海辺のねこ

どんな日もかけがえのない一日。

「生命は」

2014-01-21 | 日記
バタバタ、ゴトン。
先日、父に会いに行ったときのことだ。
何もぶつかるものがないはずの広い境内に車を停めていたとき、いきなり凄い音がした。
驚き、音がした運転席側のドアミラーあたりに目をやると、そこには羽根を休めるウグイスの姿があった。

思わず頬がゆるむ。
(あぁ、冬真っ只中だと思っていたけれど、春は確実にやってきている)
癒され、励まされた。自然界から贈り物を頂いた気分だ。

ほんの一瞬の出来事だった。
一瞬のうちに、心が和んだ。
そのウグイスは、私の心の変化に気付いただろうか?

目や耳にしたもの、触れたもの。
香りにも。
心救われることがある。
相手に全くそんな意識が無かったとしても。

この方が紡がれた言葉たちにも、随分救われた。励まされた。
昨夜、改めてゆっくりと詩集のページをめくってみた。

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 生命は     吉野弘

生命は
自分自身だけでは完結できないように
つくられているらしい
花も
めしべとおしべが揃っているだけでは
不充分で
虫や風が訪れて
めしべとおしべを仲立ちする
生命は
その中に欠如を抱き
それを他者から満たしてもらうのだ

世界は多分
他者の総和
しかし
互いに
欠如を満たすなどとは
知りもせず
知らされもせず
ばらまかれている者同士
無関心でいられる間柄
ときに
うとましく思うことさえも許されている間柄
そのように
世界がゆるやかに構成されているのは
なぜ?

花が咲いている
すぐ近くまで
虻の姿をした他者が
光をまとって飛んできている

私も あるとき
誰かのための虻だったろう

あなたも あるとき
私のための風だったかもしれない

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吉野弘さん、たくさんの心に響く詩をどうもありがとうございました。
新しく生まれる言葉にふれることができないのは哀しいけれど・・・。
今まで頂いたたくさんの言葉たちを、心の中で温め続けます。

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