POWERFUL MOMが行く!
多忙な中でも,美味しい物を食べ歩き,料理を工夫し,旅行を楽しむ私の日常を綴ります。
 





 妻がスタイリーという飲み物を買ってきました。私に飲んでみたらと勧めてきます。

妻「そろそろ中性脂肪が気になる歳よね。」
私「チュウセイシボウって?」
妻「特保なのよ。」
私「トクホって?」
妻「スタイリーには中性脂肪を減らすモノグルコシルヘスペリジンが入っているそうよ。」
私「モノ、、、グリコ、、、ペニシリン?」

 会話が成立しませんでした。あまりにも知らないことが多すぎたので、知らない言語を話す外国人に話しかけられたかのようです。妻は栄養士の資格を持っているので、食品に関する知識は豊富です。日々、知識を増やす努力もしています。今度同じような話題で話しかけられたら、会話が成立するように調べることにしました。



 妻の会話に出てきた「トクホ」とは、「特定保健用食品」を短縮したもので、「特保」と書かれるようです。「がんが治る」などと効能をうたって商品を販売すると、医薬品の無許可販売となり、薬事法違反に問われます。2012年7月9日の産経新聞によると、長野県の業者が「がんが治る」などと言って、お茶を販売したため、薬事法違反の疑いで逮捕されました。



 特定保健用食品には、「疾病リスクが低減します」という表示が容認されます。その科学的根拠が医学的・栄養学的に広く認められ確立されているものは、この表示が許されるのです。茶飲料のメーカーとしては最大手の「伊藤園」の「スタイリー(Stylee)」のボトルには、「本品は、中性脂肪を減らす作用のあるモノグルコシルヘスペリジンを含んでおり、中性脂肪が高めの方や脂肪の多い食事を摂りがちな方に適しています。」と表示されています。

 これが容認される「疾病リスク低減表示」なのでしょう。ただし、この表示には制限がつきます。疾病には多くの危険因子があることや十分な運動も必要であることなどを表示し、過剰摂取に十分配慮した表示をつけなければならないのです。そこで、「1日1回1本を目安にお飲みください。多量に摂取することにより、疾病が治癒したり、より健康が増進できるものではありません。」という表記がスタイリーでは追加されます。

 「食後の血中中性脂肪が上昇しにくいまたは身体に脂肪がつきにくい」表示をした食品というジャンルには、例えば、2008年1月21日に「特定保健用食品」との表示を許可された「花王」の「ヘルシア緑茶」や2010年3月19日に許可された「サントリー食品」の「黒烏龍茶OTPP」(OTPPとは、ウーロン茶重合ポリフェノール(Oolong Tea Polymerized Polyphenols)の略称。OTPPはウーロン茶の半発酵過程中にカテキン類が重合して生じるウーロン茶特有のポリフェノールで、リパーゼ阻害活性を有すると考えられている)などがあります。「伊藤園」の「スタイリースパークリング」は、2012年4月17日に許可されています。

 今年(2012年)、特定保健用食品の表示許可を担当する「消費者庁」は、次のような内容の通知を食品会社や製薬会社727社(2012年7月現在)が会員である「公益財団法人 日本健康・栄養食品協会」にします。

 特定保健用食品の表示許可を受けた食品の中には、TVコマーシャルや広告などにおいて、あたかも当該食品を使用すれば、バランスの取れた食生活を考慮しなくてよいと受け取れるような表現が用いられているものがある。これは、偏った食生活を助長するおそれがあり不適切で、特定保健用食品の表示許可制度の趣旨を逸脱する。改善を望みたい。

 問題となったテレビCMは、「笑ゥせぇるすまん」(原作:藤子不二雄A)のキャラクター「喪黒 福造」に「脂肪にドーン」と言わせて、「黒烏龍茶」を摂取していれば脂肪を多く摂っても大丈夫と消費者に思わせてしまう内容のものです。私もこのコマーシャルを見ていて、疑問に思ったものです。必要以上のカロリーを摂取することが健康にいいはずがありません。このCMは、暴飲暴食をする人に免罪符を与えるようなものです。

 サントリー食品の「黒烏龍茶OTPP」は、次のような科学的根拠に基づいて、特定保健用食品の表示許可を得ています。

 (1)血清トリグリセライド値(血清TG値)が100~250mg/dlの成人男女を対象に、OTPP強化烏龍茶とプラセボ飲料を使用し試験を行った。その結果、OTPP強化烏龍茶の摂取により、プラセボ群と比べ高脂肪食摂取後の血清TG値の値が、摂取3時間後、5時間後で有意に抑制された。
 (2)健常成人男女を対象に、OTPP強化烏龍茶とプラセボ飲料を使用し、便中脂肪排泄量に及ぼす影響を検討した。その結果、OTPP強化烏龍茶の摂取により、プラセボ摂取と比較して、便中脂肪排泄量は有意に増加した。

 内閣府「食品安全委員会」のページで、面白い文書「「黒烏龍茶」に係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)」を見つけました。食品安全委員会が食品安全基本法に基づき、厚生労働省より「黒烏龍茶」の安全性の審査に係る食品健康影響評価について意見を求められたものに回答したものです。それには、「本食品の摂取に伴う脂肪の吸収阻害は最大で摂取量の7%程度と計算されている。」と書かれています。「黒烏龍茶」が脂溶性ビタミンの吸収を抑制する可能性はないかについて記述した部分にあります。

 「有意に」とは、「最大で7%程度」なのです。日本人の場合、食事中脂肪摂取量は1日40~70gほどだと言います。そのうち便中に排泄されるのは、7%程度のようです。すると、70g摂取した脂肪は5gほどが便中に排泄されます。65gほどは体内に吸収されるのです。ならば、黒烏龍茶を飲用しても65gの93%(100-7=93)である60g程度は、体内に吸収されてしまいます。単純に考えると、摂取する脂肪の93%は体内に残り、黒烏龍茶を飲用していても最少で86%は体内に残ります。現状維持で65gが体内に残るとして、黒烏龍茶を飲用する場合、75.6gまでの脂肪摂取が可能になります。5.6g余分に脂肪を摂取できることになります。食品成分表によると、カルビに用いられる牛ばら肉は、その50%が脂肪であり、焼くことによって脂肪は減りますが、それを考慮に入れないとすると、11g余計に食べていいことになります。脂肪が25%までに減ったとしても、22gほどになります。

 その程度の効果しかないと言うべきか、その程度でも効果があると言うべきか。国民の健康を増進させ、医療費の増加を抑制するには正しい食品に関する知識を「官」と「民」が協力して普及させなければなりません。「特保」に関する知識はある程度、仕入れました。次は「チュウセイシボウ」についてです。話が長くなったので、最後に特定保健用食品の表示許可の審査手続きについて述べて終わりにします。

(1)食品会社などは、消費者庁食品表示課に申請書を提出する。
(2)消費者庁は、消費者委員会新開発食品評価調査会に「安全性および効果」につき、諮問する。
(3)「効果」の判断をした新開発食品評価調査会は「安全性」につき、食品安全委員会新開発食品専門調査会に諮問する。
(4)「新規の関与成分の安全性」を中心に審査した新開発食品専門調査会は、消費者委員会新開発食品調査部会に答申する。
(5)「改めて安全性及び効果の判断」をした新開発食品調査部会は、厚生労働省医薬食品局に答申する。
(6)「医薬品の表示に抵触しないかの確認」をした医薬食品局は、独立行政法人国立健康・栄養研究所に「関与成分量の分析」を依頼する。
(7)消費者庁長官が「特定保健用食品」の表示を許可する。

※(妻「あみ」から) 食物繊維は、人間の消化酵素では消化されない食物中のすべての成分(「難消化性成分」)です。水溶性と不溶性に分類することができ、不溶性食物繊維に分類される「セルロース」は、穀類(外皮に多い)、野菜、豆類に多く含まれ、ヒトの消化液では消化できません。柑橘類、バナナ、人参、キャベツなどには、水溶性のペクチンが含まれ、水溶性食物繊維は食物中の脂質をその中に取り込み排出する作用があると言われています。脂肪分の多い食事を避け、必要量以上の脂質を摂らないのが最善ですが、脂質とともに水溶性繊維を含む食品を摂ることを心がけるのもよいことと思われます。

(参考)「特保って? チュウセイシボウって? モノグルコシルヘスペリジンって?(2)

(参考)特保って? 中性脂肪って? モノグルコシルヘスペリジンって?(3)

(参考)「スタイリースパークリング」という飲み物と「モノグルコシルヘスペリジン」

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(1)

(参考)禁煙? 運動? モノグルコシルヘスペリジン? そしてフラミンガム心臓研究(2)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(1)

(参考)コレステロールには、悪玉も善玉もなく、人体に欠くことができない物質(2)

(参考)家族性高コレステロール血症とHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)

            (この項 健人のパパ)

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