POWERFUL MOMが行く!
多忙な中でも,美味しい物を食べ歩き,料理を工夫し,旅行を楽しむ私の日常を綴ります。
 





 昨日(2009年10月7日)、日本テレビの「NNN News リアルタイム」の「リアル特集」では食物アレルギーに苦しむ子供達を扱った「食物アレルギー」を放映していました。私は栄養士の資格を持っており、以前から食物アレルギーに対して強い関心を持っていたので、真剣に見てました。

 食物アレルギー(food allergy)とは、特定の食物を摂取するとアレルギー症状を起こすこと、またはその体質(「食物アレルギーがある」という表現で)を言います。食物アレルギーを引き起こす食品はいろいろですが、特に小麦、そば、卵、乳、ピーナッツは発症数、重篤度からまず挙げられます。一般に、主なアレルギー症状として腹痛、下痢、湿疹、蕁麻疹、くしゃみ、咳、鼻汁、喘息発作などがあります。

 重篤なアレルギー反応は、「アナフィラキシーショック」です。血圧低下、呼吸困難などの重篤な全身症状を呈し、死亡することも少なくありません。前駆症状として、口の中に異常を感じ、口唇や手足が痺れる感じがし、顔や上半身が熱っぽく感じます。喉がつまり、胸に痛みを感じ、動悸がはやまり、吐き気なども襲います。次いで、血圧が低下し、脈拍頻数が微弱になり、チアノーゼが現れ、呼吸困難、喘息様発作なども現れます。さらには、意識消失、痙攣、失禁なども出現するといいます。

 アナフィラキシーショックは発症が非常に急激で、かつ気道の閉塞を伴います。死亡例の大多数は症状出現後30分以内です。原因食物の摂取後、薬物の服用後、ハチ類の刺傷を受けた後などに、皮膚症状、鼻咽頭症状があれば、気道の確保と酸素吸入が必須なので、直ちに病院に搬送する必要があります。それほど怖いものです。しかし、私の経験では、子を持つお母さん方にこの知識が不足している人が結構います。スーパーなどで子供が食物アレルギーを持っているにもかかわらず、子供に目を配っていずに、子供が勝手に試食をしてしまい、大騒ぎになることもあると聞きます。

 「食物アレルギーは専門医だけが診療していればよい時代ではなくなっており、一般医にも正しい知識を持って対応してもらう必要があるほど食物アレルギーの患者は増加している。乳児では約10人に1人、3歳児では20人に1人、学童では50人に1人程度と推定されている。保育園、幼稚園、学校における食物アレルギー患者への給食の対応や誤食し症状が出現したときの対応は重要である。」(「母子保健」2008年3月号より、国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部長 海老澤 元宏氏)

 食物アレルギーの子どもは、両親や親族などにアレルギー疾患を持っている人がいる場合がかなりあると言われています。そのため、アレルギー疾患を持っている人がいる場合は「ハイリスク児」と呼ばれ、原因食物を除去した食事が母親に推奨されます。しかし、必ずしもその効果が確かめられているわけではありません。妊娠中の母親が卵・牛乳といった食べ物を除去しても効果がなかったとする研究もあります。栄養の偏りを避けるには、除去が難しい場合もあります。しかし、ピーナッツについては食べなくても栄養の偏りが起こるわけではないので避けたほうがいいのかも知れません。授乳中の母親の原因食物の除去には、対立する研究成果が存在し、その効果は現在のところ不明です。最近、授乳中の母親への原因食物の除去が有効であるとする報告もあるようです。



 上の息子の生後1ヶ月の検診の際に、某乳業会社の栄養士から半ば強要される言い方で、「そろそろ果汁を与えるように。」と栄養指導を受けたことがあります。私は、これには反発を感じました。早期の離乳開始は、アレルギーを発症しやすい体質を作るのではないかと考えていたからです。一律の個人差を考慮しない、企業の販売戦略のような「栄養指導」は、当時、当たり前だったようです。

 私は、栄養士の勉強を学校でしていた頃から、妊娠中や授乳中の栄養摂取に非常に関心を持っており、さまざまな本を当時読んでいました。若い頃、突然にアトピー性皮膚炎を発症したり、慢性気管支炎になった経験がありましたから、この体質を子供に受け継ぐことを避けたいと、結婚し妊娠すると、妊娠後期から蛋白質のコントロールを実施しました。また、出産後は、すべて「母乳」で育てたので、食物感作でのアレルギーを考えて、卵や牛乳は、過剰に摂らないようにコントロールしました。

 先日、インフルエンザの予防接種にかかりつけの小児科に出かけました。そのときに、先生と20年前の離乳食の早期開始の話題が出ました。「小児科医としては、離乳食は生後6か月以降に行うことを昔から提唱していたのですよ。にもかかわらず、早期に離乳食を開始させるという行き過ぎた栄養指導が行われ、それを信じた母親が早期に離乳食を始めてしまって、子供がアレルギーになってしまう事例があったんですよ。今は、むしろアレルゲンを考慮して「ゆっくりと、個人差を重視した離乳を」と栄養指導も変ってきています。」「では、アレルギーの子供の患者さんは、少し減ってきているのでしょうか?」「そう言えば、一時期より減っているような気がしますね。」

 夫も花粉症を持っているので、私達のような夫婦からは、アレルギー体質の子供が生まれやすいと言えます。現在では、離乳開始を急がずに、「ゆっくり離乳を」という栄養指導が行われるようになったようで、ホッとしています。上の息子の赤ちゃんの頃は、「アトピー」という言葉が流行のようになっていた時期です。私には、「早期の離乳」を勧めたためにアトピー体質の赤ちゃんを多く作り出してしまった原因のひとつのような気がします。

 「減感作療法」というものがあります。アレルギー疾患に対し、原因抗原を定期的に投与し、原因抗原に対する過敏性を低下させようとする治療法です。脱感作療法、免疫療法とも言われます。食物アレルギーに対しては、原因食物を少量ずつ与え、原因食物に対する過敏性を低下させていきます(「経口減感作療法)。投与量が適切でないと症状の増悪(悪化)やアナフィラキシーショックを起こすことがあるので、細心の注意が必要です。

 「授乳中の母親が摂取した食物中のたんぱく質が原因で、離乳食開始前の乳児に食物アレルギーが起こり、湿疹ができることがあります。まだ口から食事をとっていないため、食物アレルギーに気づきにくいため、注意が必要です。」(国立病院機構相模原病院部長 海老澤 元宏氏)

 「リアル特集」によると、「独立行政法人国立病院機構相模原病院」では、経口減感作療法が行われているようです。医師のもとで行われる経口減感作療法は、現在のところ、食物アレルギーのある子供の90%ほどに効果があるようでした。特集では、牛乳2mℓで呼吸困難や蕁麻疹などのアナフィラキシーを発症する小学生の数人が、入院と治療で200mℓも牛乳を飲んでも症状が出なくなる例をみました。

 食物アレルギーは、食べたい物でも食べられない、栄養の摂取に必要な食品を食べられない、という宿命を子供たちに与えてしまいます。研究がさらに進んで、その宿命が取り払われる日の来ることを願っています。

(追記)

 「乳児期発症の食物アレルギーの大多数が適切な対応により自然寛解が期待できるのが特徴であり、大豆・小麦・牛乳・鶏卵の順で耐性が獲得されてくることが多い。しかし、幼児・学童・成人期に新たに食物アレルギーを発症してくるケースも認められ、アレルゲンとして魚類、エビ・カニ、果物、野菜などがある。果物や野菜による口腔アレルギー症候群が増加している印象を受ける。比較的稀な疾患ではあるが食物依存性運動誘発アナフィラキシーも小学生以上で魚介類・小麦などが原因として認められている。」(「母子保健」2008年3月号より、国立病院機構相模原病院臨床研究センターアレルギー性疾患研究部長 海老澤 元宏氏)

※ 自然寛容 … 年齢とともに自然とアレルギー反応を起こさなくなること。
※ 口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome) … 果物・野菜などを食べてほぼすぐに、食べ物に直接触れた唇や舌、喉の奥が痒くなったり腫れたりする症状。原因食物は、バラ科の果物(桃、リンゴ、梨、サクランボ、苺など)、ウリ科の植物(メロン、西瓜など)などが中心ですが、キーウィ、バナナ、トマト、ジャガイモなどでも起こします。
※ 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis) … 特定食物(小麦、エビ、果物など)摂取後、2~3時間後に運動するとアレルギー反応を起こす病態。アスピリン製剤の使用により誘発されやすくなるそうです。

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