国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

ロシアとの戦略的連携を深めるフランス

2009年12月01日 | 欧州
●露のガスパイプライン、仏社の出資で合意 2009年11月28日 読売新聞

 【パリ=林路郎】フランスのフィヨン首相とロシアのプーチン首相は27日、パリ近郊ランブイエで会談し、ロシア産天然ガスをウクライナを経由せずに欧州へ送るロシアのパイプライン建設事業体2社に仏企業が出資することで合意した。
 エネルギーの安定供給を望む仏と、経済危機のあおりで資金不足に悩む露側の思惑が一致した。両国は仏軍艦船の売買交渉に続き、戦略的協力を深める形となった。
 合意によると、電力・ガス大手の仏GDFスエズ社は、ロシアからバルト海を経由してドイツへ天然ガスを送る「ノルト・ストリーム」計画の合弁企業体に10%を出資する。また、エネルギー大手の仏電力公社は、ブルガリアやギリシャ経由でイタリアへ送る「サウス・ストリーム」計画の企業体に約10%を出資する。
 欧州連合(EU)は、ドイツ、ハンガリー、トルコなど6か国が共同出資して中央アジア産天然ガスをロシアを経由せず欧州に送る「ナブッコ」計画を進めているが、フランスはEUの中心メンバーでありながらロシアと提携する道を選んだと言える。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20091128-OYT1T00815.htm





●露、仏の最新鋭揚陸艦購入交渉…周辺国は懸念 2009年11月28日 読売新聞

 【パリ=林路郎】ロシアのプーチン首相は26日、パリでフランスのフィヨン首相と会談し、ヘリコプター空母としての機能を持つ仏海軍の最新鋭強襲揚陸艦「ミストラル」級の購入について協議した。
 ロシアが北大西洋条約機構(NATO)加盟国に大型兵器の輸入を打診するのは極めて異例。合意すると初のケースとなるが、ロシアに接するリトアニア、エストニア、グルジアなどは安全保障上の懸念を深めている。
 プーチン首相は27日、パリ近郊ランブイエで記者団に、「(購入を)最終決定したわけではない」と述べたが、仏紙フィガロによると、交渉はすでに最終段階に入っているという。
 ミストラル級は仏海軍が2隻を建造し、2006、07年にそれぞれ就役。現在3隻目の建造が進んでいる。全長約200メートルに達し、要員1000人程度に加え、ヘリコプター16機を搭載し、6機の同時離陸が可能。戦車13両も搭載でき、作戦指揮艦、病院船としての機能も持つ。推定価格は5億ユーロ(約650億円)。
 同紙によると、ロシアは昨年のグルジア侵攻で兵員派遣に手間取ったことへの反省から、ミストラル級に関心を持ったという。サルコジ仏大統領はグルジア危機の際、欧州連合(EU)議長国の元首としてロシアとグルジアの停戦を仲介しており、軍艦売却を目指す今回の攻勢は国際社会の反発を招く可能性がある。
 ロシアはミストラル改良型1隻の購入に加え、フランスからの技術移転を受けてヘリ空母4隻を国内で建造したい考え。技術獲得による海軍力強化が狙いとみられる。仏海軍は、プーチン首相の訪仏前の今月下旬、ミストラルを首相の地元サンクトペテルブルクに入港させ、露海軍将校などへのお披露目も済ませている。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20091128-OYT1T00304.htm





●仏、ロシアへの揚陸艦売却大詰め グルジアなど反発2009年11月30日 朝日新聞

 【パリ=国末憲人】フランスとロシアの間で、仏ミストラル級強襲揚陸艦の売却交渉が大詰めを迎えている。仏メディアによると、北大西洋条約機構(NATO)加盟国からのロシアへの軍艦規模の武器売却は初めて。グルジアなどロシアと対立する国々は反発している。
 ロシアのプーチン首相は26、27日、パリ郊外でフィヨン仏首相と会談。ガスパイプライン建設や自動車産業支援について合意した。揚陸艦の売却交渉は公式な議題でなかったが、両者は交渉が進展していると認めた。フィガロ紙によると、売却額は5億ユーロ(約670億円)前後。
 揚陸艦売却はロシアと欧州の軍事協力の進展を象徴するものと受け止められている。仏は、仏サンナゼールの旧海軍ドックでの新艦建造を条件にするなど、これを機に軍需産業の立て直しを図りたい考えだ。軍の近代化を進めたいロシアは、同艦を参考に自前で揚陸艦を建造できるようになることをもくろんでいるといわれる。
 ロシアと対立する国々は警戒を強めている。パリを訪問中だったグルジアのワシャゼ外相は26日、「非常に心配している。軍艦は黒海でグルジアやウクライナを脅すために決まっている」と述べた。反ロ意識の強いバルト3国でも反発は強く、リトアニア外相は「どのような状況でこの軍艦が使用されるのか、確認する必要がある」と懸念を表明。エストニア外相も「最新鋭の装備を積んでいるのかどうか知りたい」と話した。
 ミストラルはヘリコプター搭載の強襲揚陸艦で、満載排水量2万1500トン。病院並みの負傷者収容設備のほか、スポーツジムなども備え、「軍艦のロールスロイス」といわれるという。災害支援などにも使われている。
http://www.asahi.com/international/update/1129/TKY200911290221.html





【私のコメント】
フランスとロシアは、反ロシア感情の強いウクライナ・ポーランド・バルト三国を通過しないガスパイプラインにフランスが出資することで合意した。ウクライナ・ポーランド・バルト三国はこの動きに懸念を強めているはずである。また、ロシアはフランスの最新鋭強襲揚陸艦「ミストラル」級を購入し、その後フランスからの技術移転を受けてヘリ空母4隻を国内で建造したい考えだという。グルジアやバルト三国はこの軍艦の脅威に直面することになる。

一方でフランスは昨年のグルジア紛争の解決を仲裁している。また、グルジアを通過するであろうナブッコ計画はロシアを経由しないパイプラインルートとしてEUが推進しており、フランスはグルジアを見捨てるつもりはないと思われる。グルジアとロシアの実質的な境界線は恐らく現状維持のままで今後推移するのではないかと思われる。

このような事態から見えてくるのは、欧州で主導権を握る独仏連合とロシアのような大国の地位が上昇し、小国は地位が低下するであろう、ということである。グルジア・バルト三国のような小国はロシアの軍事力に怯え、西欧諸国の軍事力に縋りながら生きて行かねばならない。現在のように反ロシア政策を採ることさえ困難になっていくことだろう。

各国が自国の国益を追求するパワーポリティクスの世界では、大国のみが自立したプレーヤーである。アメリカ一極時代には地域大国と小国は同格だった。しかし、多極化する21世紀の世界システムでは、各極を形成する地域大国と小国の国力の格差が拡大することになるだろう。東アジアでは、日中印露の四カ国が全てを取り仕切る時代になると私は予想している。










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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2009-12-04 03:59:28
Unknown (Unknown)
2009-12-04 03:57:45
アメリカ国債の大量売却が開始された。
http://www.teamrenzan.com/2009/12/241.html
(ブルームバーグ):マーケット・ニュース(MNS)は3日、日本政府が国内プログラムの資金を調達するため米国債1000億ドルの売却計画を米政府に通達
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Unknown ( )
2009-12-08 05:39:00
中国は外した方が世界の為
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