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No129「容疑者室井慎次」君塚良一監督

率直に申し上げて、エンドロールが出るなり、頭を抱えてしまった。
『踊る大捜査線』のスピンオフ第一弾「交渉人 真下正義」のような
おもしろさを、知らず知らず期待していた。
しかし、あっさり、裏切られた。
「交渉人」の
地下鉄の爆破予告をめぐっての、ハラハラドキドキ・・・、
「OD2」の
今まさに起こりつつある事件をめぐっての現場と上層部、人間のぶつかりあい・・・
も、ここにはなかった。
監督の意図をつらつら考えながら、帰途につき、ふと気がついた。

そもそも「容疑者 室井慎次」というタイトルをみて、
これが「踊る」とは異質なものと覚悟したうえで、
スクリーンにのぞまなければならなかったのだ。

「室井」というキャラは、もともとほとんど動かず、受身の人物。
「責任は私が取る」と格好よく言い切って、
現場にまかせ、じっと見守りつつ、フォローすべき点はしっかりおさえる。
室井に、真下と同じ派手さを求めたのが間違いだった。

室井が主人公となったとき、
映画はおのずと、他の作品とまるで違った風味を帯びてくることを予想すべきだた。

ここで、断っておくが、私は、「踊る」のファンではない。
映画2作、「交渉人」を観て、
おもしろさと同時に、
説明しすぎ、狙いすぎ、にぎやかすぎの展開についていけない部分と、
両方感じた。

そして、のぞんだ本作。
この作品を支配するのは、室井の「間」であり、沈黙だ。
背筋を伸ばして、空を見つめる姿。
柳場は熱演していた。しかし、この「間」に力がなかった。
強い立場にある人間は、得てして相手を追い込んでしまう・・。
いい言葉なのに、思いが伝わらない。
最も魅力的だったセリフが
最後に、空港で、東北弁ぽい言葉を一言、唐突に発した場面。
苦渋な表情の室井を和らげ、笑みをこぼれさせるようなキャラがいれば、
室井のキャラがひきたったのに。

田中麗奈も力演していたが、
はじめから終わりまで同じ顔、という感じがして、物足りなかった。

喫茶店で、室井が過去を語るシーン。
室井の横の壁にかかっている振り子時計が、
ずっと室井とともに、フィルムにおさめられていたのが、
なぜか、心のフィルターにひっかかった。

新宿北署の叙情的な美術といい
監督の苦心は伝わる。
しかし、どうにも不消化な思いが残る。
踊るファンの人にとっては、どうだったのだろうか。

満足度 ★(満点は星10個)
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
踊るファンのひとりより (ふしぎ光)
2005-09-05 18:47:27
踊るファンの僕にとっては、

室井の演技はそれなりによかったです。



☆がひとつというのは

なかなか厳しい評価ですね。



 
 
 
ふしぎ光さんへ (パラパラフィン)
2005-09-06 02:13:53
ご来訪ありがとうございます。

期待と違った、ということも手伝って

厳しすぎたかもしれません。



はじめからシリアスにいくなら、

犯人像だけでも、もう少し、考えてほしかったんですが、現実は、あんなものなんでしょうか。



ファーストシーンの新宿突っ走りは

迫力はありましたが、どうも設定が嘘臭くて、

あそこで、もっとリアルに綿密に展開してくれれば、

これは、今までの「踊る」と、ちょっと違うなと

予想できたようにも思います。
 
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