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No568井川徳道美術監督のトーク

先週の日曜日に大阪シネヌーヴォで行われた井川美術監督のトークのご紹介。
まず、井川さんが勲章を受賞された際の祝賀会場で、
上映された映像作品(20分ほど)を上映。

これが、
井川さんが過去に手がけた作品をつなげた名場面集で、
すごくおもしろかった。
きっと、めちゃくちゃ映画好きの人が編集したにちがいなく、
映画の歌、音楽をバックに、
美しいセットの中で、たたずんだり、笑ったり、
役者さんたちが躍動する姿に、観ているこちらも心躍るようでした。

一心太助シリーズの、魚河岸のセットが俯瞰で映ったとき
前方の席でマイクを持っていた井川さんが
「これは全面、(電車)石を敷き詰めたんですよ!」とやや興奮気味で話されたのが
印象的でした。
これ以降は、映画の音が大きくて、井川さんも解説をやめられました。
映像をみながらしゃべるというふうにしたらよかったのにと思いましたが
トークもほとんど時間がなく残念。

さて、お話の方。
○東映は、役者さんの顔さえ綺麗に撮って、
楽しく明るいというのがモットーで、
雰囲気を出そうというのは二の次。
映画美術も、あくまでバックでいいという感じで
ときに、美術にこだわる時もあるという程度。

そういうのにジレンマを感じていた井川さん。
後輩が、大島渚監督のいわゆる芸術作品の現場で活躍していて、
篠田監督の作品を頼まれたこともあったが、
東映の現場も忙しく、
会社も行くなとは言わなかったけれど、
よく考えてみたら、
自分自身も芸術映画をあまり観ているわけでもなく、
学生時代に観ていたのは、もっぱら娯楽作品だと
思い当たり、
東映にとどまったそうです。

以降、東映やくざものとか、積極的にずっとやってきて、
丁寧なのも雑なのもあるけれど、
今までやってこれてよかったかな、と感慨深く、ちょっと照れながら
話されました。

予算がないので、本物ではなくカポックの石垣を使っていても、
少しでも本物に近くみせられるよう頑張った。
それでも、アップになったら、ばればれでしたねえ、と微笑む井川さんは
すてきでした。

○東映では美術にかけるのは、制作費の3分の1くらいで、
大映はもっと多く、ただ、この割合も内容による。

○澤井監督は、美術にこだわる人で、
ドイツに建物を調べに行ったりして、
当時のものに忠実につくろうとしていた。

○「魔界転生」では、大ステージで火事のシーンを
1週間くらいやったが、
スタッフでさえ、熱くてたまらない中を、
役者さんたちが、炎の中で演じる姿に
役者根性を感じたそうです。

○溝口監督の「雨月物語」で、琵琶湖のシーンのセットを
ステージにつくったとき、
スタッフが、琵琶湖でなく淀川の芦を使ったら、
監督が激怒して、芦を全部入れ替えたとか。
そんなエピソードも紹介してくれました。

というわけで、井川美術監督特集、平日の出足はいまいちのようですが、
ぜひ皆さん、芦を、じゃなかった、足をお運びくださいませ!
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