海辺のねこ

どんな日もかけがえのない一日。

秋海棠

2012-09-09 | ねこからの手紙


今年も。
わが家の庭に、秋海棠(シュウカイドウ)が咲き始めました。

随分前になるのだけれど。
いつの年だったか、種を庭のいたるところに撒いている姿を見ました。
もともとよく繁殖する植物なのにね。
余程気に入っていたのでしょうか。

ハート型の葉っぱの片側が大きいことから、花言葉は「片思い」。
夏頃から、たくさんの芽を出し葉を広げました。
もうすぐたくさんの花が咲き揃い、
思いのいっぱい詰まった庭になりそうです。

切っては、花瓶に生けていましたね。
可憐なピンク色の花、今年も咲きましたよ。



本と、写真と、椎名さんと。

2012-09-08 | ひと


20代の頃から、写真の世界にとても惹かれるようになり、
いろいろな写真集を観たり購入したり写真展に足を運ぶようになりました。

椎名さんの撮る写真に出逢ったのも、その頃。
『小さなやわらかな午後』(本の雑誌社)は、私のお気に入りです。
中でも、冒頭のやわらかな光の中での少年の散髪シーンは、
微笑ましくて心までやわらかくなるようで好きです。

被写体は、カメラマンである椎名誠さんの息子さん。
息子さんをモデルにされた『岳物語』という作品がありますが、
とても素敵な子ども時代を過ごされていて、羨ましいほど。
そこに登場する大人たちもとても魅力的です。
子育て中の方も、そうでない方も、是非読んで頂きたいなぁ。

『岳物語』から始まって、小説・エッセイ・写真集・映画…。
そこから随分と世界が広がっていきました。
すっかりシーナワールドの虜です。



先日、椎名さんのお話を伺う機会に恵まれました。
その日が来るまで、わくわく・ドキドキ。
今まで触れたシーナワールドを思い返してみたりしていました。

そして今回。
改めてというかやっぱりというか、心に刻まれたことがあります。
それは「家族の写真」の素晴らしさでした。

『椎名誠写真館』(朝日文芸文庫)には、読んだ当初から付箋を貼ったままの箇所があります。
ご紹介しますね。

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よく写真は「真実」の真を写すものだというが、その“写真”とは被写体の真ではなくて、撮る側の「真」。撮る側の本当の気分や心が写されてしまうのだなあ、ということである。
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ファミリー写真ほど、撮る者の被写体に対する愛情が素直にあらわになっている世界はないように思う。
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『五つの旅の物語』(講談社)でも、
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写真のなかにもっとも熱い愛情あるまなざしが注がれるのが「家族の写真」である、というぼくの信念、いや確信は変わらなかった。親が子供を撮るときの慈しみほど大きく重いものはない。また逆に子供が親を撮るときにも同じくらいの大きな感情と尊敬と慈しみがあるはずだ。
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と語られています。



わが家は父が写真を撮ることが多かったため、何と私、父に抱かれた写真が1枚もありません。
赤ちゃんの頃は毎日お風呂に入れてくれて、おしめも換えてくれていたという父。
私自身も膝の上に乗せてもらったり、寝たふりをして運んでもらった記憶がたくさんあるのだけれど…。

だから、一枚もないことを淋しく思っていたんですよね。
でも考えてみたら、その分撮ってもらった写真があるということ。
大人になっても父が撮ってくれていましたから。

父も母も。
「写真を撮ってあげる」といっても、何故か「撮らんでもええわ」と言います。
あるとき、今を逃したら二人を一緒に撮る機会は無いかもと思い…。
無理やり連れ出し、写真撮影をしました。
その一枚は、私の大のお気に入り。
母も毎日見ています。



家族にしか引き出せない表情、家族にしか撮れない写真ってありますよね。




『五つの旅の物語』に使われているプロフィール写真は、椎名さんのお孫さんが撮られたものです。
観ているこちらが幸せ気分になるほどの満面の笑み!

やっぱり「家族の写真」は素晴らしい!
嫌がっても、これからもどんどん家族の写真を撮ろうと決意した私です。


家族を愛して、友人を愛して。
だからこそ、その先の多くの人間や生きものを愛せるのではないか。
きちんと世界に目を向けられるのではないか。
椎名さんの姿を拝見していると、そんな風に思います。


そうそう。
子どもの頃に読んだ本は、後々に大きな影響を与えるとおっしゃっていました。
絵本は子どもたちとの良いコミュニケーションツールとも。
大いに共感いたします。

読み聞かせを、たくさんしてあげましょう。
子どもたちにはたくさん本を読んで欲しいなぁ。
もちろん私たち大人も読みましょう!
世界が広がりますものね。



今回、貴重な機会を与えてくださったスタッフの皆さん。
本当にありがとうございました。
朗読、とても素敵でした。
同じ空間・時を共有した皆さんもありがとうございます。
そして何より、椎名さんに多大なる感謝を―。


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いちばん大切なものは「命」なんだなあ、と思うようになりました。同時に「生きていく」ということです。
「大きな約束」は、いつだって、誰だって、いちばん大切なことは、生きていくこと―です。
    椎名誠『続 大きな約束』(集英社)あとがきより
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『鬼の涙』

2012-09-02 | 
   


昨年訪れた朗読会のときのことだったでしょうか。
ちらりと触れられた「鬼の涙」というお話に惹かれるものがあり、
それ以来ずっと気にかかっていました。

そして、今年の5月。
書籍化されたことを知り、即購入。

自然と溢れてくる涙を拭うことなく、
じっくりゆっくりと読みました。



本日。
宮脇書店総社店さんにて「鬼の涙 ブックトークと生演奏の朗読ライブ」が行われました。
 
 作者 平田勉さん
 絵  源内満弓さん
 朗読 金盛千裕さん
 即興BGM 朝田恵利さん


朗読会の詳細を知ったのは、何と、1週間前だったんです。
よかった~、間に合って。




フリーアナウンサーの金盛千裕さん。
地の文や情景描写、3人の子ども達。そして鬼も。



元々の心地良い素敵な声に加え、表情豊かな声色で朗読されて。
心に真っ直ぐに響いてきました。



著者の平田勉さん。
朗読もなさいました。



鬼のことを「温羅(うら)」と呼ぶ、鬼を身近に感じる総社という地で育った氏。
小学校教諭で学芸会用の脚本を手掛けられており、何作か鬼を題材にしたものがあるそうです。
その脚本を元に本にしたのが、この『鬼の涙』なのです。

感情移入された鬼役は、さすが!!の一言でした。



即興BGMの朝田恵利さん。
朗読のときだけでなく、トークのときにもずっと演奏されていました。

朝田さんの演奏は、いつもその場に寄り添うように在ります。
あの一体感を、ぜひ皆さんにも生で一度は感じて欲しいなぁ。

言葉と音楽が合わさって、今日も素晴らしい相乗効果が生まれていました。
それも自然に。
素敵ですね。




朗読が始まって、少し経った頃。
小さな女の子が、
「かえろう~。かえろうよ。こわい。」
と、母親にしがみついて言いました。

自力で読むには、小学校の高学年くらいにならないと少し難しいかな?という内容の「鬼の涙」。
しかし読み聞かせならば、小さなお子様でも心の奥に本質が伝わるようです。



「鬼は文明の暴走をくい止めるために大切な存在であったと考えています。
その鬼を恐れなくなって、人間達は間違った方向に進んでしまったように思います。
(中略)
鬼を愛する多くの人たちに読んで頂けたら幸せです。」
(作者「あとがき」より)



荒れていく鬼の姿は、人間の姿を映したもののように感じました。
苦しんでいる鬼を感じる度に、人間の罪深さに気付かされるのです。

けれども、本当は…。
優しく温かな心を持っています。
鬼も。人間も。

  大切なものは、何なのか。
  決して忘れないで、思い出して―。


子どもたちだけでなく、多くの大人たちにも読んで欲しい『鬼の涙』。
この本が伝える思いを、しっかりと受け取めたいと思います。



会場では、原画展も開催されていました。
お話にそっと寄り添う、本当に素敵な挿し絵です。
生で拝見できて、より一層思いが伝わってきました。



嬉しいことに―。
本の購入者には、著者である平田勉さんと、絵を描かれた源内満弓さんがサインをしてくださったんですよ♪
私の本にもお二人のサインが!
お気に入りの本が、さらに宝物となりました。
どうもありがとうございました。



半農半デ(半分ぶどうの栽培、半分デザインの生活)とおっしゃる源内さん。
今日の朗読会に参加された方々のためにと、愛情込めて作られたぶどうをお土産に持ってきて下さっていました。
「黄玉、安芸クイーン、紅伊豆、マニキュアフィンガー、ピオーネ」の5品種。
減農薬、低肥料、草生栽培で育てられているぶどう達は、まことに美味しかったです。

朗読会での感動の余韻に浸りながら、おいしく頂きました。
ご馳走さまでした。


本当にとても幸せな1日でした。
感謝。



【追記】
最後に。
本日の貴重なショットを。

朗読中は、ほとんど表情を崩さずにキーボードに向かわれていらっしゃった朝田さん。
笑みを湛えて弾いていらした時間がありました。
それは休憩時間!

小さなお子様と一緒に聴きに来られている方がいらして、子どもたち用に演奏をしてくださったのです。
アンパンマンとトトロのテーマ曲!
サプライズの演出に、会場中の皆が笑顔になったひとときでした。





「朗読ライブ」の様子は、ぜひ皆さんのブログからも感じてみてくださいね。
「半農半デ」のトド日記
やもりんのBGMダイアリー