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No323「伊豆の踊子」1974年~二人を隔てる深い溝~

山口百恵、三浦友和主演、西河克己監督の、1974年お正月作品。
今や酔っ払ったおっさんや、風采の上がらない中年男を演じれば
絶品の三浦が、
あどけない二枚目顔で、学帽の似合う、初々しい書生を演じる。
(なんといっても33年前です!)
日本髪に結った山口の笑顔が可愛らしい。

売れっ子の山口百恵を主役にしたスター映画といっても、
丁寧に撮られた、みごたえのある作品。

踊子たちは、流しの芸人で、
村の中の道を通るにも、気を遣って、あたりをはばかるほど
肩身の狭い身。
そんな芸人たちと書生との待遇の差が、随所に描かれるだけに、
書生と踊子との間の、恋とも言えない、幼くもほのかな想いが痛々しい。

踊子の兄栄吉を演じる中山仁が渋くていい味を出している。
自分たちと同じ安宿ではいけないと、
書生を、宿場町のいい宿に連れて行く。
書生は、送ってくれたお礼にと、別れ際、白紙に小銭を包んで、
2階の縁側から、玄関近くに立っていた栄吉の足元に投げ落とす。
栄吉は、包みを拾い、
「書生さん、こんなことしちゃいけませんよ」と
書生のいる2階に投げ入れる。
しかし、書生は、「いやどうぞ、ほんの気持ちです」と
もう一度投げ渡す。
栄吉は、「それじゃあ、しかたありませんね。もらっておきやす」と
包みを懐に入れる。
このやりとり、最初に足元に落ちた包みをカメラはアップでとらえたのに、
思わず、どきりとした。
二人の間の溝、身分の差みたいなものが象徴されているようで、
印象に残った。

というのも、冒頭、伊豆の山中で、
急な夕立に駆け込んだ茶屋で
浦辺粂子演じる婆さんに、書生がお茶代を置く。
その小銭をやっぱりアップでとらえていて、
「こんなにたくさん、もらいすぎですよ」と婆さんは恐縮し、
書生の鞄を抱えて、息を切らせながら、道中を送っていく。
金銭感覚の差というか、前述の場面への伏線のようにも感じた。

書生と踊子との間には
初めから、想像以上に深く、大きな溝があるのだと言いたいような・・。

書生と悲しい別れをした後、
宴席でけなげに踊る百恵に
酔客の刺青男が寄りかかろうとする絵がラストカットで、
ちょっと残酷な感じがして、思わず息を飲んだ。
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