ピカビア通信

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葛城事件

2017年01月26日 | 映画


日本映画「葛城事件」を見る。三浦友和主演。彼はたけしの映画にも出ていていい味出してるが、昔二枚目人気俳優で、年取って良い役者になった稀有な例ではないだろうか。

で、この映画だが、まあこれでもかというくらいの悲劇の連鎖物語である。小津の「東京暮色」も相当暗い内容だが、比ではない。強権的、独善的、反知性的、暴力的な父親(三浦友和)、その妻、長男、次男の家族の崩壊を描く相当悲惨な物語だ。順調に大学を卒業した長男のリストラによる自殺、引きこもり次男の通り魔殺人による死刑、従順だと思われた妻の痴呆的変化、それらの原因になっている父親だけが変わらず生き残るこんな救いのない物語を何故撮りたかったのか、その辺りが一番疑問に思うところである。

一つ一つのエピソードは現実にあることで、家族の崩壊というのも「東京物語」ですでに描かれていてその流れは続いている。絆或いは人と人とのつながりと表面上上滑りしていくきれいごとの世界にあえて現実を突きつける、そんな意図の上での表現ということなのだろうか。
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