年ももう終わろうとしています。
今年も恒例の映画タイトルギャラリーをやります。

今日は、令和6年度に掲載した日米のプロパガンダ映画について。

■「愛機南へ飛ぶ」
2023年の年末に掲載した国策映画です。

この映画を制作したのは、その名も「映画配給社」という、
戦時国策映画を制作するために1942年に作られた御用映画会社でした。

政府は1942年2月にすべての娯楽映画の制作を禁止する
「映画統制令」を作ったため、既存の映画会社のスタッフは、
徴兵されるか、志願して戦争に行くか、あるいは
国内で国策映画を作るかのどれかしか道がなくなりました。

監督は、当時松竹に在籍していた早撮りのできる佐々木康が務め、
陸軍の全面協力によって当時国民的ヒットを果たしました。

娯楽映画がなくなって、他に観るものがなくみんなが観た、
という非常にわかりやすいヒットの理由があったとはいえ、
国家予算が費やされていることもあり、決して駄作ではありません。



国策映画の目的はまず戦意発揚と戦争遂行への理解を深めることですが、
本作の場合、これに「航空兵」「偵察」の増員という目的が加わります。

主人公の青年は、外国航路の船員だった父が客死したため、
自分は航空士官となることを目指すのですが、配属先は偵察。

従来映画に取り上げられやすい海軍の船乗りや戦闘機、
爆撃機乗りという配置と比べると比較的地味です。

しかし、この映画で取り上げることで、おそらく陸軍は、
地味だが重要な偵察任務の重要性とその魅力を伝え、
希望者を増やそうと計画したのだろうと思われます。

本作は当時の映画館の慣例に従い、単体ではなく、
東宝映画の「決戦の大空へ」と同時に上映されました。

松竹と東宝作品の二本立ては本来ならばあり得ない組み合わせですが、
それは当時の配給会社が「映画配給社」しか存在しなかったからです。

既存の映画制作会社は統廃合されたわけではなく、
「映画配給社」が企画したものを各社で個別に制作し、
それを一括して配給していたので、こういうことも起こり得たのでした。

映画配給社が陸海軍のバランスをとったのか、
「決戦」は海軍後援映画で、予科練の航空兵を描いた作品でした。

こちらも出演者に人気絶頂だった原節子、高田稔、
練習生に木村功というなかなか豪華な陣容となっており、
特筆すべきは、この映画からあの「若鷲の歌」が生まれたことでしょう。


映画に戻りますが、本作では主人公が陸軍予科士官学校に入るという設定で、
朝霞にあった陸軍予科士官学校の様子を見ることができます。

予科士官学校のあった場所は現在陸上自衛隊朝霞駐屯地になっています。

そして、埼玉県の所沢にあった、陸軍航空士官学校の訓練の様子、
現在航空自衛隊入間基地となった修武台の内部を見ることもでき、
歴史的に貴重な映像資料としても後世に伝えるべき作品です。

そして、この映画では、当時霧ヶ峰で訓練していた
女子航空員のグライダー滑走の貴重な映像を見ることができます。


前半が主人公の立志と錬成、そして陸軍士官学校卒業までで、
後半は日米開戦、主人公が台湾に出征するところから描かれます。

映画にはフィルムが欠損している部分が多々あり、それはほとんどが
主人公の母の働く航空機工場における「銃後の人々」の様子なので無問題。

映画のクライマックスで、主人公は偵察任務の際、
ガソリンの残量が少ないのを覚悟で任務を遂行し、無人島に不時着。
しかし爆撃部隊は彼らの偵察によって大戦果を挙げます。

生還した主人公は褒賞として(たぶん)帰郷を許され、
母親と二人水入らずの(最後になるかもしれない)旅行を終えて、
また南へと飛行機が飛ぶ(戦地に帰っていく)ところで映画は終わります。



この作品が宣伝映画としてなかなかよく出来ていると思うのは、
青少年、父母層、働く若い女性と、各層について満遍なく描写し、
全方向からの共感を得られやすくしてあるという点でしょう。

ただ生真面目で説教臭く、理想化されすぎた人々の描写など、
プロパガンダ映画ならではの致命傷はあるものの、
当時の映画人たちが、娯楽映画の制作を禁じられ、
軍の各種縛りという制限下における創作活動においても、
彼らの状況でプロとしてやり遂げた一つの仕事といった感じです。

【「若鷲の歌」と「索敵行」】


「愛機」の挿入歌「索敵行」がヒットしたと前回書きましたが、
そうは言っても、1年間のレコード売り上げは6万5千枚止まりでした。

これに対し、同時上映された「決戦の大空に」の挿入歌、
「若い血潮の予科練の」で有名な「若鷲の歌」
全く同じ時期に発売され、1年間の売り上げは23万3000と海軍圧勝でした。

「若鷲の歌」の作曲者、大作曲家古関裕而は、戦後、
土浦航空隊跡地である自衛隊武器学校に「若鷲の歌の碑」が建造された際、
その式典の席でこんなことを述べています。

「この歌に刺激され、発奮され、大空に国難に殉じようと
何万という青少年が予科練に志願したという話を聞き、
更に祖国のために身を捧げられたことを聞き、
いたく責任を感じ、只、英霊の冥福を祈るのみである

自分の優れた歌曲が多くの若者を戦地に追いやったと言うのでしょうか。

しかし、肝心の作詞を手がけた西条八十はというと、
戦争中従軍文士として大陸に渡り、日本文学報国会の会員として
まあ言うたら全面的に戦争協力を行なっていたわけですが、
戦後は歌謡界の重鎮としてさらなる創作活動を行い、
戦争中の活動については反省どころか特に言及もしていないようです。

古関裕而はきっと誠実で良心的な人物だったのでしょう。
しかし「死に追いやった責任を感じる」は、
芸術家としていうべきではなかったとわたしは思います。



■ 海兵隊魂とともに Salute to the Marines




意識したわけではありませんが、カラーの扉絵を描こうとして
カラー作品を選んだところ、日本の国策映画の次は、
アメリカの国策映画を紹介することになってしまいました。

主人公にウォレス・ビーリーという当時落ち目の俳優、
(しかも落ち目になった理由が因果応報自業自得としか言えない人格破綻者)
加えて、いわゆる出演者に有名どころが一人もいないという、
こちらはハリウッドにしては思いっきり低予算映画。

だらしなく太った海兵隊曹長という設定もさることながら、
いくら国策映画だからと言って、その主人公が日本人を何度も何度も
口汚くイエローモンキー、ジャップと罵る映画というのは、
プロパガンダとわかっていても決して愉快なものではありませんでした。

たとえわたしが日本人でなかったとしても、それは同じ。

「FBI vs ナチス」や「Uボート基地爆破作戦」における
ドイツ人&ドイツ軍の描き方が単純に不快なのと同じことです。

本作は、開戦直後からフィリピン陥落までの頃、つまり、
アメリカが日本相手に何かと苦戦していた頃に制作されたもので、
退役した海兵隊軍曹が悪の日本軍相手に戦いを挑み、
最終的には敗れて死んでいくというストーリーです。


【プロパガンダ映画とは】

戦時プロパガンダ映画というのは、国民の戦争協力を得るため、
特定の思想、世論、意識、行動へと誘導する意思のもとに制作されます。

かつてアメリカ合衆国に戦時中のみ存在した、
宣伝分析研究所(Institute for Propaganda Analysis)
の分析によると、プロパガンダの手法の一つに、

ネーム・コーリング(名指し=罵詈雑言)


というものがありますが、それは、個人または集団に対し、侮辱的、
卑下的なレッテルを貼り、攻撃対象をネガティブなイメージと結びつけ、
「恐怖に訴える論証」(Appeal to fear)を用いて、
観衆に恐怖、不安、疑念と先入観を植え付けることを目的とします。

「海兵隊に敬礼」(原題直訳)というこの作品の主人公は、
粗野で二言目には罵詈雑言を吐き散らし、隙あらば大ボラを吹いて
自分を大きく見せるような海兵隊曹長ですが、不思議なことに
酔って暴れて憲兵に収監されようが、不名誉除隊にもならず、
全ての狼藉は「微笑ましいエピソード」として大目に見られます。

しかも彼の周りには、美人の妻と父親に似ても似つかない娘を始めとして、
妻の所属する「平和同好会」のメンバーも、教会に集う隣人たちも、
全てが善良で、口汚く敵を罵る役目は、主人公ただ一人に任されています。

(しかも、彼が下士官なのに、妻の兄は士官であり、
娘は司令の姪としてイケメン士官二人を両天秤にかけているなど、
主人公の生息するコミュニティには階級的にもあり得ない事象が多々)

それに対比する意味で登場するのが、市民に溶け込んでいると思われた
日系のラジオ局オーナーと、ドイツ系の薬屋です。

彼らは日本軍の侵攻と同時に正体を表して武器を取って暴れ出し、
善良な隣人を傷つけ始めますが、このような描写や、
民間船に偽装して兵隊を密かに運んでいた日本軍の描写は、
ネーム・コーリングで言う、「恐怖や嫌悪を煽る目的」によるものです。

イギリスの政治家、アーサー・ポンソンピーによると、
戦争プロパガンダの10の主張とは以下のとおり。

1.我々は戦争をしたくはない
2.しかし敵側が一方的に戦争を望んだ
3.敵(の指導者)は悪魔のような人間だ
4.我々は領土や覇権のためではなく偉大な使命(大義)のために戦う
5.我々も誤って犠牲を出すことがあるが、敵はわざと残虐行為に及ぶ
6.敵は卑劣な兵器や戦略を用いている
7.我々の受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大(大本営発表)
8.芸術家や知識人も、正義の戦いを支持している
9.我々の大義は、神聖(崇高)なものである(聖戦論)
10.この正義に疑問を投げかける者は、裏切り者(売国奴、非国民)である

このうち、本作に見られるプロパガンダは赤字が顕著です。

そこであらためて、「愛機南へ飛ぶ」と日本の国策映画の傾向はというと、
敵を貶めたり悪魔化するような表現はあまり用いられず、
ただ戦いに臨む軍人を理想化、英雄化し、周りの人物の覚悟を美化し、
上の主張で言うと9番の聖戦論を拡大したものであると考えられます。



ストーリーは、主人公夫妻が死後に海兵隊から勲章を与えられ、
その叙勲式で娘がいきなり海兵隊軍曹になるところで終了します。

まあこれはなんだ、美人の女優さんに海兵隊の素敵な軍服を着せて、
あわよくば女子の入隊も見込めないかってことだったんだろうなあ。


最後に、本作を不快に耐えて取り上げて良かったと思ったことは、
なんと言っても、このシーンです。



1980年度作品「ファイナル・カウントダウン」で登場した「零戦」シーンが
実は1943年作品のこの映画から流用されていたと知った時の驚き。

おそらくこんなとんでもない事実に最初に気づいたのは、
世界広しと言えども、わたしだけではないかとすら思えました。

「ファイナル・カウントダウン」のスタッフは、
この映画のあまりに無名なことから、流用がバレないと思ってたんだろな。

ところがわたしのミスは、英語のある映画サイトで、この映画の日本機は
ヴィンディケーター Vought SB2U Vindicatorであると書いてあったのを
検証せず鵜呑みにして、本文でヴィンディケーター連呼したことです。

ただちにこれテキサンじゃね?と皆様に間違いをご指摘をいただきました。
うむ、確かにテキサンと言われて見れば、テキサンの形をしておるわ。

しかし、この間違いのおかげで、「ヴィンディケーター」が
当時のパイロットにめっっぽう評判が悪く、「バイブレーター」とか、
特に「ウィンド・インディケーター」(風向指示器)なんていう
誰がうまいこと言えと的なあだ名がついていたことを知ったので、
これは転んでもタダでは起きないってやつか?と自分を慰めています。


続く。


映画「Here Come The Waves」(WAVESがやってきた)2

2024-09-07 | 映画

第二次世界大戦時のアメリカのWAVES勧誘映画、
「Here Come The WAVES」、二日目です。


ジョン・キャボットを責任者、ウィンディをアシスタントにした
WAVES勧誘のためのコンサートの企画が進められていました。

そこにやってきたスージーは、嬉しさのあまり、ウィンディに
この計画のためにジョンを騙って嘆願書を書いたことを言ってしまい、
「ダグラス」を降ろされて不満だった彼は、彼女に腹を立てます。



しかも、スージーからローズマリーとジョンが接近していると聞かされ、
ローズマリーを好きだったウィンディは、
彼女にウソを言って、ジョンの印象を悪くさせようとします。

「彼は本当は艦に乗りたくなかったんだ。
なぜって海の上には女の子がいないからね」

「信じないわ」

「僕は本人から聞いたからね」




これを聞いて、ローズマリーは

「誰かが僕を嵌めて艦から追い出し、この任務に就かせたんだ」

と言うジョンの言葉をもう信じられなくなってしまいました。



そして二人は「ダグラス」を揃って降りることになりました。
昨日入隊したと思ったらもう下士官になっているのはさすが映画。



彼が指揮を執ってプロデュースした最初のショーは、
空母USS「トラバース・ベイ」のハンガーを使って行われました。

この「Traverse Bay」はもちろん架空の空母です。
ハンガーなので、画面の手前には航空機の翼が見えています。


観客は海軍軍人ばかりのはずなのに、今更勧誘色があからさま。


で、これが、この映画が後世の一部から「糾弾」される問題のシーンです。
ジョンとウィンディは顔を黒塗りにして黒人の郵便屋に扮し、

「Ac-Cen-Tchu-Ate the Positive」

という、日本では無名ですがアメリカでは何度もカバーされ、
スタンダードナンバーのようになっている曲を歌い踊ります。

タイトルは

「Accentuate the Positive」
(ポジティブを強調=ポジティブでいこう)?

Ac-Cent-Tchu-Ate The Positive - Bing Crosby & The Andrews Sisters (Lyrics in Description)

フレーズになんだか聞き覚えがある!と言う方もおられるかもしれません。
それくらいキャッチーなメロディです。

Clint Eastwood ~ Ac-cent-tchu-ate the positive

クリント・イーストウッドが歌っているバージョン。
決して上手くありませんが、クリント好きだから許す。というか(・∀・)イイ!!

内容を一言で言えば、


「何事も積極的に、どっちつかずになるな」

どっちつかずの人のことを「ミスター・イン・ビトウィーン」と言ってます。

ハロルド・アーレンとジョニー・マーサーという、
知っている人は誰でも知っているゴールデンコンビの曲だけあって、
1945年度のアカデミー優秀音楽賞を受賞しています。

(戦時中でもアメリカって普通にこういうことしてたんですね。余裕の違い)

ただ、この映画のシーンについては、当時の流行りに乗って
顔を黒塗りしてしまったことが祟って、近年では大変不評です。


「1940年台だから許された」

という感想もありますが、それをいうなら日本では、1980年台にも関わらず
顔を黒塗りにした「シャネルズ」というバンドがあってだな・・・。



ジョンは自分の「潔白」(好きで『ダグラス』を降りたのではないこと)
を証明するために、自分のサインが(スージーによって)偽造された書類を
ローズマリーに見せて誤解を解こうとしていました。

スージーは、
彼がローズマリーに見せる前に書類を奪取しようとします。
姉が見れば、筆跡で書類の偽造をしたのが自分だとバレるからです。

ウィンディに唆された奥の手として、彼と一緒に甲板から海に飛び込み、
どさくさに紛れて書類を奪うつもりをしていたスージー。


ローズマリーを待っていたジョンに密着するためキスをお願いしたところ、
流れとはいえ、あっさり応じてくれるではありませんか。

(すかさず『深い意味のないただのキスだよ』と念を押すズルい男ジョン)

熱烈なファンだった彼女は、隙を見て書類を奪うのに成功しますが、
憧れのアイドルにキスされて一瞬気を失い、



ジョンが去ったあと、海に落下してしまいました。

「Man Over Board ! (人が落ちた)」

さすがは海軍、瞬時にあちこちからMOBの声がかかります。
もし本当に空母の甲板から落ちていたら、もっと大事になると思うけど。

近くにいたウィンディがMOBに応じ、救助に飛び込んでびっくり。

「スージー!何してんだこんなところで」

ジョンから体を張って奪った書類は、海に沈んでいきました。



書類がスージーに奪われたことに気づかないジョンは、
ローズマリーに見せようとしますが、

「あれ・・・?誰かに盗られたかのな」

「・・・もういいわよ」


ここは海軍航空基地管制塔。
WAVES勧誘映画ですから、たぶん本物です。


ローズマリーは管制官としてここに配置されていました。
有線によるアナログな通信や、管制塔から発光信号を送るなど、
この頃のシステムでの管制塔の様子が興味深いです。

中でも、(おそらく発進する)航空機への通信の中に、

「Anchor away」

と聞こえるのですが、海軍では航空機に対してもこれを言うんですね。

今現在でもそうなんでしょうか。



任務があるからショーには参加しない、と友人のルースにいうローズマリー。
その理由は・・・明らかです。



そこに空気読まないことでは天性のスージーがやってきて、

「ジョニーが歌を皆わたしに歌わせてくれるって!」

暗い顔をいっそう曇らせるローズマリー。
しかしルースの奨めでショーが行われるニューヨークに行くことにします。



楽屋でスージーはたまたまローズマリーと同じ髪のカツラを見つけ、
冗談半分で被ってみました。



茶色い髪のスージーに驚いたウィンディは、
またまたとんでもないことを思い付きます。



ローズマリーのフリをして、ジョンを失望させる作戦発動。
飲み物をローズマリー(と思っているが実はスージー)に勧める彼に、

「ここだけの話、ジンジャエールなんかつまらないわ」

びっくりしているジョンの前でボトル一気飲み。
(中身はウィンディが用意したお茶)

思いっきりぷはー!とやってから、

「もう一杯(another nip)やってもいい?」

「・・・Nip?」

この言い方にはかなりドン引きのようです。

多分かなり下品な言葉なんでしょう。



そしてジョンがこっそり見ているのを意識しつつ、
ウィンディと(間に手のひらを入れて)熱いキス(のふり)を・・・。



当然ショックを受けるジョン。



ウィンディはパーティ会場にいた本物のローズマリーをスージーだと思い、
さっきの続きをしようとして引っ叩かれております。


失意のジョンは、ショー直前、「ダグラス」が出航することを知ります。
何とか自分を乗せてくれるように頼むのですが・・。


彼の企画した今宵のショーは、

「もしウェーブがセーラーみたいだったら」
"If WAVES Acted Like Sailors"


WAVEなのに水兵みたいな喋り方や掛け声、腕に彼氏の刺青をしていたり、
港港に男がいる、と自慢したり・・・。



彼女らの集うバーに掛かっている絵は半裸の男性が寝そべる姿。
バーテンダーもよくよく見れば女性です。


そこで歌われるのが、

1944 June Hutton - There’s A Fellow Waiting In Poughkeepsie

「ポキプシーに私を待ってる男がいる」

ポキプシーはニューヨークとアルバニーの間にある都市ですが、
響きが面白いせいか、いろんなシーンで引用されます。
(『アリー・マクヴィール』のジョン・ケージ弁護士の口癖とか)

寸劇の内容通り、女性なのに水兵のセリフのような歌詞です。

ポキプシーで待っている男がいる
彼はとても優しい
(略)
それとは別にポモナで待っている男がいる
(略)
そして、デイトナでも一人
(略)
でも、もしあなたがわたしの手を握ってくれたら
みんなわかってくれるわ

わたしがただのジプシーだと思わないで
でもわたしはあなたを正したいの

ここからは、本物の女性ではなく水兵のセリフになります。

ビロクシで俺を待つWAVEがいる
結婚できなきゃ死んでやると言ってくる
もし信頼できる狼を見つけたら代理結婚させてやる

ウォーキガンで待つSUPER(女子海兵隊)がいる

彼女は他の女と一味違う
名前はレーガン
俺はその名を胸に刺青している

ハッケンサックにはWAC
ポンティアックにもWAC
至る所に

中にはボビー・ソックス(グルーピー)みたいなのもいる
(略)
ビロクシで待っているWAVEがいる
でも今夜は俺、ひとりぼっち


映画ではこの歌詞よりバリエーション豊かに、
サンディエゴ、パームビーチ等各地に女がいる、と言っています。

このショーは実際とても楽しいものですが、
実際に見ないと全く伝わらないと思いますので内容は省略。


ショーの合間に大変なことが発覚しました。
なんと、ジョンが「ダグラス」に乗るために
ショーをすっぽかしかけていたのです。



なぜそれが自分のせいなのか、全く理解できないローズマリー。



ウィンディとスージーは荷造りしているジョンを引き止めようとします。
せめてショーの出演だけでも最後まで果たして、というのですが、
彼はガンとしていうことを聞こうとしません。


いつもの変装をして空港に向かうためにホールを出て行きました。


スージーは人通りの多い街路で彼に足をかけて転ばせ、

「ちょっと!ここにジョン・キャボットがいるわよ!」

たちまち女性に群がられて身動きできなくなるジョン。
もう今日は飛行機に乗ることはできなくなりました。


ジョンはスージーが自分を陥れたことを本人の告白によって知りますが、
ローズマリーとウィンディが「できている」と信じているので、
舞台の袖で彼女に冷たく当たり、義務的にステージに上がります。
そしてその心と裏腹にこんな歌を歌うのでした。

誠実な心を約束するよ
いつも自由だったから
夜には腕いっぱいの星
僕はそれを自分のものだというフリをする

富める時も貧しき時も
分かち合えたら幸せ
あなたが取った僕の手
草原の太陽、暗がりのなかの炎
約束しよう 僕はそこにいると


「約束しよう」(I Promise You)という曲をデュエットしながら、
男の心が自分にないと知って、切なそうなローズマリー。

ところであれ?いつのまにこの人少尉になったんだ。
ショーの役柄ってことかな。



という二人とは全く関係なく、ショーはフィナーレを迎えていました。

「Here Come The Waves」というマーチ風の女性コーラスに乗って、
ステージには本物のWAVESたちが続々と登場します。



そして後ろのスクリーンにはジョンのアイデアで、
WAVESの軍隊生活がフィルムで映し出されていきます。

この二人は職場恋愛に発展しそうな雰囲気ありですが、
こういうシーンも志願者を増やすためと思われます。



飛行訓練のシミュレーション機のオペレーターとして。



以前当ブログでご紹介したことがあるシミュレーターですね。



開発機の実験にもWAVESが協力します。





スクリーンを使った銃撃シミュレーターのオペレーション。



通信オペレーターにタイプはWAVESの独壇場です。



航空機の整備は日本軍でも女性がおこなっていました。



こんな場所(空母甲板)なのにタイトスカートにパンプス。
このスカートでどうやって飛行機の翼の上に乗ったんだろうか。



曳航機を使った砲塔の実験も主導します。


二人はエンターテインメントを成功させた今、
海上勤務に戻っていいとWAVESのヘッドオフィスから通達を受けます。
左のWAVES隊長タウンゼント中尉が、

「スペシャリスト・ローズマリー・アリソンが、
あなたが艦に戻ることを強く望んでいると言っていましたよ」

「ローズマリーがそんなことを・・・?」

しかし、彼らの鑑はもうすでに出航した後のはず。
すると隊司令である大佐は、

「今ロスアンジェルス港に停泊しているから海軍の輸送機で送らせる」


司令室を出たジョニーはローズマリーとすれ違いますが、
彼女とウィンディがキスしていたと信じているので、冷たくあしらいます。

しかしこの男、自分はスージーに「意味のないキス」とかしたくせに・・。



そこで今や反省?したスージーが、あの時ウィンディとキスしていたのは、
ローズマリーのフリをした自分だったと打ち明けます。

喜んでローズマリーのもとにかけていくジョニー。



そして、ウィンディとスージーですが、瓢箪から出た駒?とでもいうのか、
フラれたもの同士で発作的に付き合うことにしたようです。

お互いそんなことでいいのか。


ショーのラストシーン、ステージ奥のスクリーンには、なぜかリアルタイムで
二等水兵として「ダグラス」に乗るジョンとウィンディの姿が映し出され、



スクリーンに手を振るスージーとローズマリーの姿で終焉となります。

ローズマリーは涙を浮かべていますが、実際、この時期、
西海岸から出撃する駆逐艦は、おそらく太平洋の激戦地に向かったはず。

姉妹二人の愛する人たちを乗せた「ダグラス」が、
無事に帰ってこられるかどうかは、映画で描かれることはありません。



終わり。



映画「Here Come The WAVES」(WAVESがやってきた)

2024-09-04 | 映画

以前陸軍女子WACの入隊宣伝映画「陸軍の美人トリオ」(常に備えあり)
を紹介しましたが、今日は海軍WAVES勧誘映画を取り上げます。



タイトルは「Here Come The WAVES」
直訳すれば「波が来た」ですが、このウェーブスとは

Women Accepted for Volunteer Emergency Service

の頭文字を取った志願緊急任務女性軍人のことです。

日本の海上自衛隊では女子隊員を「WAVE」としていますが、
その成り立ちを考えるとこの言葉は正鵠を得ておらず、
しかも(こちらは推測の域を出ませんが)ウェーブスだと、

語尾の響きがあまり好ましくないという理由で、
肝心の「任務」を意味する「S」が省かれた名称となっています。


ただ、アメリカでも名称は「WAVES」としながら、
口語では映画を聞く限りSを省略することが多いようですので
本稿も単体に関してはこの名称に倣います。

本作は戦時コメディばかり8本が収録された2枚組CDの中の一編でした。


直輸入版でリージョンが違い、(海外で購入したCDプレーヤーが活躍)
英語字幕すらついておらず、youtubeでも予告編しか見つからなかったので、
正直セリフを細部まで聞き取れたという自信は全くありませんが、

そこはそれ、コメディ&ミュージカルなので、なんとかなるでしょう。

Betty Hutton - "Here Come The Waves" Trailer (1944)

とりあえず、まずトレーラーを上げておきます。
最後まで見た方はお気づきだと思いますが、
本編に登場するWAVEさんたちは一部を除き本物です。

海軍の協力によって1944年に公開されたこの映画は、
ストーリーの中心のドタバタ恋愛劇と音楽の合間に、
WAVESの訓練や任務の映像を盛り込んでくるのを忘れません。

当時カリスマ的人気を誇ったスター、
ビング・クロスビーを主役に配したのも、
WAVES入隊資格のある若い女性にアピールするのが目的です。


ローズマリーとスーザンは双子の姉妹で活躍する人気歌手です。
最初に歌う曲は「ジョイン・ザ・ネイビー」。



赤毛のローズマリーと金髪のスーザン、
この双子を一人二役で演じるのはベティ・ハットンです。

ショーのシーンをはじめ、何度も同時に画面に現れるのですが、
何回見てもハットン一人がやっているとは思えません。



ブルネットの姉のローズマリーは物静かで落ち着いた物腰の、
今や死語ですが「おしとやか」を絵に描いたような女性です。



対して12分後に生まれた金髪のスージーは、典型的な陽キャタイプで、
いつも騒がしいハッピーゴーラッキーな、姉とは正反対のタイプ。



彼女は人気歌手ジョン・キャボット(クロスビー)の熱烈なファンです。

ここで話はいきなり、ショーの後、愛国心の強い姉が、
国のために海軍に入隊すると妹に打ち明けるところから始まります。

最初スージーは反発しますが、姉と離れたくないというそれだけで、
歌手をやめて、一緒にWAVEになることをすぐ決めてしまいます。

展開早すぎ。

そして高らかな「錨を揚げて」が鳴り響きます。


次のシーンからはニューヨークのブロンクスにあった
海軍の訓練学校での撮影となります。

一糸乱れぬWAVESの行進がグラウンドで行われています。



それぞれの私服に貸与されたWAVESの帽子姿の新入生たち。

最初に行うのは海軍式敬礼の練習です。



なんでもそつなくこなす姉に対し、少々不器用な妹のスージーは、
何度も敬礼の角度を直されています。



ベッドメーキングもシーマンとして最初に叩き込まれます。
うまくいかず癇癪を起こすスージーに、担当教官(多分本物)は、

「トライ・アゲイン」(ニッコリ)



制服が出来上がり、ハイヒールを黒のパンプスに履き替えても、
まだスージーは歩調を皆と揃えられず、大変苦労しています。

彼女の周りにいるのもおそらく全員本物のWAVESです。


海軍軍人として必要な基礎を学びます。
艦隊模型を見ながらフォーメーションにについて学んでいるのでしょうか。



スポーツは野球、そして、



バレーボール。

どんなスポーツの時にもスカートを履いて行うのがこの頃の女性です。
スカートの下にはショートパンツが基本でした。
(戦時中結成された女子プロ野球がそうだったように)


両足を組み替える美容体操(死語)みたいなのをしています。
なんなんだこれは。



牧師のお話を伺うレリジョンの時間もあり。

(ここだけ音楽はオルガンのコラール風)


食事は食堂でいただきます。



「食事の前には口紅を落としましょう」


今ではありえない注意書きですが、当時の女性は、
口紅なしで人前に出るのはみっともないとか恥ずかしいとされていたのです。
加えて当時の口紅は食器に付いたら大変落ちにくかったようですね。


そして、「錨を揚げて」がエンディングを迎える頃には、
スージーもすっかり行進がサマになってきていました。


そんなある日、ローズマリーが宿舎に戻ると、
スージーが洗面室に立てこもってジョン・キャボットの曲を聞いていました。

誰にも邪魔されず、一人で彼の歌に酔いしれるスージー。


我慢できなくなったみんながスージーをトイレから引き摺り出したとき、
なんと上官が、明日ジョン・キャボットのコンサートに行くから、と、

「That Old Black Magic」のレコードを借りにきました。


翌日、その「That Old Black Magic」を歌っているジョン・キャボット。

演じるのがビング・クロスビー(しかも絶頂期)なので、
当たり前と言えば当たり前ですが、素晴らしい歌唱です。


彼が現れると会場の女性は熱狂して叫びながら一斉に立ち上がり、
歌い終わると、何人もが彼の甘い声に失神するほど。

アイドルに熱狂し、泣いたり失神したりするファンというのは、
ビートルズやプレスリー以前の時代にもいたんだ、とちょっと驚きました。

カリスマに対する一種の集団催眠的な狂乱は古今東西どこにでもあり、
そんなことがなさそうなヨーロッパのクラシック演奏家でも、人気のある人、
たとえばピアニストでポーランド大統領になったパデレフスキーという人は、
若い頃、熱狂的なファンに何度も髪の毛をむしられて困ったそうだし、
あのフランツ・リストのコンサートでは失神する女性もいたと伝えられます。

この映画で、クロスビーの演じるジョニー・キャボットという歌手は、
ビング・クロスビーというより、当時のフランク・シナトラの要素を持ち、

特にこのステージはシナトラのパロディのように演出されています。


スージーもついきゃーっと叫びながら立ち上がってしまい、
ローズマリーに「制服着てることを忘れないで!」と嗜められています。


ジョンの楽屋に海軍に入った友人のウィンディが訪れました。
彼は楽屋でウィンディが配属された「ダグラス」での様子を尋ねます。

ここで、ジョンが海軍に入れなかったのが、
色覚障害(カラーブラインド)のせいだったという話になるのですが、
実は、ビング・クロスビー自身が有名な色覚障害でした。

彼が自分でブルーだと思って選んだ服は大抵他の人には派手すぎたとか、
それにまつわるエピソードがたくさん残されています。

色覚障害は、男性に20人に一人の確率で現れる症状なので、
有名人の中にも驚くほど多く、たとえばロッド・スチュアート、
ジミー・ヘンドリックス、ニール・ヤング、フレッド・ロジャース、
團伊玖磨、丹波哲郎、ビル・クリントン、タイガー・ウッズ、
キアヌ・リーブス、マーク・ザッカーバーグなど錚々?たるメンバーです。

流石に画家にはいないだろうと思ったら、なんと
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホもそうだったらしいです。
後世に残っているゴッホの絵、彼の思ったのとは違う色だったんですね。

ゴッホは自分の作品がこう見えていた

ちなみに、女性は遺伝子を受け継ぐだけで本人に症状は出ず、
彼女が生んだ男児にそれが発現することが多いようです。



このウィンディ、実はアリソン姉妹と同郷の知り合いでした。
彼はジョンを「知り合いが出演しているクラブに行こう」と誘います。

ジョンは、ファンに見つからないように変装しました。
(この変装は一つの伏線)



しかし、アリソン姉妹はすでにステージを引退して、
今日は海軍軍人として客席に座っていました。

ウィンディは実は姉のローズマリーに想いを寄せています。
クラブで彼女らにジョンを紹介すると、スージーは大喜び。

ジョンはというと、ほぼ瞬時にローズマリーを気に入り、
メニューにいつものように自分のサインをして渡したのですが、
彼女は気を悪くしてメニューをビリビリっと破き、

「ご親切ね。でもわたしが何が欲しいか勝手に決めつけないで」

「すみません・・」


(´・ω・`)となるジョン。
世の中の女が全て自分を好きだなんて思うなよ?

ところで、同じ女優が演じる同じ顔の二人という設定なのに、
二人の男のどちらもが、騒がしいスージーには見向きもしないのです。
顔が同じならエレガントな方を男は選ぶってことですかね。

ローズマリーは思い上がった男に反発し、
ダンスの誘いを受けるとウィンディと踊り出しました。



必然的にジョンはスージーと踊ることに。


耳元で彼が流れる音楽(That Old Black Magic)に合わせて鼻歌を歌うと、
それだけでスージーはあまりの興奮に失神してしまいました。

しかし、この夜、ジョンはローズマリーに本格的に恋をしてしまうのです。


そして次の瞬間、なんと彼はいきなり(40歳にして)海軍に志願しました。

戦争中ということで、身体的条件が緩和され、
色覚異常の男性も入隊が可能になったのを受けてのことです。

WAVESのローズマリーを好きになったからと言いたいところですが、
それより彼は海軍軍人だった父の後を継ぎたかったから、
そして、正直ファンに追い回される生活に嫌気がさしていたからです。



国民的アイドルの入隊ということで、西海岸に向かう汽車に乗るキャボットに
ファンが詰めかけて群がり、落とした私物を奪い合う騒ぎに。

「何か言ってえ、ジョニー!」

「ヘルプ!」


着く駅着く駅彼を見ようとファンが押しかけ、うかうか窓も開けられません。



そしてサンディエゴの海軍訓練センターに到着。
ピカピカのプレートを水兵がさらに磨き上げています。

1923年に開始したこのセンターは、1997年まで使用されていました。
閉鎖されてからも「トップガン」など映画の撮影に利用されています。



ここからは、トレーニングセンターの実際の映像が紹介されます。
キャボットを含む新入隊者がゲートをくぐって着任してきました。




グラウンドでこれでもかと訓練が繰り広げられています。
キャボットはこれから6週間のブートキャンプをここで行います。


同じ訓練センターに新入WAVESも着任してきました。
この船はWAVES専用なのか、名前が「WAVE」です。


宿舎に到着してベッドが割り当てられます。



ブルックリンの新兵訓練所の僚友、ルースとテックスに再会しました。
彼女らはヨーマン(事務職)に配置されたようです。

そこで「故郷への通信はテレグラムでできるわよ」という会話があり、
海軍を志望したいが、家族との連絡が取れなくなるのでは?

と心配するお嬢さんたちの懸念を払拭しようとしているのがわかります。


シーマン・キャボットは「ダグラス」乗組が希望です。
彼の父親は第一次世界大戦の際水兵としてこの艦に乗っていました。


しかし、艦は改修中なので、済むまでは歩哨の任務です。

そこにスージーがジョンの配置場所を突き止め、押しかけたものだから
周りが気づき、またしても女の子が群がる騒ぎになってしまいました。

ジョンはこれが嫌で海軍に入隊したのに、と激怒。
スージーもWAVEがなぜこんなところにいるのかと士官に叱責されます。



ローズマリーをなんとかして口説きたいジョンは、

ウィンディと彼女のディナーの席に割り込み、
隣の席の女性にナッツや氷をぶつけてそれをウィンディのせいにして、
騒ぎを起こし、憲兵に連行させるという汚い手で恋敵を追い払い、
彼女と二人きりになることに成功しました。



ここまで来ればもうこっちのもの。


最大の武器である歌を使って落とすだけ、といえば聞こえが悪いですが、
ローズマリーは否定しながらも彼に惹かれている自分に気がつきました。



その夜宿舎に帰ってきてジョンと会ったという姉を妹は問い詰めますが、
肝心のことを話せない姉は、ただ彼が、父親の遺志を継いで
「ダグラス」乗組を希望しているということを聞いた、といい、
スージーは、それでは彼が前線に行ってしまう!とパニクります。

そして、彼を内地に留めるために策略を巡らしました。



それは、ジョン・キャボットをレクリエーション担当に任命させること。

スージーはなんとジョン本人になりすまし、嘆願書を出します。
WAVES勧誘のための娯楽部門を設置し、
自分がその指揮を執りたいと。

カリスマアイドルである彼が女性軍人勧誘の広告塔になるというアイデアが

ワシントンに受け入れられないはずがありません。
彼がヘッドオフィスに呼ばれた時には、
すでにその責任者としてCPOに昇任するという話にまでなっていました。

覚えのない「嘆願書」に驚愕するキャボット。

「父の後を継いで『ダグラス』に乗れると思っていたんですが・・」

「君の父上のことは知っているよ。君の気持ちもわかる。
しかし、それはその任務を終えてからでもいいんじゃないかな」



「ダグラス」に戻ると皆が周りを取り囲みました。

「なんだったんだ?」

「CPOになった」

「嘘だろ?本当に合衆国海軍のか?」

「WAVESのレクリエーション担当オフィサーなんだと」

「ほー、WAVEのねえ(ニヤニヤ)」

「気をつけ!かしら中!」

「・・・・な」

「俺は上官だ。
いいかウィンディ、お前『ダグラス』を降りて俺を手伝え」

「いや、俺は『ダグラス』で戦いますよ」

「ダメだ。上官命令だ」

「それが変更できるかどうか貴様の顔に聞いてやろうか?」

「やれよ。すぐに上官反逆罪で海軍警察行きだ。
いいか、命令だ。今夜中にショーの構成についての報告書を書け」


いきなり上官ヅラして友人を同じ穴に引き入れるジョン・キャボット。
なんかこいつ色々といい性格してんなー。


続く。



映画「ザ・ファイティング・サリヴァンズ」〜USS 「ザ・サリヴァンズ」

2024-07-24 | 映画


エリー湖にあるバッファロー海軍&軍事博物艦に展示されている
第二次世界大戦中の駆逐艦「ザ・サリヴァンズ」。

前回、真珠湾攻撃の時に「アリゾナ」と共に斃れた友の仇を取るために
三人の弟を誘って五人全員で海軍に入隊したという
「海軍サリヴァン兄弟」結成の経緯までをお話ししました。

戦没して駆逐艦に名前を遺した海軍軍人はそれこそたくさんいるわけですが、
この五人兄弟はその数だけでも特異であり、極めて稀です。

ならば、彼らの映画もあるんじゃないかと思って探したらやっぱりあった。
冒頭に貼ったのは、なんと2時間近くの超大作です。


タイトルは「戦うサリヴァン兄弟」(The Fighting Sullivans)。
テーマ音楽はアイルランドの「グリーンスリーブス」を勇ましく、
軍隊調?にしたもので、最初からもうやる気?満々です。

全体的に無名俳優ばかりですが、トップスター、アン・バクスター、
名脇役トーマス・ミッチェル(舞台『刑事コロンボ』の最初の俳優)
をキャスティングしたあたりに、力の入れようが見えます。


監督のロイド・ベーコンは、「42番街」「チャップリンシリーズ」
「北大西洋」などを手掛けた中堅どころの監督で、
映画は1944年に制作されました。

これで更なる戦意高揚が期待できるというところでしょう。
しかし、海軍の協力などがあったわけではありません。
それがなぜかはおそらく映画をご覧いただければわかります。

とはいえ、2時間近いこの大作を翻訳なしで観る根気も時間もない、
という方々のために、不肖わたしが簡単に解説を行います。


サリヴァン家の兄弟は、次々と行われる洗礼式でその名前を紹介されます。


五人の男児、一人の女児(ジェヌヴィエーヴ/ジェン)は
すくすくと育っておりました。

彼らの父親は貨物列車の車掌です。



五人兄弟は、毎日線路脇の給水塔から父親に手を振って見送るのでした。



そしてわんぱくぶりを発揮していきます。
喧嘩は日常茶飯事。



手作りのボートで転覆し、溺れそうになる。
(母親から大人になるまでボートに乗るのを禁止される)



納屋でタバコを吸って見つかる。
(なんとびっくり、父親は五人兄弟に葉巻を吸わせて咽せさせて懲らしめる)


「プランク」を作るために家の壁を切り抜いて、



水道管を破り台所を水浸しにする。
あーもう、本当に男の子ってバカ。(実感済み)



1939年、長男のジョージは街のバイクレースで優勝するような
イケイケな青年に成長していました。


末弟のアルバートはまだ高校生ですが、兄のバイクレースの日に出会った
運命の女性、キャサリン・メアリーと恋に落ちます。


結婚したいという弟に、まだ若すぎると反対する兄たち。



キャサリン・メアリーを招待した食事の席で、兄たちは、
架空の女の子からの手紙が弟に来たことにするなど、
姑息な手段で二人を別れさせようとしますが、すぐに可憐で純粋な
キャサリン・メアリー(綺麗すぎアン・バクスター)の悲しみを目にし、
自分たちが間違っていたことを認め、二人を祝福しました。


そして二人は結婚。


すぐに子供に恵まれました。
これまた当たり前のように男児です。

男系・女系ってあるよね。


1941年12月7日。

この日曜日、サリヴァン一家が皆でくつろいでいるところに
ラジオから飛び込んできたのは真珠湾攻撃のニュースでした。

沈没した「アリゾナ」には彼らの友人の一人、
ビル・バスコム(ビル・ボールがモデル)が乗り組んでいたことを知り、
彼らは友の仇を取るために海軍に入隊する決意をします。


当初新婚子持ちだった末弟のアルは一旦入隊を諦めますが、
あまりに残念そうな彼の様子を見ていた妻は、驚くことに、
彼に兄と一緒に入隊事務所に行くようにと進めるのでした。


事務所受付は、来る男来る男、名前がサリヴァンなのでびっくりです。



募集担当官のLCDR(少佐)ロビンソンは・・・あ、この顔見覚えあるぞ。
「FBI vsナチス」っていう啓蒙映画でFBIの中の人を演じていた俳優だ。

彼らの「5人で同じ船に乗りたい」という切なる願いに対し、
海軍としてもそんな保証はできかねる、と答えるしかありません。
特に5兄弟ともなると、前例もありませんしね。

とりあえず海軍は当初長男のジョージにのみ入隊許可を与えますが、
兄弟は海軍省直々に手紙を書き、結局全員の入隊が実現しました。


そして五人の息子たちが家族と別れる日がやってきました。
ここから彼らの海軍での生活が始まるわけですが、
ふと気づけば、映画は2時間のうちあと30分残すのみ。
これは海軍協賛とかではなく、完全に民製作品だったと知った瞬間です。

予想通り、ここからサリヴァン兄弟はいきなり「ジュノー」に乗り込み、
あっという間にソロモン沖で戦死するのですが、その描写は
明らかにセットで撮影されたもので、全く写実性に重きを置いていません。

ですので、ここからは、映画の流れを無視して?
実際の「ジュノー」沈没までの経緯を書いておきます。



11月12日、「ジュノー」は、ガダルカナル沖の激しい夜戦を行います。

この戦闘で魚雷により艦は大破。
一旦総員退艦の命令が下されました。

翌朝、航行不可能になった巡洋艦は艦首を失い、
18ノットを出すのに苦労しながら戦闘海域から退却します。
なんとか艦体を帰還させようとしたアメリカ海軍でしたが、
当時の海域はもうほぼガラス張り状態。

穏やかな海をのろのろと進む「ジュノー」は、
近くにいた帝国海軍の潜水艦伊号26にとって魅力的な標的となり、
魚雷が1〜2本、損傷した巡洋艦の前方に命中すると、
それは弾倉に引火し、次の瞬間激しい爆発が船を引き裂き、
わずか42秒で沈没していきました。



次男フランシス(操舵手)と三男ジョセフ、四男マディソン2等水兵、
合計3名のサリヴァン兄弟は、退艦することもできませんでした。

彼らは艦上ですでに絶命していたと言われています。

ちなみにこのとき「ジュノー」乗組員中、沈没直後に生存していたのは
約140名と言われていますが、8日後、救助されたのはわずか10名でした。

海軍が無線の沈黙を命じたこともあり、多くの生存者は漂流中に負傷が元で、
そして風雨、飢え、渇き、サメの襲来に斃れていったのです。


映画では、負傷して艦内に寝かされている長男ジョージを
兄弟全員が救出に行き、全員一緒に戦死したということになっています。

生存者の証言によると、フランク、ジョー、マットは全員艦上で即死、
アルバートは救助艇に乗れず翌日溺死、長男ジョージは漂流し、
高ナトリウム血症によるせん妄を患うまで4、5日間生きていました。

彼は兄弟を失った悲しみで精神を追い詰められ、
自分が乗っていたいかだの側面を乗り越えて水に落ち、
それっきり姿を消したという証言もあるそうですが、

それはせん妄によるものということもできるでしょう。

映画に戻りましょう。


画面が暗転すると、次のシーンでは例のロビンソン少佐が
サリヴァン家を訪れてくるところです。

少佐がニコニコと愛想よく挨拶するものだから、
家族たちも悪い予感は何も持たずに握手などしていますが、

実際両親は、戦地の息子たちからぱったりと通信が途絶え、
そこに彼らの戦死の噂が耳に入ってきたこともあって、
海軍人事局に手紙を書いて彼らの安否を問おうとしていました。

軍艦沈没の情報を国民の士気を下げることから報道しない、というのは
決して日本だけのことではなかったようですね。



実際には、1月12日の朝、父親であるトムが仕事の準備をしていたとき、
軍服を着た3人の男性(中佐、医師、兵曹長)がやってきたとされます。

「あなた方の息子さんについてお知らせがあります」

と中佐がいうと、父親は尋ねました。

「どの息子です?」
 "Which one?" 


すると中佐は答えました。

「お気の毒ですが、5人全員です」
"I'm sorry, All five."


アルの妻であるキャサリン・メイと姉のジェンは、
少佐が広報を読み上げるのを聞き終わるやいなや、
ワッと泣きながら自室に姿を消しました。


わたしに言わせると、ここからがこの映画の見どころとなります。
この映画のラスト15分、きっと当時、全米が泣いたに違いありません。

少佐の言葉に呆然とする両親。俯く中佐。
暖炉の上の写真(本物)に父親が見入った瞬間、列車の汽笛が鳴り響きます。
それは、車掌であるトムが仕事に行く合図でもありました。

「失礼します。
イリノイ中央鉄道の操車係になって33年間一度も休んだことがないもので
・・すみません」


そして母親は・・。



ふと我に返った顔になり、「五人全部・・・」と呟きます。
少佐は、そんな母親に向かい、思いついたように微笑みを顔に装って、

「Five on second thought」

という言葉の後に、

「すみませんが・・・コーヒーを一杯いただけますかな」

と所望するのです。

それを聞くと、彼女は何かやらなければならないことを思い出した風に、
同じく微笑んでいそいそと立ち上がり、キッチンに向かうのでした。


母親の「All five..」に対し「5といえば・・」とは妙な返しですが、
この一見不思議なやりとりは、却って観る者の心を深く抉ります。

監督の非凡さを表すシーケンスだと思います。



そしていつものように仕事にかかる父親。



列車が動き出してしばらくすると、あの給水塔の横を通ります。





誰もいない給水塔に向かって、父親は小さく敬礼を送ります。



そして、USS「サリヴァン」の進水式がやってきました。



実は、兄弟が「アリゾナ」のビル・ボールと友人になったのは、
彼がジュヌヴィエーヴのボーイフレンドだったからでした。

実際にジェンはWACとして海軍で人事に勤務し、新兵募集に携わりました。

米国海軍予備役に入隊し、両親のトーマス・F・サリヴァン夫妻とともに
200以上の造船所や製造工場を訪問し、そこで働く労働者を激励しました。

映画でキャサリンが抱いている息子のジミーですが、成長して海軍に入り、
念願かなってこのUSS「ザ・サリヴァンズ」の乗組員になりました。



そして時は流れ、1995年、2代目USS「ザ・サリヴァンズ」DDG-68
(運用中)の進水式スポンサーになったのは、アル・サリヴァンの孫、
ジミーの娘であるケリー・アン・サリヴァン・ローレン(右女性)でした。




シャンパンの儀式は母親のアレッタが行いました。


シャンパンが割れると同時に汽笛を鳴らしながら進水する船。
(艦番号は450なので、この映像は『オバノン』の進水式。

日本海軍の潜水艦とジャガイモの投げ合いをした艦です)

それを見送る彼女は夫に向かっていうのでした。

「トム・・・あの子たちが生き返ったわ」
” Tom, our boys are float again."


「錨を揚げて」Anchors Aweigh の調べの中、
朗らかに手を振り、光に向かって進んでいく五人兄弟。

このラストシーンには、恥ずかしながら涙腺をやられました。


サリヴァン兄弟の映画は、実は間接的に、スピルバーグの映画、
「プライベート・ライアン」に影響を与えています。

サリヴァン兄弟他何組かの兄弟の戦死事案が勘案された結果、海軍省は


ソウル・サバイバー・ポリシー (Sole Survivor Policy)
国防総省指令1315.15「生存者のための特別分離政策」

を制定しました。

ある兵士が軍務で失われた場合、同家族内の生存している兵士を
徴兵または戦闘任務に就かせず、保護することが定められています。

続く。


映画「聯合艦隊司令長官 山本五十六」 ブーゲンビル

2024-06-10 | 映画
 
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映画「Uボート基地爆破作戦」The Day Will Dawn 後半

2024-05-05 | 映画

映画「Uボート基地爆破作戦」、原題「The Day Will Dawn」後半です。


例によって派手なアメリカ公開時の同作、
アメリカタイトル「アヴェンジャーズ」ポスターがこれ。

「前線の新しい秘密を描いたスリリングなドラマ!」

という煽り文句。
「新しい秘密」って何だろう。




ノルウェーからイギリスに戻ったメトカーフは、本社での仕事を再開しますが、
日に日に飛び込む戦争による損失のニュースに触れるたび、
自分自身が戦線に身を投じて祖国を救いたい思いに駆られていきます。


そんな彼に、先輩記者は、武器を取ることだけが戦いではないといい、
報道記者にしかできない戦い方をするべきだと説きます。

例えばホームフロントで国民一人が心構えを持ち、
勝利のために「経済活動」を行うよう家庭に呼びかけるなど。

ごもっともでありメトカーフもそれに納得するのですが、
ところがどっこい、運命は彼にそれを許してはくれなかったのです。


その頃、イギリス海軍情報局では、ノルウェーのどこかにあるとされる
Uボート基地を探し出すために動き出していました。

「誰かこの辺に詳しい人物はいないか」

「ピットウォーターズ中佐を呼べ」

ピットウォーターズ中佐とは?



メトカーフが空襲下のバーで飲んでいると、彼をドイツ船から助けた
駆逐艦の艦長だったピットウォーターズ中佐が「偶然」現れました。

もちろんこれを偶然と思っているのはメトカーフだけです。

ピットウォーターズ中佐、にこやかに挨拶を済ませると、
いきなり何のスポーツをやっていたか聞いてきました。
メトカーフが学生時代にかじったスポーツを適当に答えると、

「それならもちろん泳げますよね?」

「?」

「あなたモールス信号は打てます?」

「・・・いえ・・何なんです?」

「なに、すぐ覚えますよ」



「グッドラック!」

「・・・あなたも」(?)

この人、目が全然笑ってなくてこわ〜い。

「ああそうそう、乗っていた船が銃撃を受けたっていう件、
あのことで私の友人があなたと話したいと言ってましてね」

「今からですか・・いいですよ。行きましょう」

「あ、ところで結婚してます?」

「いいえ」

「近親者とかは?」

「いませんが」

「それはよかった。家族なんてつまらないですからな」


イギリス海軍、メトカーフに何をさせようとしているのでしょうか。
ドイツ船が彼を攫った理由も謎のままですが。



ピットウォーターズ中佐に海軍司令部に連れて行かれ、
そこでメトカーフは情報部のウェイバリー大佐に紹介されました。

「君はいい記事を書きますね」

「ありがとうございます」

「愚者の後知恵って感じだけどね(Wise after the event)

イギリス人らしい上から目線の嫌味にムッとするメトカーフを尻目に、
なるほど健康そうだね、はい近親者もいないそうですなどと、
何やら勝手に話を進めていく二人。

そしていつのまにか彼は、
「ノルウェーのUボート基地を探し出し、攻撃する」
という海軍の作戦に参加することになっていました。

なるほど、で、日本語タイトルがこうなったわけね。

なぜ彼に白羽の矢が立ったかは、彼がUボートの攻撃を受けたからですが、
だからって、ただ船に乗って攻撃を受けただけの人を、
ろくにその時の状況も聞かずに現場に放り込むかな。



次の瞬間、軍用機に乗せられた彼は、あれよあれよという間に
パラシュートを装着され、目的地上空で降下させられていました。

「三つ数えたらパラシュートの紐を引っ張ってください。
ハッピーランディング!」

ハッピーランディングじゃねえよ。素人になにさせるだ。

案の定、降下するところをドイツ兵に目撃され森の中を逃げ回ることに。
メトカーフ、自分を守る武器すら持たせてもらってません。
必死で身を隠しますが、そのうち一人に見つかってしまい、万事休す。


と思ったら彼はオーストリア人で、メトカーフを見逃すどころか、
イギリス海軍の作戦に通じているらしい?人物で、
しかも、彼の受け入れ先であるパン屋も教えてくれます。

どんな偶然だよと言う気もしますが、映画なのでもうどうでもいいや。


受け入れ先のパン屋の親父から、メトカーフは衝撃的なニュースを聞きます。

一つは、皆の意見を代表したアルスタッド船長が収容所に入れられたこと。
そして、もう一つは、カーリがグンター署長の権力と金になびき、
婚約したため、村人の非難の的になっているという状況でした。


パン屋はメトカーフを、村の学校で校長をしているオラフに紹介しました。
前半の結婚式シーンでカーリの友ゲルダと挙式した新郎で、
彼を目的地のラングダールに連れて行く役目を引き受けたのでした。

オラフを演じるのは、このブログでご紹介するのもなんと三度目、
すっかりお馴染みになったニアール・マクギニス(Niall MacGinnis)

「潜水艦撃沈す」49th Parallel (1941)で、
逃走中仲間に射殺されるドイツ軍水兵の役、
「潜水艦シータイガー」We dive at dawn(1943)で、
結婚したくない男CPOマイク・コリガンを演じていた人です。



オラフと歩いていてドイツ兵に誰何され、隙を見て逃げたメトカーフは、
ドイツ-ノルウェー親睦パーティに紛れ込みますが、
そこでグンターと一緒にいるカーリを見てショックを受けます。



そこに、体重0.1トンデブのドイツ軍司令官がやってきて、
この場にいる全員の身分証を点検すると言い出しました。

メトカーフが逃げたことが報告されたようです。


その時、カーリは会場の一席で目を伏せているメトカーフに気づきました。
彼が身分証を持たずここに忍び込んでいることも察したようです。



事態を混乱させるために彼女が咄嗟に取った行動、
それはコップでテーブルを連打することでした。


それは、内心ドイツ軍のやり方に鬱屈としたものを抱いている
周りのノルウェー人たちに、抵抗の形として伝播していき、
連打の速度はだんだん速くなっていきます。

ドイツ人たちはそれに苦い顔を・・。



司令官に命ぜられたグンターが連打をやめさせ、皆を取りなし、
楽隊に演奏を命じて何とか雰囲気が元に・・、と思ったら、



ノルウェー人の楽隊員がコップ連打のリズムを使ったアドリブを始めました。
残りのメンバーも調子を合わせてアグレッシブに盛り上げます。


騒乱状態の中、律儀に身分証確認の任務を遂行するさすがのドイツ兵士。

ドイツ兵がメトカーフに近づき、あわや、というとき会場は真っ暗に。
カーリが部屋の隅にあるブレーカーを切ったのでした。

暗闇の中カーリは素早くメトカーフに近づき、逃げ込む場所を指示しました。


その後落ち合った二人。

カーリは、グンターと婚約したのは父親の釈放が条件だったから、
と釈明し、メトカーフはこれまでの彼女への想いを打ち明けました。

父親のアルスタッドが逮捕された理由は、
イギリスのラジオが流していたノルウェー国王の言葉、

「私は国民を見捨てない」

という言葉を紙に印刷して人々に配ったからでした。

そして父親を逮捕したのは他ならぬグンターで、彼は
父親の釈放と引き換えにカーリに婚約を強いたのです。


程なくして、イギリス海軍にノルウェーからの暗号が入りました。

「Uボート基地確認 重厚な偽装あり ラングダルより22キロ南方
水曜22時半以降に大西洋攻撃の計画あり」


カーリの父アルスタッドが釈放されて帰宅しました。
「現場監督」(foreman) は船上での娘のあだ名です。

アルスタッドは、潜水艦基地を爆撃する連合軍機に
位置情報を伝えるメトカーフに付いていくことになりました。


ドイツ海軍が艦隊出撃の準備を始めました。
このとき、ドイツ軍人の間でこんな会話があります。

「どうして海軍は総統に敬礼(ナチス式敬礼)しないんだ」

「英国海軍を手本にしたため、伝統を受け継いでいる部分がありましてね。
我々も修正を試みているんですが」


映画はここで悪質な印象操作をぶち込んできます。

「生存者を救出するなどという”騎士道精神”まで受け継いではいませんが、
とにかくドイツ海軍は総統にナチス式敬礼はしないのです」

アメリカとイギリスは、戦後もこの

「ドイツ海軍は生存者を救出しない」

という文言を好み、ドイツの「残虐ぶり」を強調しようとしてきましたが、
実際にはそうではなかったことは、「ラコニア号事件」が証明しています。
ラコニア号の乗員を救出するU-156とU-506

この後、メトカーフが地上から発光信号で航空機を誘導し(!)
偽装が施されたドイツ潜水艦基地は見事爆撃されます。

この一連の爆撃シーンは、実際のストック映像からの流用多数。



役目を終えて帰ってきたメトカーフにカーリは父の安否を訊ねます。

「お父さんはもう帰ってこない」



作戦成功の知らせは海軍情報部にも入りました。

「マーシュのおかげだな!」

「メトカーフです」

「そう言っただろ」

「・・失礼しました」

Mしか一致してねーし。


しかしそれで済むほどドイツ軍は甘くありません。

首謀者がメトカーフであることも当局はすでに掴んでおり、
彼と協力者8名を逮捕し、処刑すると通告してきました。


次々と引き立てられていく人々。
その中には、ゲルダの夫、オラフもいました。

グンターは、メトカーフが見つからなければ、8人を処刑すると脅しています。
ゲルダはカーリに、人質になった人たちの命を救うために
メトカーフの居場所を教えるように懇願しにきたのでした。

その話を陰で聞いていたメトカーフは、警察に自首しました。


カーリの元にグンターが来て、メトカーフの自首を告げました。

彼は、それでもカーリがまだ処罰対象になっているため、
自分と結婚すれば命を助けることができると持ちかけます。

きっぱりとそれを拒否するカーリ。
父の釈放のために婚約はしていましたが、その父も亡くなった今、
こいつと結婚するくらいなら死んだほうがマシということですか。

それを聞くとグンターはいきなり外にいたドイツ兵に彼女を逮捕させました。


警察署で、捕えられた人々と一緒になったメトカーフは、
こんな演説をします。

「あなたはここに製油所と称して潜水艦基地をつくった。
部下はノルウェー語を話す。なぜか。
彼らは子供の頃、戦争でここに逃れてきた人々だからだ。
ノルウェーの人々が空腹だった彼らを助けた。

その彼らが今では侵攻する大隊を構成していて、
『親切な人々』を殺すことができる。

しかしここで我々を殺したとしても、ほんの少しに過ぎない。
他には何百万人だっているんですよ。
漁師、パン屋、商人、教師・・普通の人々がね。

あなた方はその全てを殺すことなんてできない。

『その日』は来ます。あなたが思うよりもはやく。
皆が立ち上がり、自由になる日が。

そのとき、あなたに神のご加護がありますように」




ヴェッタウ司令は鼻白んだ様子になりましたが、
それでも彼の意見には何も言わず、全員を逮捕させました。


同じ房に閉じ込められ、処刑を待つだけの8人。

夜明けと同時にドイツ語の掛け声が房の前で響き、
兵士たちが8人のうち「最初の4人」を処刑のために連れ出します。

そしてすぐそばの処刑場から聞こえる命令と銃声。
こういうとき最後に牧師を立ち合わせたりしないか?



ゲルダの夫、オラフと彼らを含む4人が息を飲んでその時を待っていると、
にわかに外が騒々しくなりました。


このとき、英海軍部隊が潜水艦基地に到達していたのです。



そしてコマンド部隊が基地を強襲。
基地からは彼らの強襲ボートが船着場に乗りこむまで、
ドイツ側から何の反応もなく、全く反撃もなかったようで何よりです。



さっさと基地を後に自分だけ逃げようとする基地司令(私服になってる)。
協力させるだけさせといて逃げる気か!とすがるグンター。

司令は面倒になって、利用価値のない彼をさっさと射殺してしまいました。


このとき、木造の家が爆破されるシーンがありますが、これは
実際にノルウェー海岸をイギリス軍特殊部隊が襲撃した際の映像です。

このときコマンド部隊が攻撃したのはノルウェーの魚油加工工場などで、
この映像は当時のニュースリールに残されたものでした。

この映画に挿入されている実写シーンは、
ニュース映画やその他の現実の映像から抜粋されています。


「・・・イギリス海軍が来たわ」

このデボラ・カーの凄まじい演技を見よ。


捕虜になったドイツ兵たちが船に乗せられるシーンですが、
これ、もしかしたら第一次世界大戦のこの写真を参考にしてる?

WW1 blinds soldiers
WW1 - Weapons and Technology 


写真の人たちが目隠しして前の肩を掴んでいるのは、
彼らが戦闘で視力を失ったからなんですが・・・。

このシーンの人たちは、捕虜として目隠しされているようです。



ゲルダとオラフはイギリスに行って住むことになりました。
この短期間(数時間くらい?)になぜそこまで決まったのかは謎です。
イギリス軍が難民を受け付けてくれたのかな。

「子供はイギリスで生まれることになるが、血はノルウェー人だ」

ところで、いかにこの時代のノルウェーの状況について知らない我々も、
映画はイギリス制作であり、演じているのは全員がイギリス人、
全てがイギリスに都合よく描かれていることも知っておく必要があります。


ノルウェーはイギリス寄りであったとはいえ、中立国で、チャーチルは
ドイツより先にノルウェーを「占領」しようとしていましたよね。

ノルウェーはイギリスに占領された方がラッキーだったはず、というのは
あくまでイギリス人の考えにすぎず、ノルウェー人にすれば、
どちらかに占領されるならドイツよりはまし、程度だったと思うんだけどな。

放っておいたら中国かロシアに取られてしまうという理由で、
国内の偉い人に頼まれるようにして朝鮮を併合した日本が、
そのことをいまだに恨まれ続けているという例もあることですし。
(まあかの国の民族的気質がかなりの粘着質ってのもありますが)

占領される側から見たとき「良い占領」などは存在しない。
防衛上のいかなる正当かつ合理的な理由があったとしても、占領は占領、
国民主権が他国に奪われるという現実には違いないのですから。


そして、ノルウェーを離れる人々は、
村に残る人々に別れを告げ、船は岸を離れて行きました。



メトカーフはもちろんイギリスにカーリを連れて帰ります。
これからノルウェーはドイツに占領されることになるからですね。



最後に流れる字幕には、このようにあります。

「今、ナチスのくびきの下にひれ伏している12の有名な古代国家では、
あらゆる階級と信条の人民大衆が解放の時を待っている。
その時は必ず訪れ、その荘厳な鐘の音は、夜が過ぎ、
夜明けが来たことを告げるだろう。

1941年12月26日、アメリカ合衆国上院で首相チャーチルが行った演説です。

The night is past and that the dawn has come.

映画のタイトルはこの一節から取られました。
実際のノルウェーの「夜明け」は、この時点から4年後のことになります。


終わり。




映画「Uボート基地爆破作戦」The Day Will Dawn 前半

2024-05-02 | 映画

今日は1942年イギリスで製作され、わずか五ヶ月後には
アメリカでも公開された、戦争「系」映画をご紹介します。

まず、この「Uボート基地爆撃作戦」という邦題ですが、
例によって、あまり映画の本質を突いていません。

主人公はイギリス人のジャーナリスト(と言っても競馬記者)。
彼がポーランド侵攻を境に会社からノルウェー特派員を命じられ、
偶然の重なりにより歴史の瞬間を目撃し、自らも命の危険に曝されていく、
という内容なので、まるで戦争もののようなこのタイトルは変ですね。

原題は「その日は夜明けになる」(直訳)。

映画の制作された1942年は、ポーランド侵攻後のヨーロッパ、
並びに世界がどうなっていくか、まだ誰にも何もわかっていません。

The Day Will dawn というタイトルからは、
その頃ヨーロッパに住むすべての人々が陥っていた混沌とした暗闇から、
いつ夜明けになるのかという、そこはかとない願望が読み取れます。

それに比べてよく分からんのが、アメリカで公開された時のタイトル、

「The Avengers」(アベンジャーズ)

アベンジャーズというと現代の我々にはマーベルしかないわけですが、
映画を観た今となっては、こちらの「復讐者」というタイトルも、
なんだかほんのりピントがはずれているような気がしないでもありません。

ただはっきりしたのは、アメリカ人ってこの言葉が相当好きってことかな。

ところで、ここで本題、なぜ映画の舞台がノルウェーだったかですが、
それは当時ノルウェーが中立国だったことが理由でしょう。

ただ、第一次世界大戦時から国際紛争では中立を維持していたノルウェーが、
歴史的にイギリスとは経済的・文化的にも協力関係だったことから、
中立といっても、限りなく連合国寄りだったことを踏まえる必要があります。

第二次世界大戦が開戦するとノルウェーは公的に中立を宣言しますが、
ドイツは、連合国が共闘に引き込む可能性を憂慮し、
盗られる前に盗れ!!とばかりにノルウェーを占領にかかりました。

【ゆっくり歴史解説】ノルウェーの戦い【知られざる激戦10】
海戦の解説が多めなのでぜひ。

連合軍がフランス侵攻後、そちらにかかりきりになったので、
ノルウェー政府と国王ホーコン7世はオスロを放棄して亡命、
海外からレジスタンスを指導しましたが、結局ノルウェーは
ドイツに占領されることになり、終戦まで統治下に置かれることになります。

本作は、ノルウェーの戦い前夜からが舞台として描かれます。


ノルウェー空軍省、戦争省、そして
ノルウェー王国政府に感謝する、とあるのですが、
ここでとんでもない間違い発見!

NORWEIGAN(×
NORWEGIAN(


字幕を書く職人がGとIの前後を間違えただけだけだろうとは思いますが、
よりによって謝意を示すための字幕でスペルミス、これはアウト。


気を取り直して。
1939年9月のことです。



ドイツはポーランドに侵攻しました。


開戦にここぞと浮かれ、いや活気づくイギリス某新聞社のお偉いさんたち。

しかし、新聞各社が腕利きの記者を特派員として各地に送っている中、
この新聞社では、派遣する記者の人数不足に困っていました。

この際、若くて元気で記事が書ければ何が専門でもいい、
と一人が言い出し、政治部の花形記者フランクは、

「心当たりがある」



フランクは、友人の競馬担当記者コリン・メトカーフが、
戦争で競馬が中止となったため、クビになったばかりなのを思い出しました。

「あんなやつ、馬の知識しかないし、そもそも下流(でた階級差別)出身だ」

と社の幹部たちは渋りますが、彼のコミュ力を買っていたフランクは、
反対を押し切り、ノルウェー特派員として彼を推薦したのです。


8ヶ月後、メトカーフはノルウェーにいました。

何やら綺麗なお姉さんとデートなどしています。
ちゃんと特派員の仕事はしているのか。



オスロの街を歩きながら、

「夜のろうそくは燃え尽き、
霧深い山の頂に陽気な日がつま先立ちしている」


などと、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の一説を口ずさみ、
ついつい溢れ出る教養をダダ漏れさせてしまうメトカーフ。


二次会?で入ったバーで、メトカーフはノルウェー海軍の水兵たちと
ノリで「ルール・ブリタニア」を合唱してすっかり大盛り上がり。


このシーンのセーラー服、フランス軍と間違えてない?と思いましたが、
ノルウェー海軍の制服って、フランスと似ていたんですね。
白黒なのでわかりにくいですが、セーラーの襟の色が間違っています。

当時は白黒写真しか資料がなかったせいかな?



その時、同じバーの一角に、ドイツ海軍御一行様がいて、
「英国は決して奴隷にはならず」という「ルール・ブリタニア」に対抗して、
ナチスの党歌「ホルスト・ヴェッセルの歌」をがなり始めました。

しかしながら、わたしに言わせれば、この選曲が良くない。
僭越ながら海軍軍人というものを微塵もわかっておらん。

仮にも海軍たるもの、ここでナチスの歌なんか歌いますかね。
同じ映画の中で、「海軍軍人はヒトラー式敬礼はしない」と言って
微妙な海軍とナチスとの乖離を語っているのに、詰めが甘いというか。

こんな時には、やっぱりこれでしょう。

「我らは今日乗船する」 日本語歌詞付き [ドイツ海軍歌]
Heut geht es an Bord
必見:Uボートの実戦映像集 後半にはデーニッツ閣下も登場

ちなみに「眼下の敵」でUボートのクルト・ユルゲンス艦長のもと、
総員で歌っていた「デッサウアー」も、実は歩兵の歌ですので念のため。

(ところで今、ふと某国の公共放送局制作スタッフの無知のせいで、
陸海軍ごちゃ混ぜにハワイに収監されていた日本軍捕虜が、
全員で仲良く『艦隊勤務』を歌っていた戦争ドラマを思い出してしまった)

今回この映画がこの時わざわざ「ホルスト・ヴェッセル」を歌わせたのは、
単に「ナチス」を強調するための意図からきているのかもしれませんが。


さて、そのうち一人のドイツ水兵が荒ぶってものを投げ、鏡が割れるのを見て
白髪の老いた船長が立ち上がり、いきなりドイツ水兵を殴りつけると、
それがきっかけで場内全員による大乱闘になってしまいます。

メトカーフは迷うことなく乱闘に加わり、件の船長アルスタッドと意気投合。
ドイツ水兵を店から追い出した後、船長は彼を自分の船に招待しました。



メトカーフは乗り込んだ船で船長の娘、カーリと衝撃の出会いをしました。

カーリ・アルスタッドを演じるのは、ご存知デボラ・カー(Kerr)
「王様と私」「地上より永遠に」「旅路」などに出演し、
「イギリスの薔薇」とも称えられた美人女優です。

船の上で無様に転んだコリンを大笑いする彼女。
しかし顔を煤で汚していてもその美貌は隠せず。

(但しその笑い声は妙に甲高くて耳障りで、個人的にはイメージ台無しです)



ところで、さっきまでメトカーフとデートしていた女性は、喧嘩の際、
彼によって店から避難させられた後、最初の店に戻って、
やはり最初からそこにいた二人の男性と何やら密談をしていました。

彼女、どうやらドイツ側のスパイだったようです。
特派員である彼に近づいたのは、情報を得るためだったんですね。

ここで老婆心ながら一言。

政府要員、軍人、報道公務員その他国家機密に関わる、特に男性諸氏は、
(もちろん自衛官を含みます)やたら高めの女(又は男)が近づいてきた時、
冷静に自分について客観的に見直してみることも大事かもしれません。

こんな相手にグイグイ来られるほど、俺って今までモテてたっけ?と。
自分が案外モテると思いたい、その気持ちはわからなくもないですが。

個人的見解ですが、自他ともにモテを認める、実質MMな人材には、
そういう輩は決して近寄ってこないような気がします。


さて、航海二日目、アルステッドの船は、ドイツ海軍のタンカー、
「アルトマルク」Altmarkとすれ違いました。

アルトマルク号事件

「アルトマルク」は、ドイッチュラント級装甲艦
「アドミラル・グラーフ・シュペー」
(DKM Admiral Graf Spee)

の通商破壊活動によって沈められた商船から収容された
イギリスの船員を捕虜として載せていました。

「シュペー」がラプラタ沖海戦で自沈したため、
補給すべき相手を失ってノルウェー領海にいた「アルトマルク」は
ノルウェー官憲による立ち入り調査を受けることになります。

しかし「アルトマルク」は、その際捕虜の存在を隠してやり過ごし、
何も問題とならずに、そのまま通航を許されました。

同じ日、イギリス空軍機が「アルトマルク」を発見し、
イギリス海軍は、駆逐艦「イントレピッド」 (HMS Intrepid, D10) と
「アイヴァンホー 」(HMS Ivanhoe, D16) を派遣して
「アルトマルク」をフィヨルドに追い込んでから、
 駆逐艦「コサック」による強制接舷のち「アルトマルク」に乗り込み、
乗組員7名を殺害の末、捕虜を解放しています。

これが「アルトマルク号事件」です。

このことは国際的にも大問題となりました。



その後、アルステッドの船はUボートに発見されました。
(映像は実写)


その時、カーリとメトカーフは、デッキでジャガイモの皮を剥きながら、

「ジョージ・ベネットって知ってる?」

「読んだことあるわ。ノルウェーのイプセンの作品は?」

「読むよ」

「シェイクスピアやディケンズも読むわ」

とマウントの取り合いをしていたのですが、


そこにUボートが浮上してきました。



一連の映像は本物のUボートの戦闘シーンから流用されています。



Uボートは船に艦砲を撃ち込み、船は全壊し沈没しました。
しかし制作予算の関係で肝心の沈没救出シーン等はいっさい無しです。


沈没から逃れた小舟がアルスタッドの村に帰着すると、ちょうど
カーリの女友達ゲルダの結婚式が行われていました。

船を沈没されたのに、ウキウキと結婚式に駆けつけるカーリ、
そんな彼女を「踊りが好きなんだ」と目を細めて見送る船長。

沈没の後誰一人傷一つ追わず、衣服も濡れずに帰還できたどころか
全員が事故について忘れてしまっているかのように陽気です。


しかし、アルステッド船長はちゃんとするべきことを知っていました。

彼はUボートに攻撃されたことを、パーティの席で
地元の警察署長、オットマン・グンターに報告しますが、この警察署長、
ドイツ寄りの立場であるせいか、船長の報告を軽く受け流します。

しかも貴社のメトカーフにに向かって、あくまでお客として滞在しろ、
ここで余計なことをするな!と釘まで刺してくるのでした。



おまけにこの男、カーリに結婚を申し込んでいることもわかりました。
彼女に好意を持っているメトカーフには何かと面白くない人間です。



さて、ここはドイツ軍が駐留している某所。

司令部にやってきたグンター警部は、この体重0.1トンの司令官、
ウルリッヒ・ヴェッタウにメトカーフとUボートの件を報告しました。

ちなみにこの人、全くと言っていいほどドイツ人に見えません。
演じているのはフランシス・L・サリバンというイギリス人俳優です。

ちなみにこの人の痩せてた頃



グンターはヴェッタウ司令からドイツ軍の侵攻が近いことを知らされると
自分の地位と人気を利用して村人を「説得する」と力一杯約束しました。


その頃メトカーフはUボートの件を報告するためにオスロに向かっていました。


オスロのホテルに到着したメトカーフはそこでフランクに会いますが、
なんと自分がいつのまにかクビになっていたことを知らされます。

理由は、世界が注目する「アルトマルク号事件」が起こっている間、
アルステッドの船に乗っていて連絡が取れなくなっていたからです。

せっかくノルウェーに派遣した記者が、仕事せず行方不明なのですから
上層部の怒りもクビも、ごもっともといったところです。


メトカーフは漁船沈没の件をオスロの英国大使館に報告に行きますが、
大使館の駐在武官も何やら半笑いで微妙に真剣味がありません。
それでも何とか海軍に連絡をとってくれました。

つまり、誰もがこのとき次のドイツの目標が、
中立を標榜するノルウェーだとは思っていなかったってことなんですね。


しかし、メトカーフが、昨夜、在ノルウェードイツ大使館で行われた
ノルウェー政府の関係者を招待したパーティで、「火の洗礼」
(バプティズム・オブ・ファイア)という映画が上映され、
その内容がポーランドでの軍事作戦の記録だった、と報告すると、
新聞社は即座に彼のクビを撤回し、大ニュースだと盛り上がりました。

なんでそうなる。
っていうか簡単にクビにしたり取り消したりするな。


そのときホテルのロビーでは、メトカーフを訪ねてきたカーリに、
よりによってメトカーフの同僚の記者がウザ絡みしていました。

気の強いカーリはセクハラ記者を勢いよく平手打ちします。



彼女はメトカーフに、昨日村の近くの港にドイツ商船が来たこと、
軍艦ではないが巨大な船が3隻であったことを伝えに来たのでした。

「喫水線が深いのに、全く荷卸しをしていないの。
その『貨物』とは人間、つまり兵隊ではないかしら」

さすがは船長の娘で自身も船乗りです。
そして彼のために編んだ変な帽子を渡し、頬にキスして去って行きました。


ところが。

彼女と別れて乗り込んだタクシーは、そのまま彼を拉致し、
意識が戻ったとき、彼は船室に寝かされていたのです。

何のために?誰が彼を?


そしてついにヒトラーは軍をノルウェーに侵攻させました。
デンマークを一日で陥落させ、易々と上陸してきたという形です。

チャーチルは元からノルウェーの占領を目論んでおり、
ドイツのに対抗して英仏軍を上陸させましたが、
ヒトラーに察知されて先を越されていたため、
精強なドイツ軍にフルボッコにされてしまいました。

この時のことを、チャーチルはのちに自伝で、

「我々の最も優れた部隊でさえ、活力と冒険心に溢れ、
優秀な訓練を受けたヒトラーの若い兵士たちにとっては物の数ではなかった」


と回顧しています。



メトカーフが連れ込まれたのは、ドイツの民間船でした。
映画ではいっさい説明されませんが、彼は
ブレーメン港に向かう船に載せられたようです。

別に縛られるわけでも虐待されるわけでもなく、本人も怖がる様子もなく、
ドイツ人船長とチクチク嫌味を言い合う様子は、色々と謎です。

大体、拉致までして一介のイギリス人記者を船に乗せる理由って?


そしていきなり場面は6週間後、どこかのイギリスの海峡に変わりました。
このとき、とんでもない部分がカットされていたことがわかりました。



6週間前、ドイツの船に乗っていたはずのメトカーフが、
このシーンではなんの説明もなくイギリス軍艦に乗っているのです。

そこで改めて映画のストーリーを検索したところ、実はこの6週間の間に、

「英国の軍艦がメトカーフを乗せた船を妨害し、彼を解放するが、
英国に連れ帰る前に、フランス北西部からの英国の撤退作戦、
エアリアル作戦を支援するため、彼を降さずにシェルブールに行く」

という出来事があった(けどカットされている)ことを知りました。
こんな大事な部分のフィルムをカットしてんじゃねー(怒)


まあそれはよろしい。よろしくないけど。
シェルブールではドイツ軍の総攻撃が始まっていました。


そこでメトカーフは、空襲で負傷し、瀕死で路上に寝かされている
新聞社の同僚、フランクを発見します。

「とくダネだ。フランス軍に奇妙な命令が出ていて、橋を爆破しなかった」

と妙なことを言って彼はそのまま息絶えました。
ちなみに、この「伏線」は映画の中では永遠に回収されません。

そこで一生懸命考えたところ、おそらくノルウェーの戦いで、
ドイツ軍がフランス侵攻した際、

「フランス軍に奇妙な命令が出ていて、
なぜか橋を二つも爆破せず残していた」


という意味かと思われます。

・・思われますが、それが本当だったのか、そんなことがあったのか、
そこから先は調査が追いつきませんでした。<(_ _)>


続く。


映画「嵐を突っ切るジェット機」後編

2024-04-05 | 映画

1961年度作品「嵐を突っ切るジェット機」後半です。

ところでこの映画の主人公を演じた小林旭について調べていたところ、
まだご健在だったばかりか、まさかのyoutubeチャンネルまでありました。

マイトガイチャンネルー小林旭YouTube

さて、劉の行方を追っているという刑事花山が去った後、
榊拓次は彼の名刺を破り捨てました。

兄を疑っているということが面白くなかったのでしょうか。


やばい商売で成り上がった麻薬商人、劉に脅かされ、
英雄はスタッフの一人、千石に操縦させて沖縄にブツを運ばせました。

何も知らない千石は、沖縄に着くと商店に立ち寄ります。
当時の沖縄はアメリカ領なので、お店では英語で接客してきます。

「May I help you?」

「ジャ、ジャパニーズマネー、OK?」

千石は子供のお土産を買いに来たのでした。
これは映画的には「フラグ」というやつです。

彼はこの後、劉一味のやばい話を聞いてしまい、コロコロされてしまいました。


こちら兄の英雄の場末のパイロット集団?溜まり場では、
自衛隊休暇中の榊がまたもや全員を相手に乱闘を始めました。

その理由ですが・・何度見てもわかりませんでした。
なんか怒ってるんですが、全員滑舌が悪すぎて何言いあってるかも不明なの。

おそらくきっかけは、チコが吹いていたトランペットを
拓次が取り上げて吹いたことじゃないかと思います。

なぜ拓次がそんなことをしたかは・・・わかりません。
まさか寂しかったからとか?



マキは榊の態度を諌めるついでにどうして自衛隊に入ったか聞くのですが、
その答えがこれ。

「飛びてえからだよジェット機で!それだけだい」

マキはそんな拓次が、要するにスリルに身を晒していれば満足で、
アクロバット飛行ができなくなるとイライラして喧嘩をする、
要するに子供だと激しくなじるのでした。

全体的に意味不明だらけのこの映画の中で、かろうじて
この可憐なマキさんのセリフだけが、いつもまともすぎるくらいまともです。



二人が言い争っていると、折しも暴風雨が吹き荒れ始めました。
全員が外に飛び出し、一丸となって嵐の中飛行機の係留作業を行います。


そして、台風一過の次の朝、榊拓次とはぐれパイロット集団の間には
すっかり同志としての連帯感が生まれていました。


その晩は全員でジャズバーに繰り出し、マキと榊は
モダンジャズの調べに合わせ、謎のフォークダンスで盛り上がります。



榊はチコと仲直りし、彼の指名でロイク(楽隊用語)バンドとセッション。
トランペットとサックスどちらもプロ並みってすごーい(棒)

ジャズ、バイオレンス、スピード、そしてジェット。
当時の若者が夢中になった(シビレた)ものを満載してみました的な?



とりあえずマキのお説教はこの短絡的な男に響いた模様。
しかしアキラ、こういう顔をしたら許されると思うなよ?


その頃英雄の会社「太平洋航空集団」には、ヤバい仕事と引き換えに
ボスの英雄が劉から受け取ったビーチクラフトが届いていました。

何も知らないスタッフは大喜び。


しかし経理担当のマキは、飛行機購入の資金などないことを知っています。
まともすぎるくらいまともな彼女は英雄を問い詰め、
弟の拓次も兄の様子が何か変なことに気づきました。

兄と一緒に沖縄に行った千石がなぜ帰ってこないのかも不思議です。


拓次は郵便物配布の仕事を引き受け、ついでに
千石の実家を訪ねてみることにしました。

ざっと1ダースの子供が生息している千石の家では、彼の妻が
子供を叱りつけながら彼が元気かどうか無邪気に訪ねてきました。

千石の生死について何か隠している。
拓次はこのとき兄の嘘に気づいてしまったのです。



このとき、英雄の会社事務所には劉とその部下が忍び込んでいました。

警察に追われていることを知って、逃げ込んできた劉は、
英雄を脅かしながらまず事務所に身を隠します。


そんなことを何も知らないマキは、劉の件で英雄を糾弾していました。

「誰から聞いた!」

英雄が劉とつるんでいることをマキに教えたのはチコでした。
二人の会話を物陰で聞いていたのです。

それを知った英雄がチコをタコ殴りにしているところに拓次登場。

理由を問い詰める三人に向かって英雄は弁明を始めました。

英雄と彼らの父が戦後窮地に陥っていたところ、
闇屋の劉が麻薬の運搬を手伝わせて恩を売り、弱みを握って
断れない関係をずるずると今日まで続けてきたのだと。

そしてここでまたしても兄弟で殴り合いが始まるのでした。
殴りながら拓次が兄にいいます。

「飛んでみろ!飛ばねえから腐るんだぞ!
くそお、叩き直してやる!飛んでみろ!
死んだ親父が言っただろう!空は一つだってな!
俺と一緒に飛んでみろ!負けねえぞ!

あんた、パイロットなら飛んでみろ!とべ!飛んでみろ!」

(セスナに兄を押し込もうとする)


そして号泣

うーん・・・よくわからない。
要するに犯罪に手を染めた兄を責めてるんだよね?
飛ぶとか飛ばないとか、責めるポイントここじゃなくない?

兄の英雄は、どんな手段を使ってもここを維持し、
はぐれもの集団に飛ぶ場所を与えたかったと叫ぶのですが、
それに対し弟は「違う!違うんだ!」と泣きわめいて、もうカオス。

そして場面が変わったらいきなり全員がシーン・・・となって、
英雄抜きでこれからどうするか話し合っています。

もう理屈で理解しようとしたら負け、そんな映画。



そのとき事務所の倉庫から出火しました。

劉が火をつけ、どさくさに紛れて英雄を拉致して連れ出し、
一挙に治外法権の沖縄まで逃走しようとしています。
そこから海外に高跳びしようというのでしょう。

劉は追ってきたチコに操縦させ、部下はめんどいので射殺して、
スペアの操縦士として英雄を拉致し、ビーチクラフトで飛び立ちました。

榊拓次はセスナでその後を追います。



そしてこの映画最大のツッコミどころ。
一人で劉を追ってきて2回撃たれても死んでいなかった刑事が、電話で

自衛隊の出動を要請するのです。

ちなみに自衛隊が出動要請できるのは、自衛隊法によると、

治安出動
警護出動
海上警備行動
破壊措置命令
災害派遣
地震防災派遣
原子力災害派遣

で、指名手配犯の逃亡を阻止、というのはどれにも当てはまりません。


セスナでは追いつかないと判断した榊は、即座に空自基地に乗り入れ、
嵐が来るっていうのにF-86に乗り換えて後を追おうとします。

皆が止めるところを無理やり強行突破しようとしていたら、
出動要請が間に合って、なんと基地司令のフライト許可が降りました。

ビーチクラフトに万が一追いついたとして、そこからどうするつもりだ。
戦闘機にできるのは撃ち落とすことだけだぞ。


しかしそんな心配をよそに、ビーチクラフトを追って
嵐を突っ切るジェット機

空自は、
「This time lost contact on my weapon」
を通信してきます。

操縦中目が見えなくなった(何の病気だろう。飛蚊症?)チコの代わりに
英雄が操縦して、レーダーにかからないように低空飛行したからです。。

嵐をつっきれなかった榊は、すぐさま空自基地に引き返し、
米軍の協力体制を取り付けたので行くなという命令を振り切って、
今度はT-33に乗り換え、ビーチクラフトを追うために飛び立ちました。

行き先が沖縄なら米軍に任せたほうがよくない?
なんかこれ、ただ本人が飛びたいだけなんじゃ・・・。

っていうか、空自が新型機を見せたかっただけかも。

そして驚くことに、鷹の目を持つパイロット、榊は、
はるか上空から、追っていたビーチクラフトが停まっている島を発見し、
すぐさま戦闘機が着陸できる滑走路を持つ飛行場に着陸し、次の瞬間

ジープかっ飛ばして、ビーチクラフトの場所に辿り着いていました。

この手際の良さ、さすが自衛隊出動要請されていただけのことはあります。


そこに目の見えないチコが、榊に駆け寄ってきました。

「ジェット〜!ジェット〜!」(初めて聞くけど榊のあだ名らしい)

なぜ彼は榊が来たのがわかったのでしょうか。
というかあんた目が見えないんと違うんかい。


榊はここで劉の一味から銃撃されたり、相手を拳で制圧したりして大暴れ。
マイト炸裂ってやつですか(意味不明)

しかしこの騒ぎの間、銃弾を受けた英雄は、すでに死にかけていました。

自らも傷つきながら駆け寄った弟に、彼が最後に言った言葉は・・。

「空は・・・そらは・・・ひとつだ」

がくっ。


♬パンパパーンパンパパーンパンパパンパパン!♫



えーと、多分これは自衛隊記念日かなんか?
榊は無事に空自のパイロットとして復帰しました。



マキさんからはチコの目も手術で治ると聞き安心です。
チコ、国民健康保険には加入していないと思うけど治療費大丈夫かな。



そのとき、フライトチームから声をかけられた榊は、

「マキ、俺のこと見てろよ!」

というやダッシュしてT-33(かしら)に乗り込み、



華麗なアクロバットを披露するのでした。

きっと彼の心には兄の「空は一つ」という言葉が
これからも生き続けることでしょう。知らんけど。



しかしこんな企画、よく空自の協力許可貰えたな。


終わり。


映画「嵐を突っ切るジェット機」前編

2024-04-02 | 映画

相変わらず精力的に自衛隊イベントに参戦しておられるKさんが、
ある航空自衛隊基地訪問イベントの後、現地で見つけたという
空自を扱った映画のポスターの写真を送ってくださいました。

世の中には、自衛隊を素材にした映画が結構あったみたいですね。
名作がなかったせいか、他の理由か、全く世に知られてはおらず、
わたしもそのどれもに見覚えがなかったのですが、
そのうちの一つがアマプラで観られることがわかったので、
ここで紹介させていただくことにしました。

1961年日活作品、マイトガイ(て何?)小林旭が、
アウトローな空自パイロットを演じた「嵐を突っ切るジェット機」です。

あーもう、このタイトルだけで駄作の匂いがプンプンするぜ。
タイトルとしてまず語呂が悪く、収まりが悪い。
名は体を表すという言葉の通り、名作は名作らしいタイトルを持ちますが、
このタイトルからは何のオーラも感じません。

当作品は2024年現在、奇跡的にAmazonプライムで視聴可能なので、
わたしには珍しく、今回はオンラインデータを元にログ作成しました。

挿絵も巷に流布している元画像の粗いポスターを参考に描いたため、
もはや小林旭に見えない誰かになった訳だが、まあ許してくれ。


さて、1961年日活作品、それだけで色々とツッコミどころありすぎですが、
とりあえず鑑賞において押さえておくべき時代背景は次の三つ。

1. ブルー・インパルスが発足したばかりの時期

2.  
 沖縄は返還されていない

3. 解決の手段としての暴力が社会的に容認されていた


まず1について。
「源田サーカス」で名を馳せた海軍パイロット出身の
あの源田實が航空幕僚長に就任したのが昭和34(1959)年。

空自のアクロバット飛行は、当初、アメリカ帰りのパイロットが
浜松基地で訓練の合間にクラブ活動的にというかこっそり行っていました。

就任した源田航空幕僚長は、自分の経験を踏まえ、これが隊員の士気向上と、
一般人を惹きつける宣伝効果に大いに役立つことから、
アクロバット飛行チームを制式化するよう推し進めます。

このことは、危険な曲技飛行訓練中万が一事故が起こった場合、
非公認のままでは補償が行われないということも考慮された結果でした。

2については、本作の「悪人」(第三国人)が、
地外法権の沖縄経由で逃げようとするというのが話の要となっております。


そして、3。
「すぐ殴り合いが始まる」

こいつが主人公の榊1尉(小林旭)。
この時代に1尉ということは、戦後浜松にできた航空学校の
初期の航空学生であったという設定なのだと思うのですが、
とにかくこの男のキャラがいかにも昭和のヒーロー。

最初のシーンでは浜松の航空記念日に空自音楽隊をバックに

 赤い雲 光の渦よ 青い空 成層圏を吹き抜けりゃ 
フライトOK視界でも 嵐を突いて 歌い抜いて
ジェット〜ジェット〜ジェット〜空を切る♬

という恥ずかしい歌を得意げに披露。
(そういえばマイトガイは本業歌手)

この頃は「ジェット」という言葉が時代の最先端で、
(あの名曲『ジェットジェットジェットパイロット〜』もこの時代)
ブルーインパルス隊長を演じる芦田伸介も、

ジェッツの魅惑を君にも味合わせてやりたいよ」

という、共感性羞恥で身悶えしたくなるセリフを言わされております。



そしてこの主人公、自衛官のくせにろくに敬語を使わない。
誰に対しても偉そう。すぐ「ちぇっ」とかいう。
なぜかサックスをプロ並みにこなす(ただし指はぴくりとも動かない)。
そして、何かというと人を殴る。理由より先に手が出る。足がでる。

というわけで、この映画、筋書きが全く頭に入ってこないんです。
何かあると殴り合いが始まって、そのシーンが無駄に長いので、

何のために殴り合っていたのか終わる頃には忘れているという・・。

ちなみにこの時代には「ハラスメント」なんて言葉毛ほども存在してません。

夕焼けの河原で不良同士が殴り合って傷だらけで倒れるも、
顔を見合わせた次の瞬間熱い友情が生まれていた時代です。

軍隊の鉄拳制裁は、敗戦と民主化を経てもまだ根深く残っており、
学校で教師が体罰をしても誰もがそれを当然と思う、それが昭和でした。



本作の数少ない見どころは、空自全面協力による
初代アクロバットチーム、F-86セイバーの飛行シーンです。

おそらく、航空自衛隊としては、この映画によって、
アクロバットチームの魅力が世間に認知され、あわよくば
入隊志願者も増えることを期待して制作に協力したのだと思います。



オープニング早々、セイバーのアクロバット飛行が始まります。
もうすでにこの頃チーム名称は「ブルーインパルス」となっていました。


ところがいきなり隊長機が墜落。
ちなみにこれ芦田伸介(当時53歳)演じる杉江二佐です。



アキラ、びっくり。
わたしもある意味びっくりですよ。
航空自衛隊の広報映画で初っ端にブルーインパルス墜落って。



そして、自衛隊上層部はこの事故を受けてアクロバットチームを解散。
「国民の税金を使うからには無茶できない」が理由です。


物分かりの悪い上層部へのやるせない怒り。
榊1尉は、セイバーのインテイクに向かって思わず咆哮するのでした。

「ばかやろ〜!(×4回)」

しかし、インテイクからは何の答えもありません。
あたりまえだ。

それどころか上に喰ってかかったことで金沢基地に転勤決定。
浜松→金沢は左遷ってことでOK?



ここでも「暴れん坊」榊1尉は無茶苦茶やりまくり。

無断でアクロバット飛行して罰金(って制度自衛隊にある?)、
しかも何度もやりすぎて罰金が払えなくなり、代わりに床掃除。

ヘラヘラした態度がなってないと水をかけてきた同僚(一緒に左遷された人)
と殴りあいをして、ついに基地司令の呼び出しを喰らいました。


司令は彼に10日間の飛行停止と「休暇」を命じました。

どうもこの二人の様子を見るに、これは「温情判決」らしい。
榊はほくそ笑み、司令は彼が出て行ってから部下と苦笑い。


榊は休暇中、彼の兄が経営するセスナを扱う飛行機会社で、
亡くなった杉江二佐の妹、マキの手伝いをすることにしました。

マキを演じているのは浅丘ルリ子?と思ったのですが、当時人気で、

5年間だけ活動し、結婚を機にあっさり芸能界から引退してしまった、
笹森礼子という女優さんです。


飛行場に着くと、榊はどういう経緯かここでパイロットをしている
元米軍の副操縦士、チコが目薬を差しているのを見て、
大丈夫か聞くのですが、その時無神経な榊が、よりによって彼を
「黒ちゃん」呼ばわりして怒らせ、殴り合いが始まります。

黒ちゃん・・アウトー。



しかしマジな話、こんな米軍の黒人パイロット上がりっていたのかな?

タスキーギ・エアメンも1948年には解散していたし、
海軍の黒人パイロットが最初に誕生したのは朝鮮戦争の時、
ジェシー・ブラウンという人だけだったというし・・・。

ジェシー・ブラウン/彼を主人公にした映画が現在制作中

副機長ってしかも士官だったってことでしょ?
だったらなぜ日本なんぞでこんな怪しげな仕事を?・・ないよなあ。

さて、チコは目の調子が悪いのではと疑う榊とマキを振り切って、
ビーチクラフトでビラまき(当時はそんな仕事があったんですよ)
に飛びますが、突如目が見えなくなり(おいおい)着陸に失敗。


さっそく運輸会社社長の榊の兄(戦時中は戦闘機乗り)が飛んできて、
チコの無事を確かめるより先に、馬鹿野郎と罵り、何発も殴打するのでした。

絵に描いたようなパワハラ。
さすがは元海軍戦闘機乗り。鉄拳制裁のDNA健在です。

兄の仲間というか手下として集まってきているのは、チコ以外にも
全てがいわゆる「パイロット崩れ」の半端者ばかりでした。


彼はこの半グレ集団を何とか食わせていくため、必死なのですが・・。



その兄、英雄(葉山良二)は、戦後闇屋上がりで財を成した三国人、
劉昌徳から、昔手伝わされたやばい仕事をネタに恐喝&買収されていました。

映画では「三国人」と何回も言っているのですが、この名前は中国系。
三国人の解釈は色々あるようですが、この映画では単純に
「非日本人」という意味で使われているようです。

劉は警察に睨まれている自分の代わりに、英雄に
何か(多分麻薬)を運ばせようとしているのでした。


そんな劉の動きは当局にもつかまれていました。
この刑事は、英雄と「同期」なんだそうです。

なんの同期だろ。海軍かな?

聞き込みに来た刑事に、榊拓次は太々しく、

「あんたデカさんだね?」

すると刑事も仲間を劉に二人やられていることを打ち明けついでに、

「君は自衛隊員だから(警察である俺とは)兄弟みたいな間柄さ」

それは・・・どうかな。

榊、この刑事の来訪と捜査の目的が気に入らんらしく、激昂して
刑事の胸元を小突き、あわや公務執行妨害になりかける始末。

このキレやすさ、戦後の食糧不足でビタミンが欠乏しているに違いない。

あらためて思う。
この映画の主人公が自衛官である必然性はどこに?

続く。