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No890-2『J・エドガー』~信頼の絆あればこそ…~

初めての塚口サンサン劇場。
急に思いついて行ったので、ちょっと迷った。
あの近さでと笑われそうだが、
駅南口の改札から、適当に山勘で右手に行ってしまい、
サンサン三番館と名前は似ていても、ダイエーとかあるだけ。
駅まで戻って、今度は左手正面のツタヤの方に行ってしまったが、
これも間違いで、
要は、駅からまっすぐ左に向いて進めば、ほんの1、2分程。
とてもきれいな映画館で、
梅田からだと、なんと西宮よりも近いとは知らず、少し得した気分?

今日が2回目。やはり後半が好きだ。
老いを迎え、エドガーのモノローグが多くなっていく。

エドガーと公私にわたる側近のクライド・トルソンとの最後の食事の場面。
エドガーは、君を副長官にすべきじゃなかったと言うそばから、
今のFBIは誰も信用できず、君だけが頼りと言ったり、不安定だが、
クライドを無二の相手として、心から大切に思っていることが伝わる。
母の遺品の首飾りを身につけて涙したり、孤独の裏返しとしての
エドガーの痛々しいほどの愛。

クライドも、エドガーの「忠誠心」という言葉には、反感を覚えつつも
仕事では、腹心の部下としてエドガーを支え、
プライベートでは、対等のパートナーとして、そばにいつづけた。
そんなかけがえのない絆があってこそ、人生はより深みを増し、輝きを帯びるものと思うと
なんだか胸が熱くなった。

エドガーが、
冷淡で権力志向の策略家だったかはともかく、
クライドと、
女性秘書ヘレン・ガンディの二人とは
生涯何十年もの信頼関係を築いてきたという人生の重みがひしひしと迫ってきた。

最後の食事の場面の前の、執務室での
エドガーとヘレンとの短い対話。
いつもは「ミス・ガンディ」と呼ぶところを
エドガーは、あえて「ヘレン」と呼ぶ。
呼ばれて、少し驚いたナオミ・ワッツの表情。
わずか数ショットの言葉のやりとりだが、
何十年もにわたり、ともに仕事をしてきた信頼あってこその、
目と目で通じ合う、ナオミの落ち着いた表情のすばらしさ。

前回、書いた、階段を上って、部屋の調度品を一つ一つ写しとって行くシーン、
いつのまにか、記憶の中で、エドガー自身の視線にすり替わっていたが、
これがクライドの視線でとらえられたショットだからこそ、
一層、観客の心に響くのだと思った。
きっと、クライドが、エドガーの部屋に入るのは、
初めてだったのかもしれない。
エドガーは、クライドの部屋に行ったことはあっても、
自分の部屋に招き入れるほどには、心を許していなかったような気がするから。

最後のショットは、シュレッダーを黙々とかけ、少し目をぬぐうヘレンと
呆然とベッドに座り込むクライドの姿を写して、映画は終わる。
人生というものについて、感じ、考えさせる作品。

室内での照明のあて方が、独特で美しい。
冒頭とラストと、何回か繰り返されるピアノのメロディの
ゆっくりとしたテンポと、音と音の間の長さに
限りない優しさを感じた。

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