海辺のねこ

どんな日もかけがえのない一日。

本と、写真と、椎名さんと。

2012-09-08 | ひと


20代の頃から、写真の世界にとても惹かれるようになり、
いろいろな写真集を観たり購入したり写真展に足を運ぶようになりました。

椎名さんの撮る写真に出逢ったのも、その頃。
『小さなやわらかな午後』(本の雑誌社)は、私のお気に入りです。
中でも、冒頭のやわらかな光の中での少年の散髪シーンは、
微笑ましくて心までやわらかくなるようで好きです。

被写体は、カメラマンである椎名誠さんの息子さん。
息子さんをモデルにされた『岳物語』という作品がありますが、
とても素敵な子ども時代を過ごされていて、羨ましいほど。
そこに登場する大人たちもとても魅力的です。
子育て中の方も、そうでない方も、是非読んで頂きたいなぁ。

『岳物語』から始まって、小説・エッセイ・写真集・映画…。
そこから随分と世界が広がっていきました。
すっかりシーナワールドの虜です。



先日、椎名さんのお話を伺う機会に恵まれました。
その日が来るまで、わくわく・ドキドキ。
今まで触れたシーナワールドを思い返してみたりしていました。

そして今回。
改めてというかやっぱりというか、心に刻まれたことがあります。
それは「家族の写真」の素晴らしさでした。

『椎名誠写真館』(朝日文芸文庫)には、読んだ当初から付箋を貼ったままの箇所があります。
ご紹介しますね。

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よく写真は「真実」の真を写すものだというが、その“写真”とは被写体の真ではなくて、撮る側の「真」。撮る側の本当の気分や心が写されてしまうのだなあ、ということである。
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ファミリー写真ほど、撮る者の被写体に対する愛情が素直にあらわになっている世界はないように思う。
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『五つの旅の物語』(講談社)でも、
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写真のなかにもっとも熱い愛情あるまなざしが注がれるのが「家族の写真」である、というぼくの信念、いや確信は変わらなかった。親が子供を撮るときの慈しみほど大きく重いものはない。また逆に子供が親を撮るときにも同じくらいの大きな感情と尊敬と慈しみがあるはずだ。
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と語られています。



わが家は父が写真を撮ることが多かったため、何と私、父に抱かれた写真が1枚もありません。
赤ちゃんの頃は毎日お風呂に入れてくれて、おしめも換えてくれていたという父。
私自身も膝の上に乗せてもらったり、寝たふりをして運んでもらった記憶がたくさんあるのだけれど…。

だから、一枚もないことを淋しく思っていたんですよね。
でも考えてみたら、その分撮ってもらった写真があるということ。
大人になっても父が撮ってくれていましたから。

父も母も。
「写真を撮ってあげる」といっても、何故か「撮らんでもええわ」と言います。
あるとき、今を逃したら二人を一緒に撮る機会は無いかもと思い…。
無理やり連れ出し、写真撮影をしました。
その一枚は、私の大のお気に入り。
母も毎日見ています。



家族にしか引き出せない表情、家族にしか撮れない写真ってありますよね。




『五つの旅の物語』に使われているプロフィール写真は、椎名さんのお孫さんが撮られたものです。
観ているこちらが幸せ気分になるほどの満面の笑み!

やっぱり「家族の写真」は素晴らしい!
嫌がっても、これからもどんどん家族の写真を撮ろうと決意した私です。


家族を愛して、友人を愛して。
だからこそ、その先の多くの人間や生きものを愛せるのではないか。
きちんと世界に目を向けられるのではないか。
椎名さんの姿を拝見していると、そんな風に思います。


そうそう。
子どもの頃に読んだ本は、後々に大きな影響を与えるとおっしゃっていました。
絵本は子どもたちとの良いコミュニケーションツールとも。
大いに共感いたします。

読み聞かせを、たくさんしてあげましょう。
子どもたちにはたくさん本を読んで欲しいなぁ。
もちろん私たち大人も読みましょう!
世界が広がりますものね。



今回、貴重な機会を与えてくださったスタッフの皆さん。
本当にありがとうございました。
朗読、とても素敵でした。
同じ空間・時を共有した皆さんもありがとうございます。
そして何より、椎名さんに多大なる感謝を―。


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いちばん大切なものは「命」なんだなあ、と思うようになりました。同時に「生きていく」ということです。
「大きな約束」は、いつだって、誰だって、いちばん大切なことは、生きていくこと―です。
    椎名誠『続 大きな約束』(集英社)あとがきより
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